The Japanese Journal of Antibiotics
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40 巻, 2 号
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  • 澤江 義郎, 岡田 薫, 熊谷 幸雄
    1987 年 40 巻 2 号 p. 271-283
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された合成Imidazole系抗真菌剤であるMiconazole (MCZ) について, 基礎的, 臨床的検討を行つた。
    臨床分離株に対するMCZの最小発育阻止濃度 (MIC) を測定したところ,(Cryptococcus neoformansにはすべてが0.16μg/mlと最も優れており, Torulopsis glabrataは5μg/ml以下に幅広く分布し, Candida albicans及びCandida tmopicolisは90%以上が5~20μg/mlであつた。その他の菌種も大部分が10μg/ml以下であつた。
    健康成人男子3名にMCZの200 mgを1.25時間点滴静注したところ, 平均血清中MCZ濃度は点滴静注開始後30分, 点滴静注終了時に各々1.41, 1.39μg/mlの値となり, その後急速に減少して30分後には0.49μg/mlとなるが, その後は徐々に減少して6時間後が0.17μg/mlであつた。このときの6時間後までの平均累積尿中排泄率は3.0%にすぎなかつた。
    30歳から78歳までの男子17例, 女子8例の計25例にMCZを1日200~1,800 mg, 3~93日間使用したが, 効果判定可能例は19例であつた。これらはカンジダ症9例, クリプトコックス症3例, アスペルギルス症7例で, MCZの臨床効果は著効2例, 有効9例, 無効8例であり, 有効率は58%であつた。これらのうち, MCZ単独使用例とFlucytosine併用例での有効率は57%と60%で, 有意の差異はなかつた。副作用として悪心, 嘔吐, 食欲不振が25例中3例, 12%認められ, 臨床検査値異常としてGOT, GPT上昇3例, 好酸球増多1例が認められた
  • 第3報 抗生剤の単独又は併用療法と予後について
    藤井 良知, 平岩 幹男, 小林 裕
    1987 年 40 巻 2 号 p. 284-294
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1979~1984年間の小児細菌性髄膜炎患児アンケート調査で107施設からの回答症例中, 起炎菌, 予後が明らかで, 抗酸菌, 真菌, マイコプラズマを除いた973例の分析である。
    単剤使用は47.9%を占め致命率10.3%で, 2・3剤併用より予後は良い。
    単剤使用例はPenicillin系抗生物質 (PCs) が最も多いがAmpicillin (ABPC) が48.7%と第1位であり, Latamoxef (LMOX) を含めCephem系抗生物質 (CEPs) Vが26.8%でこれに次ぐ, 致命率はそれぞれ11.0%, 9.6%であつた。Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) 4例中1例死亡, Ch10ramphenico1 (CP) 19例, その他4例に死亡例はない。
    2剤併用418例ではAGs併用241例致命率22.4%, AGs以外の併用177例致命率6.8%であり, 2剤併用ではもちろん3剤併用89例を加えても同様AGsの有無による致命率に有意差が存在する。
    ABPC+AGsは183例と多く致命率24.0%と高い。PCs相互16例, PCs+CEPs 82例で致命率はそれぞれ12.5%, 6.1%であり, β-Lactam剤にAGs以外のCP, Fosfomycinなどの併用を伴つたものは74例中わずか4例死亡だけという良い成績である。
    使用抗生剤の年次的変化はこの期間ABPCの漸減, 1982年からCEPs V, LMOXの急増がみられる。又, ABPC+AGsの低下と逆にPCs十CEPs V又はLMOXの増加傾向がみられる。
    単剤療法, 並びに併用療法はAGs併用の有無により3群に分けて年齢との関係をみると, 生後0~3日はAGs併用が最も多く且つ致命率も50%と高い。単剤療法はこれに次ぎ多いが, 致命率は20%に過ぎない。年齢が進むと単剤療法の頻度が増加してAGs併用療法が減少し, 3カ月位で単剤とAGs併用の致命率は変らなくなる。
    ABPC単独227例の致命率11.0%に対し, ABPC+AGs (+a) は218例で22.9%と高いが, 死亡例は新生児期から3カ月までに集積する。
    ABPC+AGs併用療法の致命率の高い理由について推察を加えた。
  • Cefmenoximeの血清, 胸水移行及び臨床効果に関する研究
    松浦 雄一郎, 山科 秀機, 肥後 正徳, 藤井 隆典, 山本 正治, 島本 博幸
    1987 年 40 巻 2 号 p. 295-302
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    著者らは開胸術例に術後Cefmenoxime (CMX) 19を静注投与, その後の血中濃度及び胸水移行濃度を測定した。胸水移行濃度は投与終了後3時間目Peak値7.61μg/mlを示し, 7時間後にも5.26μg/mlを示していた。このことはCMX1g静注投与で術後感染症として頻度の高いStaphylcccccus aureusを中心とするグラム陽性菌及び緑膿菌を除くグラム陰性桿菌などの起炎菌に対し抗菌力を持つ移行濃度が得られるものと考えられた。又, 21症例の開胸手術感染予防にCMXを使用したがおおむね有効であり, 特に重篤な副作用は認められなかつた
  • 栗本 司, 米山 裕, 佐藤 清, 岡地 諒
    1987 年 40 巻 2 号 p. 303-310
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体抗生物質であるAstromicin (ASTM) と静注用ヒト免疫グロブリン製剤との併用効果について主としてin vivc治療効果の面から検討した。
    ヒト免疫グロブリン製剤として, スルホ化ヒト免疫グロブリン (Venilon®), プラスミン処理ヒト免疫グロブリン (Venoglobulin®) 及びポリエチレングリコール処理ヒト免疫グロブリン (Venoglobulin-1®) を用いた。
    実験的マウスPseudomcnas aeruginosa感染症に対し, ASTMと上記ヒト免疫グロブリンとの併用では, いずれのヒト免疫グロブリンを用いても協力作用が認められた。プラスミン処理及びポリエチレングリコール処理両ヒト免疫グロブリンとの併用では, ASTMの治療効果がASTM 単独時に比べ併用時に有意に向上した。ポリエチレングリコール処理ヒト免疫グロブリンは, Escherichia coli感染症やCyclophosphamide処理による免疫低下マウスを用いたP.aeruginosa感染症に対してもASTMと併用効果を示した。又, in vitroにおけるASTMとヒト免疫グロブリン製剤 (Venoglobulin-1®) との併用効果についても検討したところ, in vivcでの併用効果とほぼ符号する成績を得た。
    今回の結果からASTMとヒト免疫グロブリンとの併用は, 臨床の場においても一つの有用な治療手段となり得ることを示唆するものと考えられる。
  • 松本 敏明, 吉田 哲憲, 大浦 武彦, 星 光聡, 本田 耕一, 大岩 彰, 石川 隆夫, 長谷川 隆, 菅野 弘之, 真部 正志, 浅見 ...
    1987 年 40 巻 2 号 p. 311-324
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    セフェム系抗生物質Cefotaxime (以下CTX) の熱傷創部水庖液への移行及び形成外科領域における臨床的有用性の検討を行つた。
    1.熱傷症例4例にCTX2gをOne shot静注後, 経時的に血清中並びに創部水庖液中のCTX濃度一を測定した。水庖液中濃度は投与後30分で3.90μg/mlであり, その後漸増して投与後2時間で9.81μg/mlのピークに達した。
    2.熱傷創感染及び術後感染症の30症例ではCTXの臨床的有効率は73.3%であつた。又, 術後感染予防に用いた29例の有効率は72.4%であつた。
    3.副作用は59例中1例に発疹, 臨床検査値異常として1例にGOT, GPT及びAl-Pの上昇が認められた。
    以上から, CTXは形成外科領域の感染症の治療, 予防に有用な薬剤であることが示唆された。
  • 杉本 勇二, 松本 行雄, 櫃田 豊, 山本 芳麿, 石飛 和幸, 佐々木 孝夫
    1987 年 40 巻 2 号 p. 325-330
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器感染症5例にOfioxacin (OFLX) を投与し, 血中及び喀痰中への移行濃度を測定し, 抗菌力と比較検討した。
    1.Haemophilus influenzae, Klebsiella pneumoniaeに対するMICを上回る喀痰中濃度が連続投与中に維持されていた。
    2.Staphylococcus aureusに対するMIC70は0.78μg/ml以下であり, Pseudomonas aeruginosaに対するMIC70は1, 56μg/mlであり, 1回200mgないし1回300mg1日2回投与時の最局喀痰中濃度はこの値を上回つていた。
    以上から, OFLXは慢性呼吸器感染症に有効性を十分発揮し得る経口合成抗菌剤と考えられた。
  • 1濃度ディスク (8mm径-及び6mm径-30μg含有) 感受性結果の定量的利用と4カテゴリー評価システムの意義
    植手 鉄男, 松尾 清光
    1987 年 40 巻 2 号 p. 331-339
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1・本研究においてはセフチゾキシム (CZX) の血中有効濃度を得るための投与量設定, 評価へのディスク感受性結果の定量的利用の吟味, 検討を行つた。8mm径-30μg含有ディスク (昭和薬品化工) 及び6mm径-30μg含有ディスク (栄研化学) の阻止円の大きさの定量的評価, すなわちMIC値の推定について, MIC実測値と比較し, その信頼性を究明した。
    2.昭和59年 (1984年) 1~12月に至る間に北野病院 (大阪市) において臨床材料から分離された細菌328株に対するMIC実測値からすると, 大腸菌, 肺炎桿菌, 変形菌 (インドール陰性, 陽性) などは, CZX濃度0.20μg/ml以下で100%の分離菌株の発育が阻止された。セラチア・マルセッセンス臨床分離株の約85%が3.13μg/ml, 約88%が12.5μg/ml以下で発育が阻止された。エンテロバクター・エロジェネスは分離株の88%が3.13μg/ml以下で, 96%の菌株が12.5μg/ml以下で発育が阻止された。緑膿菌は12.5μg/mlの濃度で約7%の菌株が発育を阻止されたにすぎない。
    黄色ブドウ球菌の約47%の菌株が, 3.13μg/ml以下で, 表皮ブドウ球菌は約78%の菌株が12.5μg/ml以下で発育を阻止された。分離された腸球菌全株に対するMICは200μg/ml以上であつた。
    3.MIC測定と同時に, 前述のような2種の1濃度ディスク (8mm径及び6mm径) を用いてディスク感受性結果を吟味した。両ディスク共に阻止円の大きさから (+++),(++),(+),(-) と分類した。(帯) はMIC3μg/ml以下,(+モ) MIC>3~15μg/ml,(+) MIC>15~60μg/ml,(-) MIC60μg/ml以上にBreakpointを設定し, ディスク感受性結果の分類と実測MIC値を比較すると, 両ディスクの結果は共にMIC値と良い相関を示した。しかし, 両ディスク共に留意すべきは, 緑膿菌, 腸球菌などの一部菌株で (+) を (++) に,(-) を (+) ~ (+++) に甘く制定する傾向がみられたことである。抗生物質あるいは抗菌物質を感染症治
  • 中村 孝, 橋本 伊久雄, 沢田 康夫, 三上 二郎
    1987 年 40 巻 2 号 p. 340-348
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    幅広い抗菌スペクトラムと抗β-Lactamase性, 高い安全性により広く使用されているCefuroxime (CXM) をエステル化し, 経口用としたCefuroxime axetil (CXM-AX, SN407) を用い, 急性乳腺炎10例に使用を試みた。全例, 授乳中の外来患者で, 年齢26~44歳 (平均31.8±5.53歳), 体重48~59kg (平均53.4±4。00kg) であつた。CXM-AX錠1回2錠 (500mg), 1日3回, 5~8日間投与, 平均6.0±1.05日間であつた。10例中6例に切開排膿, ドレナージを施行し, 1例は穿刺排膿, 2例は冷湿布を併用したが, 他の1例はCXM-AXだけの治療を施行した。CXM-AX投与前, 5例においてCefaclor1~1.59, 4~12日間, 1例にBacampicillin1.5gを4日間投与されていたが, 2例が一時軽快後再発, 4例は無効でCXMAXの治療に変更した。起炎菌として7例の膿汁の培養により, 5株のStaphylococcus aureusと2株のStaphylococcus epidmidisを得たが, CXMのMICはS.amusが108cells/mlにて1.56μg/mlが3株, 3.13μg/mlが2株, 106cells/mlでは0.78μg/ml3株, 3.13μg/ml2株であり, S.epidermidisでは108, 106cells/mlにて1.56μg/ml及び0.78μg/mlを示した。臨床効果は著効2例, 有効8例で, やや有効, 無効例はなかつた。副作用およびCXM-AXによると思われる臨床検査値の異常は認められなかつた。症例のうち1例において, 切開施行後3日間にわたり, 膿汁及び正常乳汁中濃度を検索した。測定法は.Bacillussu subtilisATCC6633を検定菌とするBioassay法である。膿汁中CXM濃度は0.57~1.05μg/ml, 平均0.74±0.27μg/mlを示したが, 健常乳汁中濃度は0.09~0.59μg/ml, 平均0.32±0.25μg/mlを認めた。Cephem系抗生物質の乳汁移行は不良とされているが, 急性乳腺炎においては膿汁への移行を認めた。
    以上のことからCXM-AXは急性乳腺炎の化学療法に使用して極めて有用な抗生剤であると言える
  • 渡辺 忠洋, 五井 仁, 原 哲郎, 菅野 利恵, 田中 佳子, 数野 勇造, 松橋 祐二, 山本 治夫, 横田 健
    1987 年 40 巻 2 号 p. 349-356
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    順天堂大学医学部細菌学教室にて分離されたメチシリン・セフェム耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) の新アミノ配糖体抗生物質Arbekacin (HBK) に対する感受性分布, 及び実験的マウスMRSA感染症に対するHBKの感染防御効果をGentamicin, Netilmicin, Amikacinを対照薬剤として検討し, 以下の成績を得た。
    1.MRSAはHBKに対して他のアミノ配糖体抗生物質に比べ優れた感受性分布を示した。
    2.MRSAの実験的マウス全身感染症に対してHBKは他のアミノ配糖体抗生物質に比べ有意に優れた感染防御効果を示した。
    3.MRSAの実験的マウス皮下膿瘍感染症に対してもHBKは他のアミノ配糖体抗生物質に比べ著しく優れた感染防御効果を示した。
  • 三富 奈由, 松元 隆, 藤垣 正夫, 小宮 泉, 甲斐 文夫
    1987 年 40 巻 2 号 p. 357-364
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規のアミノ配糖体系抗生物質であるArbekacin (HBK) をラットに静脈内投与又は筋肉内投与した際の生体内動態及び各種蛋白との結合について比較検討し, 以下の結果を得た。
    1. 10mg/kgを投与した場合の生物学的半減期は静脈内Bolus投与, 静脈内1時間持続投与及び筋肉内投与でそれぞれ0.69時間, 0.55時間及び0.57時間であつた。
    2. 投与後24時間までの累積尿中排泄率は静脈内Bolus投与の場合, 投与量 (10mg/kg) の74.7%, 筋肉内投与の場合79.1%であり, 投与方法による差は認められなかつた。
    3. 投与後24時間までの累積胆汁中排泄率は, 瀞脈内Bolus投与, 筋肉内投与いずれの場合も投与量 (10mg/kg) の0.1%程度であつた。
    4. 20mg/kg投与した場合の組織内濃度は, 投与経路によらず, ほぼ類似の傾向を示した。投与後いずれの時間においても腎臓に高濃度に分布し, 次いで血漿, 肺臓に分布した。肝臓への移行は低かつた。
    5. ヒト血清, ヒト血清アルブミン及びラット血清に対する結合率を平衡透析法で測定した。HBKの濃度が5μg/ml, 10μg/ml及び20μg/mlのいずれにおいても結合率は15%以下であつた。
  • 第1報 血清中濃度及び尿中排泄
    友野 法子, 三野宮 文子, 仲由 武實, 新開 祥彦, 藤田 正敬
    1987 年 40 巻 2 号 p. 365-375
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新たに合成されたアミノ配糖体系抗生物質であるArbekacin (HBK) の筋肉内投与時, 及び静脈内投与時の体内動態について, イヌを用いて調べ, Amikacin (AMK) と比較した。
    1. HBKの血清中濃度は従来のアミノ配糖体系抗生物質と同様, 投与量に良く相関していていた。
    2.HBKの血清中濃度半減期は投与量, 投与方法の違いに関係なく, AMKをはじめ他のアミノ配糖体系抗生物質と同様に約1時間であつた。
    3.1回当りの推定臨床適用量であるHBK 2 mg (力価) /kgの筋肉内投与に, 最も近いPeak濃度及び血清中濃度推移を示す静脈内投与での注入時間は1時間であり, Dibekacin等と同じであつた。
    4.HBK 2 mg (力価) /kgを1日2回, 14日間連続投与しても, 血清中濃度の上昇, 半減期の変化はみられなかつた。
    5.HBKは投与後24時間までに, 約80~90%が尿中に排泄され, 従来のアミノ配糖体系抗生物質と同等であつた。
  • 第2報 組織内移行性
    友野 法子, 仲由 武實, 新開 祥彦, 藤田 正敬
    1987 年 40 巻 2 号 p. 377-384
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新たに合成されたアミノ配糖体系抗生物質であるArbekacin (HBK) 10mg (力価) /kgを, イヌに筋肉内投与, 並びに筋肉内投与とほぼ同等の血清中濃度が得られる1時間の注入時間で静脈内投与し, 経時的な組織内移行性を調べ, 以下の成績を得た。
    1.血清中濃度の生物学的半減期は, 筋肉内投与では1.15時間, 点滴静脈内投与では1.00時間であり, 前報の成績とほぼ一致した。
    2.最高組織内濃度及び体液試料中濃度は筋肉内投与では, 腎>膣>血清>膀胱≥ 子宮≥ 卵巣>肺≥ 耳下腺>脾>気管>扁桃>胆嚢>心嚢液>胸腺>筋肉>心≥ 肝>顎下腺>胆汁>眼房水≥膵>髄液≥脳の順に高く, そのPeak発現時間は気管, 眼房水及び髄液が投与後4時間に, 又, 心嚢液が2時間にみられた他は, すべて投与後0.5~1時間であつた。
    点滴静脈内投与では, 腎>血清>卵巣>腔>肺>耳下腺>膀胱>子宮>脾>胸腺>心嚢液>胆嚢>気管>扁桃>心>肝>膵>筋肉>顎下腺>胆汁>眼房水>髄液≥ 脳の順に高く, そのPeak発現時間は気管, 髄液, 胆汁が4時間, 心嚢液が2時間であつた他は, すべて1時間の投与終了時にみられた。
    そして, これらの推移は筋肉内投与, 点滴静脈内投与共に腎, 気管及び体液試料を除き, 血清中濃度と良く相関した。又, 腎を除く各組織内の残留性は少ないものと思われる。
    3.各組織の組織内濃度及びAUCは腎, 膀胱, 卵巣, 子宮, 膣, 肺, 気管, 扁桃等で高い値を示し, 又, その他の組織及び体液中においてもその最高濃度は報告されているほとんどの菌に対するMICを上回つていることから, これら組織に関連した種々の感染症に対する有効性が期待される。
  • 砂川 慶介, 石塚 祐吾, 河合 直美, 斉藤 伸夫
    1987 年 40 巻 2 号 p. 385-395
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefuzonam (CZON, し-105) の基礎的, 臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1. 臨床分離のStaphylococcus aureus (451株) に対する本剤のMICを測定したところ, S.aureusに対してCefazolinとほぼ同程度で, Cloxacillinより劣るもののBenzylpenicillin, Cefotaximeより優れていた。
    2. One shot静注時のピーク値は, 10mg/kgでは40.0μg/ml, 20mg/kgでは97.5~145μg/mlで半減期は34.2~47.9分であつた。4時間までの尿中排泄率は46.8~67.3%であつた。
    3. 小児細菌感染症13例に使用した臨床効果は, 全例有効以上であつた。
    4. 副作用として下痢が4例, 臨床検査値異常としGOT上昇が1例, 血小板数増多が1例にみられた。
    以上の結果から本剤は小児の細菌感染症治療に対して安全性, 有効性の高い薬剤であると考えられた。
  • 望月 康弘, 大久保 秀夫, 吉田 晃, 真弓 光文, 三河 春樹
    1987 年 40 巻 2 号 p. 397-404
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規セフェム系注射用抗生剤Cefuzonam (L-105, CZON) について臨床的検討を行い, 以下の結論を得た。
    1. 本剤1日58.5~85.7mg/kgを3~4回に分け, 静注又は30分かけて点滴静注した22例 (肺炎9例, 扁桃炎9例, 気管支炎2例, 化膿性耳下腺炎1例, 急性腎盂腎炎1例) に対する臨床効果は著効12例, 有効7例, やや有効3例で, 有効率は86%であつた。
    2. 本剤のMIC分布はHaemophilus influenzae14株, stretococcs pneumoniae6株に対しては, すべて0.05μg/ml以下であつた。Stahylococcus aureusの3株中2株では0.39μg/mlであり, 他の1株では0.78μg/mlであつた。Escherichia coli2株については0.05μg/ml以下と0.10μg/mlが各1株であり, Enterococcus faeclisの1株は6.25μg/mlと, やや耐性を示した。
    3.副作用として, 4例に下痢を認め1例では投薬を中止したが, いずれの症例も短期間で治癒した。2例において赤血球, 血色素の減少があり, 1例において白血球減少, 好中球減少がみられた。又, 1例において好酸球増多を認めた。1例においてGOT, GPTが上昇したが, 投与中止により次第に改善した。
    4.本剤は, 小児の急性気道感染症や尿路感染症の第1選択剤として有用な抗生物質であると思われる。
  • 久野 邦義, 袴田 享, 宮地 幸紀, 中島 崇博, 早川 文雄, 三浦 清邦, 宮島 雄二
    1987 年 40 巻 2 号 p. 405-418
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいセフェム系抗生物質であるCefuzonam (L-105, CZON) につき, 基礎的, 臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1. Staphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis, Streptococcus pneumoniae, Streptococcuspyogenes, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Haemophilus parainfluenzae, Haemophilus influenzae の当小児科臨床分離株に対するCZONの抗菌力 (MIC) をCefmenoxime (CMX), Latamoxef (LMOX), Cefoperazone (CPZ), Cefmetazole (CMZ), Cefotiam (CTM), Cefazolin (CEZ) と比較した。S.aureus, S.epidermidisに対してはCEZと同等で他剤より優れ, S.pneumoniae, S.pyogenesには他剤より優れ, E.coliではCMX, LMOXと同等で他剤より優れ, K.pneumoniae, H.parainfluenzae, H.influenzaeにはCMXと同等で他剤より優れたMICを示した。
    2.10mg/kg, 20mg/kg, 40mg/kgのCZONを各々1, 5, 4例ずつ計10例の小児にOneshot静注し, その後の血清中, 尿中濃度の推移をみた。それぞれの平均血清中濃度は投与後15分で11.0, 43.8, 111.5μg/ml, 1時間で2.4, 10.3, 30.3μg/ml, 4時間で0.17, 0.72, 1.28μg/mlであつた。血中半減期はそれぞれ1.79, 0.88, 1.19時間であつた。0~6時間の尿中平均累積排泄率は47.9, 56.3, 40.3%であつた。
    3.34例の小児細菌感染症 (扁桃炎2例, 急性気管支炎1例, 肺炎14例, 膿胸1例, 敗血症1例, 化膿性リンパ節炎1例, 尿路感染症13例, 腸炎1例) にCZONを40~94mg/kg/日, 3~4回に分けて投与し, 94.1%の有効率を得た。
    4.副作用は軽度の下痢2例だけで, 検査値異常はGOT, GPT上昇2例, 好酸球増多1例, 血小板増多1例がみられたが, いずれも軽度であつた。
  • 後藤 義則, 貴田 嘉一, 松田 博, 村瀬 光春
    1987 年 40 巻 2 号 p. 419-425
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1.20mg/kgあるいは40mg/kgのCefuzonam (CZON) を投与された小児7名に対する血清中濃度の解析から投与量と血清中濃度との間に良好な用量反応関係が認められた。CZONの血中半減期は0.90時間であつた。
    2.細菌感染症17例に対するCZONの臨床的有効率は88% (15例/17例) で, 起炎菌消失率は80% (4例/5例) であつた。
    3.CZONに起因すると思われる副作用としては1例 (1例/17例) に軽度の下痢が認められただけであつた。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 高島 俊夫, 高木 道生
    1987 年 40 巻 2 号 p. 427-438
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefuzonam (CZON) の抗菌力, 吸収・排泄及び小児細菌感染症に対する効果について検討を行い, その成績について述べた。
    近年, セフェム系抗生物質の研究, 開発はめざましいものがある。特にβ-Lactamase抵抗性や緑膿菌を含むグラム陰性桿菌に対する抗菌力の拡大に焦点がおかれ, すでに実用化されている薬剤も多い1, 2)。
    さて今度, 日本レダリー株式会社で合成, 開発されたCefuzonam (CZON, L-105) は, 7位側鎖にAminothiazolylmethoxyiminoacetamido基を, 3位側鎖にはthiadiazolylthiomethyl基を導入した半合成セファロスポリン系の注射剤である。本剤は既存の抗生物質に比べ, グラム陽性菌, 特にStaphylococcus aureusに対し, Cefazolin (CEZ) とほぼ同等の抗菌力を示し, 更にグラム陰性菌にも幅広い抗菌力を示し, 又, 各種のβ-Lactamaseに安定で, 強力な殺菌作用を有することが特徴とされている3~5)。
    すでに, 本邦では1985年5月の第33回日本化学療法学会総会において, 本剤の評価がなされ, 臨床的にもその効果, 安全性が示された6)。そこで今回, 小児科領域においてもこれら成人領域の成績の結果から, 本剤の検討が行われることになり, 著者もその機会を得たので, ここにそれらの成績について述べる。
  • 春田 恒和, 山本 初実, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 桐山 行雄, 久保 桂子, 橋本 尚子, 小林 裕
    1987 年 40 巻 2 号 p. 439-447
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新注射用Cephalosporin剤Cefuzonam (L-105, CZON) を小児細菌感染症12例に使用し, 以下の成績を得た。
    1. 扁桃炎3例 (起炎菌Haemophilus parainfluenzae 1例, Haemophilus influenzae 2例), 肺炎4例 (Staphhylococcus aureus 1例, 不明3例), 腎盂腎炎2例 (いずれもEscherichia coli), 化膿性リンパ節炎 (不明), 化膿性甲状腺炎 (Streptococcus milleri, Haemophilus aphmphilus及び嫌気性菌3種の混合感染み外陰部膿瘍 (E.aoli) 各1例, 計12例に本剤1日42.9~93.3mg/kgを3~4回に分割静注, 6~12日間使用し, 著効4例, 有効5例, 無効3例, 有効率75.0%の成績を得た。無効であつたのは慢性肉芽腫症に合併した肺炎, 梨状窩痩に起因する化膿性甲状腺炎, 先天性心疾患術後の化膿性腋窩リンパ節炎各1例で, 前2例は化学療法だけでは十分な効果が得られず, 結局手術によつて根治した。
    2. 臨床症状としての副作用はみられなかつた。検査値異常として, ごく軽度のプロトロンビン時間延長, 一過性のGOT, GPT上昇を各1例に認めただけで, 重大なものはなかつた。
    3. 以上の成績は本剤の抗菌域, 抗菌力, 体内動態からみて十分首肯し得るところで, 本剤が小児に対しても有用な新抗生剤であり, 一般の小児感染症に対しては, 1回20mg/kg前後を3~4回使用すれば所期の効果をあげられることを示唆するものと考えられた。
  • 細田 禎三, 増田 昌英, 宮尾 益英
    1987 年 40 巻 2 号 p. 449-459
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児細菌感染症15例にCefuzonam (L-105, CZON) を投与し, 髄液移行及び臨床効果の検討を行つた結果, 以下の結果が得られた。
    1. 本剤の髄液中及び血清中濃度を髄膜炎のない1例で検討した結果, 50mg/kg静注後1時間の髄液中, 血清中濃度は, それぞれ0.10, 18.1μg/mlであり, 髄液中・血清中濃度比は0.55%であつた。
    2. 細菌感染症15例に対する本剤の臨床効果は, 肺炎9例, 気管支炎1例, 扁桃炎1例, 尿路感染症1例の計12例は著効, 敗血症性関節炎1例, 敗血症1例, 化膿性髄膜炎1例の計3例は有効を示し, 有効率100%であつた。
    細菌学的効果はHaemophilus influenzae 4株, Escherichia coli, Staphylococcus aureus, Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes 各1株の計8株は, すべて消失した。
    副作用は2例で, 軟便, 発疹の各1例であつたが, 臨床検査値に異常を認めなかつた。以上から, CZONは小児細菌感染症に対し有効且つ安全な薬剤であると考えられた。
  • 中川 国利, 大和田 康夫, 大内 清昭, 本田 一陽
    1987 年 40 巻 2 号 p. 460-468
    発行日: 1987/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症に対するCefuzonam (CZON) の有効性を検討する目的で, 肝胆膵疾患症例12例の術後及び経皮経肝的胆道ドレナージ後にCZONを投与し, 以下の成績を得た。
    1. 胆汁中細菌の消失率は33.3% (9株/27株) で, 投与後の出現菌として9株を認めた。
    2. MICは, Klebsiella oxytoca 4株を含め53株中14株は1.56μg/ml以下であつたが, Pseudomonas属22株を含む39株は12.5μg/ml以上であつた。
    3. 胆汁中白血球数の推移に関しては, 減少6例, 増加2例及び終始未検出1例で, 細菌学的及び臨床症状の推移との間に関連性は認められなかつた。
    4. 全例で, 解熱, 疼痛消失などの臨床症状の改善を認めた。
    5. 副作用と思われる所見は一例も認めなかつた。
    以上から, CZONは胆道感染症に対し, ある程度の効果は期待され, しかも安全性の高い抗生剤と思われる
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