新生児における細菌感染症の発症については, 従来から産科的因子としての早期破水, 遷延分娩, 羊水混濁, 分娩時の母体感染症などと, 新生児側因子としての免疫機能の未発遠, とくに食菌細胞系の未分化と免疫クロブリンIg-G, Ig-Mの低値によう感染防禦能の未発達などがあげられ1), ひとたび生体内への細菌の侵入があつたばあい, きわめて重篤な経過をとりやすい。一方, 細菌感染症の治療に使われる薬物, とくに抗生物質は, 薬物代謝の点で他の小児期とくらべて, 薪生児期は特異な時期であることはよく知られている2)。すなわち, 新生児期では解毒, 排泄機能の未発達による抗生物質の排泄運延と血中高濃度持続, 特定の薬物に対する特異な反応一たとえばChloramphenicolとGray syndfome-, 蛋白結合による抗生物質の不活化と高ピリルビン血症の増悪, 一たとえばSulfa剤, Novobiocin-などがみとめられる。さらに近年, 新生児期の筋肉内注射と筋組織障害の発生との因果関係が注目され3), 大きな社会問題として提起された。また, 経口薬剤は, この時期で胃腸管吸収が不安定なこと, 高い血中濃度が得られないことなどから重症感染症には不適切と考えられる。以上のような理由で, 抗生物質の投与は現在一部のものを除いて静注をおこなうのが一般的であり, 欧米諸国が主に筋注であるのと大きな違いとなつている。しかし, 文献上, 静注による新生児期の薬動力学的検討は多くなく, まだ十分に解析されているとはいえない。今回著者は, 新生児期における抗生物質静注時の経過的血中濃度推移を検討し, 多少の知見を得たので報告する。投与をおこなつた抗生物質は, Cephalosporin系薬剤から広く使用されているCephaloridine (以下CERと略す), Cephalothin (以下CETと略す) を選んだ。
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