The Japanese Journal of Antibiotics
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39 巻, 3 号
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  • 世良 公志, 田頭 宣治, 永沢 昌, 酒井 利忠, 原田 康夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 661-666
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域において, 抗生剤の局所療法は, 病変部位に高濃度の薬剤移行を望み得ることから, 種々の中耳疾患に用いられる有用な治療法の一つである。しかしながら, 従来局所用製剤として用いられたFradiomycin (FRM), Chloramphenicol (CP) などは, いずれも聴器毒性などの問題があり, その使用は大きく制限されている。一方, 上記薬剤の出現以降, 現在まで新しい局所用製剤の開発は, ほとんどみられず, 臨床的には耳漏からの検出菌の感受性に合致した薬剤を調製して用いざるを得ないのが現状である。
    今回, 我々は, Fosfomycin (FOM) の中耳局所用製剤の基礎的研究として, 鼓室内投与による蝸牛, 前庭器への影響を形態学的には走査型電子顕微鏡 (SEM) を用いて, 又, 生理学的には聴性脳幹反応 (ABR) を用いて観察したので, 若干の文献的考察を加え報告する。
  • 久保谷 聡明, 賓田 博, 杵淵 孝雄, 西川 英次, 菊田 高行
    1986 年 39 巻 3 号 p. 667-678
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (以下, FOMと略す) はStreptomyces fradiae, Streptomyces viridochromogenes及びStreptomyces wedmorensisなどの放線菌が産生する抗生物質で, アメリカMerck社及びスペインCEPA社で共同開発された。図1のとおり, Pを含む比較的簡単な構造式を持ち, 化学名は1-cis-1,2-Epoxypropylphosphonic acid, その分子量は経口用FOM-Caで194.2と極めて小さい。
    本剤は, 菌のGlucose又はα-Glycerophosphate などの糖の代謝経路を通して菌体内に取り込まれ, 細胞壁のMucopeptide生合成の最初の段階の酵素に作用することにより細胞壁合成を阻害するという非常に特異的な作用機序を持ち, 殺菌的である1)。本剤は広い抗菌スペクトルを有し, 他剤との交叉耐性がなく, しかも抗原性も認められない2)。更に体内にて代謝物を生じない毒性の低い抗生物質とされている3)。
    今回われわれは, 本剤について歯科口腔外科領域における各種感染症に使用し, 臨床成績を検討したので報告する。
  • 本島 新司, 沼尾 利郎, 渡辺 茂男, 安東 直彦, 来栖 博, 大塚 智博, 戸田 正夫, 山井 孝夫, 山田 吾郎, 湯川 龍雄, 福 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 679-685
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年優れた抗生物質が次々に開発され, 感染症の治療に供されている。しかし, 高齢者や免疫機能の低下した患者の肺炎での死亡率は高く1, 2), 又, 呼吸器系に器質的な変化のある患者の気道感染症においては, その治療に困難を感じることが多い3)。今回われわれは, 高齢者及び呼吸器系に器質的変化のある患者の呼吸器感染症に対し, Cefoperazone (CPZ, セフォビット®) を使用し, その臨床効果を検討したので報告する。
  • 野澤 志朗, 蔡 篤仁, 鄭 成輝, 小島 雅彦, 筒井 章夫, 和泉 滋, 栗原 操寿
    1986 年 39 巻 3 号 p. 686-692
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    術後感染症を予防する目的で抗生物質の投与を行う場合, 手術創を含む手術野に抗生物質が有効濃度以上の高濃度で移行することが望ましい。従来血中, 尿中での抗生物質の濃度推移に関する検討は多いが, 子宮癌根治手術後のリンパ液, 血液, 漏浸出液を含む骨盤死腔液中の抗生物質濃度の時間的推移を測定した報告は少ない。そこで, われわれは子宮癌術後の患者に新セフェム系抗生物質Cefoperazone (CPZ)1, 2) の投与を行い骨盤死腔液中への移行性を観察し, 術後感染症に対する予防投与の意義を検討した。
  • 中畑 久, 平井 裕一, 熊坂 義裕, 宮沢 正, 中村 光男, 今村 憲市, 牧野 勲, 武部 和夫, 工藤 肇
    1986 年 39 巻 3 号 p. 693-700
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Latamoxef (LMOX), Cefoperazono (CPZ) など分子構造上Methyltetrazolethiolを有するCephem系抗生物質とAlcoholとの相互作用としてのDisulfiram-like reactionが注目されているが1~6), Dose responseについて検討した報告は少なく, BUENING7), 柳原ら8), 及び著者ら9) が投与量別に血中Acetaldehydeの上昇を報告しているだけである。又, 著者らはDisulfiram-like reactionの発現機序が, 肝Acetaldehyde dehydrogenase活性 (特にEnzyme 1型) の抑制に起因し9), 肝障害時本副作用が増強されること10) をこれまでに報告した。今回 Disulfiram-like reactionの詳細を検討するために, これら薬剤の薬理学的投与量 (500mg/kg) と臨床常用量 (50mg/kg) を正常及びFatty liverラットに投与し, Ethanol負荷後血中Ethanol, Acetaldehyde両濃度と肝 Acetaldehyde dehydrogenase活性を測定し, 投与量別の比較検討を行つた。
  • 小鶴 三男, 蔵田 孝雄, 鵜池 直邦, 仁保 喜之, 渋谷 恒文, 大塚 輝久, 山野 裕二郎, 広田 雄一, 西村 純二, 勝野 誠, ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 701-712
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    白血病, 悪性リンパ腫, 骨髄腫などの造血器腫瘍は, 生体防御組織そのものの悪性新生物であり, Immunocompromised host (易感染性宿主) の主要な基礎疾患である1)。更に, これらの白血病, 悪性リンパ腫などでは強力な癌化学療法が行われ, 正常の感染防御力を抑制する副作用を惹起することが多く, しばしば感染症を併発する。
    造血器腫瘍でなくとも再生不良性貧血, 穎粒球減少症などでは, 感染症 (Opportunistic infection日和見感染2))が容易におこる。福岡血液グループでは, これらの造血器疾患に合併した感染症に対して, Cefmenoxime (ペストコール®) を使用する機会を得たので, 臨床的効果について検討した。
  • 南 信行, 宇野 伸郎, 白川 茂, 大野 竜三, 奥村 雅男, 山本 正彦, 御供 泰治, 平野 正美, 清水 鈴昭, 山田 一正, 珠玖 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 713-720
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性白血病, 悪性リンパ腫や再生不良性貧血などの造血器疾患は, 診断時すでに原疾患による液性, 細胞性免疫の低下や顆粒球減少を伴つている上に, 更に強力な化学療法や副腎皮質ホルモンなどの免疫抑制剤の投与を行うため, 宿主の感染に対する防御能は著しく低下し, その経過中に感染症を合併しやすく, 又, 合併した感染症は重症化し, 死の転帰をとることも少なくない。従来から造血器疾患の主な死因は出血と感染症であつたが, 近年, 成分輸血療法の著しい進歩により, 大量の血小板輸血が可能となり, 出血死は減少しつつある1, 2)。一方, 造血器疾患に合併する感染症は種々の新しい抗生物質の開発にもかかわらず難治性であり, 死因の第1位を占め, 原疾患の予後を左右する大きな要因となつている3, 4)。最近の白血病などの造血器疾患に合併する感染症の起炎菌は, 主にEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Enterobacter, Serratiaなどのグラム陰性桿菌であり2, 3, 5, 6), これらのグラム陰性桿菌による感染症対策が造血器疾患の治療上最も重要な課題である。このような観点から, 今回私達東海造血器疾患感染症研究会は, 造血器疾患に合併した感染症に対してグラム陰性桿菌に優れた抗菌スペクトラムを有するCefmenoxime (商品名ベストコール, 以下CMXと略す)とP. aeruginosaに特異的に抗菌力を有するCefsulodin (商品名タケスリン, 以下CFSと略す) の併用療法を行い, その臨床効果を検討したのでその結果を報告する。
  • 藤田 和寿, 横山 道明
    1986 年 39 巻 3 号 p. 721-725
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    耳鼻咽喉科領域は, しばしば感染症に遭遇するところであり, これら感染症に対して抗生物質療法の果す役割ははなはだ大きい。感染症治療に際しての抗生物質の選択には, 選択薬剤の起炎菌に対する抗菌力と感染病巣への移行・分布が大切である。今回我々はCefmenoxime (以下CMXと略す) の血清中濃度と組織内移行に関して, 慢性副鼻腔炎の上顎洞粘膜, 上顎嚢胞の粘膜及び慢性扁桃炎の扁桃について検討し, 各種細菌のMinimum inhibitory concentration (以下MICと略す) との関係について検討した。
  • 松岡 健, 太田 久彦, 武田 潤, 高谷 治
    1986 年 39 巻 3 号 p. 726-732
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (商品名セフォタックス, 略号CTX) は, フランスルセル社と西ドイツヘキスト社で共同開発された半合成セファロスポリン剤でFig. 1の構造を有する。
    いわゆる第3世代の先駆者として登場したCTXは, 従来のセファロスポリン剤 (第1, 第2世代) と比較し, グラム陰性菌, 特にEnterobacter, Citrobacter, Serratiaに対して優れた抗菌力を示している。Pseudomonas aeruginosaに対しても治療の可能性を示唆するMICを有している。
    又, グラム陽性菌, 特に呼吸器感染症の主要起炎菌である肺炎球菌, 溶連菌 (腸球菌は除く) に対しても優れた抗菌力を有していることが特徴とされている。
    以上のことから, 我々は呼吸器感染症の原因菌を十分カバーできる抗菌力を有している本剤を使用し, 内科領域における基礎的・臨床的検討を実施したのでその結果を報告する。
  • 岩森 洋, 安達 長夫
    1986 年 39 巻 3 号 p. 733-738
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質の発達によつて整形外科領域における感染症は以前に比較して減少しているが, 開放骨折術後の感染, 人工関節置換術の増加に伴う偶発的な感染, 起炎菌の抗生剤に対する耐性獲得など問題も多い。しかも, 骨・関節はひとたび感染を起せば極めて難治であり, 大きな機能障害を招く危険性が大きい。又, 従来, 骨・関節が感染化膿した場合には主たる起炎菌は黄色ブドウ球菌1)であつたが, 最近ではこの菌の占める割合は次第に減少しグラム陰性菌の大腸菌, 肺炎桿菌などが徐々に増加している2)。以上のようなことから人工関節置換術など大きな異物を挿入する手術には感染予防の立場から術前に抗生物質を投与する方法がとられており, 又, 予防的に用いる抗生物質は広範囲の抗菌力を持つものが理想とされている。ところで, 術前に投与された抗生物質がどの程度の量, 骨・骨髄に移行し, しかも感染予防に十分な必要量が手術部位に浸透しているかどうかは興味深いところであり, これに関する研究もかなり行われている。
    今回, 我々はCephalosporin系の抗生剤であるCefotaxime (以下CTXと略す, 商品名セフォタックス) を用いて骨髄血移行濃度を検討した。
    CTXの構造式はFig. 1に示すが, 本剤はβ-Lactamaseに対して強い安定性を示し3), グラム陽性菌 (肺炎球菌, 連鎖球菌 (腸球菌は除く)), グラム陰性菌 (大腸菌, クレブシエラ, インフルエンザ菌, セラチア, プロテウス, シトロパクター, エンテロバクター等) に対する優れた抗菌力が認められている。
    抗生物質の使用頻度が高くなると当然耐性菌の出現が問題になるが, CTXはin vitroにおいて耐性化傾向が低いと報告されている4)。又, CTXは組織移行性についても優れており, 喀痰, 髄液, 尿などにおいて起炎菌に対するMICをはるかに凌駕する移行濃度を示している5)。しかし, 骨髄血移行についての検討は十分になされておらず, 今回股関節手術に際して得られた骨髄血を用い移行濃度を検討したので報告する。
  • 桜井 実, 渋谷 伸二, 宮城島 純, 若松 英吉
    1986 年 39 巻 3 号 p. 739-745
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    骨関節の感染症に対して, 強力な抗菌力を示す抗生物質が有力な使命を果しているほかに最近頻繁に行われるようになつてきた人工関節置換術などに際しての感染予防においてもその有用性が高く評価されている1~3)。
    抗菌剤を生体に投与した場合に, 感染病巣の組織への移行濃度が臨床的効果の上で重要な因子となるが, 骨組織は血液循環が緩慢であることからその移行濃度は一般にかなり低いとされる。又, 技術的にも硬い骨組織内濃度の測定にも困難を伴う4~6)。
    骨髄血中の濃度は比較的安定した条件で試料が採取されることから著者らはCephem系薬剤のCephalothin (CET) 7), Cefazolin (CEZ) 8), Cefotiam (CTM) 9), Cefmetazole (CMZ) 10) の骨髄血への移行濃度について, 逐次その研究成果を報告してきたが, この中でCETは生体内のEsteraseによつてDesacetyl化するために, 代謝されない薬剤と異なつた態度をとることが知られている11)。
    今回いわゆる第3世代のCephem系抗生物質の一つであるCefotaxime (Sodium 7-[2-(2-amino-4-thiazolyl)-2-methoxyiminoacetamido]cephalo-sporanate)(CTX) について同様の研究を行つた。
    その構造式をFig. 1-1に示す。
    この薬剤も生体内で代謝されて, DeSacetyl化されるが (Fig. 1-2), この代謝産物も強力な抗菌力を示すので投与後の血清及び骨髄血の移行濃度の推移について未変化体と変化体両者をそれぞれ定量分析し, 生体内における動態を検索したのでここに報告する。
  • 小宮山 寛機, CLAUDE TRONQUET, 広川 弓子, 船山 信次, 佐藤 督, 梅沢 巖, 大石 幸子
    1986 年 39 巻 3 号 p. 746-750
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    放線菌の産生する有用な薬理活性物質を探索中にStreptomyces sp. No.82-85株の培養瀘液が血小板凝集阻害作用を有することを確認した。更に研究を続けた結果, この活性成分はPyrrole-2-carboxylic acid (P2C) であることが判明した。そこで血小板凝集惹起物質, Adenosine diphosphate (ADP), Arachidonic acid sodium salt, Collagen又はマウス腫瘍細胞による血小板凝集に対するP2Cの作用についてin vitro及びex vivoで検討したので報告する。
  • 特にCefotiam及びCefmenoximeについて
    塩崎 秀郎, 饗場 庄一, 松本 弘, 臼井 龍, 戸塚 茂男, 草場 輝雄, 三島 敬明, 長谷川 紳治, 飯島 耕作, 岡野 昭, 尾沢 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 751-760
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症の治療に際しては, 胆汁のうつ滞の原因を除去すると共に適切な化学療法が必要であり, 薬剤の選択にあたつては, 胆汁中検出菌に対して抗菌力を十分に発揮できる抗生物質のうちから, 胆汁中移行のよいものを選択するのが基本条件とされている1)。
    Cefotiam (略号CTM, Pansporin®) は, 武田薬品中央研究所で合成された, いわゆる第2世代のCephem系抗生物質で, グラム陽性菌からグラム陰性菌まで幅広い抗菌スペクトラムを有し, 特に胆道感染症の起炎菌として分離頻度の高いEscherichia coli, Klebsiellaに対して強い抗菌力を有すると共に, その胆汁中への移行は高濃度移行群に位置づけられている2, 3)。又, Cefmenoxime (略号CMX, Bestcall®) は, 武田薬品中央研究所で合成された, いわゆる第3世代のCephem系抗生物質で, 胆道感染症の主要分離菌であるE. coli, Klebsiellaはもとより, Enterobacter, Citrobacter, Serratia, 更には嫌気性菌のBacteroides等に対しても強い抗菌力を有すると共に, その胆汁中移行はCTMと同様に高濃度移行群にご位置づけられている3, 4)。
    今回, 我々はCTM及びCMXの胆汁中並びに胆嚢組織内移行性を検討し, 若干の興味ある成績を得たので報告する。
  • 小山 明, 守 純一, 徳田 均, 和久 宗明, 安野 博, 片山 透, 村上 国男, 小松 彦太郎, 平田 正信, 荒井 嘉司, 木村 荘 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 761-771
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    肺癌患者を中心とした開胸手術例35名を対象に, 術前にCefotiam (CTM) を単独又はCTMにSerrapeptase (Ser) を併用して, 切除肺のCTM濃度を測定して, CTMの肺組織移行性に及ぼすSerの影響を検討した。
    CTM単独群は開胸手術開始直前にCTM2gを30分で点滴静注し, CTM+Ser併用群では術前1週間からSerを1回2錠, 1日3回, 手術前日まで投与し, 手術当日はCTM単独群と同様にCTM2gを30分で点滴静注した。
    CTMの血清中濃度, 肺組織 (健常部, 炎症部) 内濃度を測定した結果, 以下の結論を得た。
    1. CTMの肺組織への移行性は血清中濃度と相関し, 個体差, 病態の差異などの影響によるばらつきはみられるものの, 血清中濃度の約1/2に達し, 肺感染症の主な起炎菌のMIC80は十分にカバーしている。
    2. 炎症肺と健常肺の組織内濃度はCTM単独群, Ser併用群とも炎症肺が低値を示したが, 症例のほとんどで炎症は慢性であり, 血流の低下が認められたためと考えられる。
    3. CTMの肺組織内濃度を血清中濃度で除した値を肺組織移行率として検討すると, CTM単独群の炎症肺組織移行率は29.1±2.5%であるのに対して, Ser併用群では44.2±6.0%と有意 (P<0.05) の移行率の増加が認められた。
    以上のことから, 肺手術時にCTMとSerとの併用は試みてみる価値があり, 又, 呼吸器感染症に対してSerの抗炎症作用による効果と併せて, 抗生剤の移行促進効果も期待できるものと考えられる。
  • 大槻 雅子, 田中 真由美, 佐治 弓子, 西野 武志, 谷野 輝雄, 中西 通泰, 前川 暢夫, 吉川 敏一, 福本 圭志, 近藤 元治, ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 772-782
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 呼吸器感染症の起炎菌として, 弱毒菌感染, 複数菌感染が問題となつてきており, 起炎菌の多彩化がしばしば報告されている1)。しかし, その治療に当つては重症感染症などの場合, 起炎菌決定前に抗生剤を投与することがしばしば心要となる。このような状況に対応するために, 呼吸器感染症の起炎菌を分離し, 菌種の決定や各種抗生剤に対する経年的な感受性の推移を検討しておくことは非常に重要であると思われる。
    われわれは, 京滋地区における呼吸器感染症患者から分離した菌株の分布及びβ-Lactam剤に対する感受性を経年的に測定することを目的として実験を行い, 1981年度と1983年度の成績を比較検討したので報告する。
  • 臨床材料からの検出状況, 菌型分布, 薬剤感受性の推移, 特にβ-ラクタム剤耐性菌について
    小栗 豊子
    1986 年 39 巻 3 号 p. 783-806
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Streptococcus pneumoniae (以下肺炎球菌と記す) は細菌性肺炎, 化膿性髄膜炎, 敗血症, 中耳炎などの原因菌として重要である。肺炎球菌は1881年PASTERにより発見されて以来百余年が経過したが, この間, 次々と優れた抗菌剤が開発され, 中でもペニシリンの発見は本菌感染症の治療に多大な威力を発揮した。このような化学療法の発達普及は本菌感染症を激減させたが, 最近再び病原菌としての重要性が強調されてきている。特に乳幼児, 高年齢者及びハイリスク患者では本菌種による肺炎, 敗血症, 髄膜炎の罹患率, 死亡率が高く, 髄膜炎では他の細菌性のものに比べ神経系の後遺症の発生頻度が高いことが指摘されている1)。これと相まつてペニシリン耐性肺炎球菌が世界各地で分離されるに至り, 中には高度の多剤耐性株も認められている2)。このことは本菌感染症の治療に大きな脅威となりつつある。一方, このような背景のもとに肺炎球菌感染症の予防ワクチンが開発され, わが国においても安全性, 抗原性などの検討がすすめられてきた3)。これらの使用にあたつては患者由来株の菌型がワクチンに含まれる菌型であるか否かを疫学的に調査していく必要がある4)。
    著者は1975年以来, 肺炎球菌の薬剤感受性について注目してきた5)。そして1980年, ペニシリン耐性肺炎球菌を患者の喀痰から分離した6)。その後の調査でこれらの耐性株の増加傾向が認められている7)。肺炎球菌は病原菌としての重要性は強調されてはいるものの, 臨床材料からの検出状況, 薬剤感受性などの系統的な研究報告は少ない。そこで, 著者は順天堂大学付属病院中央検査室での成績をもとに, これらの点について検討したので得られた知見を報告する。
    なお, 以下に述べる薬剤耐性株とは, 非連続的なMICの上昇変異株 (低感受性株ないし中等度MICの耐性株を含む) を耐性株と表現した。
  • 森山 美昭, 柴田 昭, 伊藤 正一, 飯泉 俊雄, 渡部 透, 佐藤 允副, 黒川 和泉, 杉山 一教, 真田 雅好, 中村 忠夫, 斉藤 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 807-814
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    白血病を中心とする造血器腫瘍患者はそれ自体による生体防御能の低下に加えて, 抗腫瘍剤の多剤併用療法によつてもたらされる造血能の低下, とりわけ好中球の減少は感染必発の条件であり, しばしば重篤な感染症へと進展する。特にその起炎菌はグラム陰性桿菌を中心とし, 末期には真菌症など, いわゆる日和見感染症が主体である1~3)。このような特殊条件下で発生する血液疾患の随伴感染症に対しては, 一般の感染症とは異なる治療法が要求される。
    今回, 私共は, 白血病を中心とした血液疾患に合併した重症感染症の治療にCeftizoxime (CZX) を投与し, 評価し得る成績を得たので報告する。
  • 特にネオカルチノスタチンとの比較
    平山 智子, 佐藤 文生, 小田 達也, 前田 浩
    1986 年 39 巻 3 号 p. 815-822
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ネオカルチノスタチン (NCS) は,放線菌 (Streptomyces carzinostaticus val.-41) が産生する蛋白性の抗悪性腫瘍抗生物質 (分子量約 11,700) である。このNCSに対してスチレン・マレイン酸の合成コポリマーであるSMA (分子量約 1,500) と結合し, その親油性及び分子量を増大させたものがスマンクス (SMANCS, 分子量約15,000) である。スマンクスの合成, 生物活性, 抗癌活性, 血中安定性, 造器・組織親和性, 特に腫瘍親和性等についてはこれまで当研究室からいくつかの報告として発表されている1~5)。スマンクスの制癌作用の主体はNCSと同様に分子レベルでは直接的なDNA切断とその合成阻害とが考えられているが, 間接的な制癌作用機構については現在解明されつつある。
    一方, スマンクスの薬理学的な性質がNCSと大幅に異なつていることは我々の指摘しているところである。すでに報告したように2), スマンクスの血液中での安定性についてはすでに調べられており, 残存活性が50%まで低下する時間 (T1/2) で比較すると, もとのNCSより10~20倍安定になつていることがわかつている。
    更に又, スマンクスは親油性が増大し油性リンパ管造影剤であるLipiodolにもかなり溶けるようになる。このためスマンクスをLipiodolに可溶化し, 油剤とすることにより腫瘍へのターゲッティングができるようになつた3, 4)。すなわち, 油剤を腫瘍動脈から動注すると選択的に腫瘍局所に停滞するためである6)。更に高分子化によつてもこの腫瘍親和性が増大していることは水性スマンクスの静注により明らかにされている2, 4)。この機構は腫瘍における新生血管の増生, その漏出性の亢進, 更にリンパ系の欠如等によつており, これがスマンクスの腫瘍選択性の増大の理由と考えられている2~5)。
    今回, まずスマンクスとNCSについて種々の物理的条件下で安定性の違いを検討し, 次に油剤化スマンクスの油系から水系への移行を定量的, 経時的にin vitroで検討した。すなわち油剤化スマンクスが癌組織の存在する水系で有効にその効果を発揮するためには, 薬剤が油系から水系へ充分に移行することが必要である。従つて油から水への移行を, in vitroでモデル的に調べることは重要な意味を持つていると言える。これを裏付けるために更に培養癌細胞に対して油剤化スマンクス添加時の細胞毒性について検討した。
  • YUTAKA KANAZAWA, KAZUKO SHIGENO, TOSHIO KURAMATA
    1986 年 39 巻 3 号 p. 823-841
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The effect of antibacterial chemotherapy is influenced by the drug-susceptibility (minimum inhibitory concentration: MIC or minimum bactericidal concentration: MBC) of a bacterium and the drug concentration in an infected focus. An intracellular drug-inactivating activity is reflected generally by the value of MIC, while an extracellular inactivating activity, which may affect focal drug-concentrations, is usually overlooked.
    β-Lactamase, an inactivating enzyme, is usually detected using benzylpenicillin1, 2) or chromogenic cephalosporin3, 4) as a substrate. From the clinical point of view, however, it seems more appropriate to observe the direct reactionship between the isolated causative organism and the drug used.
    No readily-applied simple method has been reported in any combination between bacteria and drugs for such a direct observation. In this paper, we intend to present a simple and routine method for the determination of the drug-inactivating activity of living cells.
    We have studied a simple method which we call “the cell-disc system” that satisfies the above requirements and permits an easy measurement of the extracellular drug-inactivating activity of any bacteria against any drugs using ordinary sensitivity discs containing the drugs in question. KANAZAWA et al. 5) have previously reported a method which permits classification of degrees of drug inactivation by comparing the sizes of inhibition zones produced by sensitivity discs on preinoculated agar plates and uninoculated plates. TOMIOKA et al. 6) reported a “double disc technique” for a semiquantitative assay for β-lactamase production by Gram-negative bacteria. Recently, Tsun et al.7) presented an assay technique for β-lactamase substrate-profiles using an agar plate consisting of a base-layer containing crude enzyme, sensitivity discs and a top-layer inoculated with an indicative organism.
    In this paper we describe 2 simple systems based on the measurement of clear inhibition zones around ordinary sensitivity discs to quantitatively determine degrees of drug-inactivation caused by test bacteria.
  • 出口 浩一, 深山 成美, 西村 由紀子, 横田 のぞみ, 田中 節子, 吉原 久子, 小田 清次, 松本 好弘, 池上 亮祐, 佐藤 久美 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 842-852
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    BRL25000は英国ビーチャム社によつて開発されたβ-Lactamase阻害剤であるClavulanic acid (CVA) とAmoxicillin (AMPC) を1:2にて配合した経口抗菌剤 (以下経口剤) である。本剤はわが国においても1982年の第29回日本化学療法学会新薬シンポジウムにおいてその有用性が確認された1)。
    私たちはすでに前報2) において日常診療レベルにおける気道系感染症由来臨床分離株に対するBRL 25000の抗菌力を検討し, その有用性を確認したが, この度産婦人科領域の一般的な性器感染症由来新鮮臨床分離株に対するBRL 25000の抗菌力を報告する。
    私たちが過去に報告しているように産婦人科領域のリン菌, 結核菌, クラミディア, トリコモナス, カンジダなどを除くいわゆる一般的な性器感染症3)(以下一般的なを除く) における主な起炎菌はStaphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus agalactiae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Anaerobic Grampositive cocci (GPC) そしてBacteroides fragilisgroupである4, 5)。これらの菌種のうち前報ではS. aureusS. pyogenes, K. pneumoniaeに対するBRL 25000の抗菌力は, 特にβ-Lactamase産生株に対して有効であることを報告した。今回は前述の産婦人科領域由来株のうち, S. agalactiae, Anaerobic GPC, E. coli, K. pneumoniae, B. fragilis groupに対するBRL 25000の抗菌力を常用されている他の経口剤と比較検討した。
  • 大泉 耕太郎, 斎藤 玲, 長浜 文雄, 武部 和夫, 田村 昌士, 平賀 洋明, 渡辺 彰, 今野 淳, 芝木 秀俊, 知本 武久, 中林 ...
    1986 年 39 巻 3 号 p. 853-886
    発行日: 1986/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    S6472は経口Cephem系抗生物質Cefaclor (CCL) を1日2回投与で十分な持続性製剤として塩野義製薬株式会社により製剤設計されたものである1)。すなわち, CCLの速溶性顆粒と腸溶性顆粒を作製し, これらを種々の配合比率でヒトに投与した際の血中濃度曲線をSimulateして, その各々を種々の病原菌に作用させた。このin vitroの実験結果から, 配合比率が4:6の時に最も強い殺菌作用と再増殖阻止作用が認められることが知られた。
    S6472はこの事実をもとにCCLの速溶性顆粒と腸溶性顆粒をそれぞれCCL力価比4:6の割合で混合したもので, 穎粒剤及びカプセル剤がある。
    今回, 我々はS6472及びCCL通常製剤の細菌性肺炎に対する有効性, 安全性及び有用性を検討する目的で, 細菌性肺炎の適応症を有するAmoxicillin (AMPC) を対照薬として二重盲検法により3剤の比較試験を実施したので, その成績を報告する。
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