Carbapenem系抗生物質であるPanipenem (PAPM) とBetamipron (BP) との1: 1の配合剤であるPAPM/BPについて, 小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行った。
1. 小児9例 (4~14歳) にPAPM/BPを10mg/10mg/kg (4例) あるいは20mg/20mg/kg (5例) を30分かけて点滴静注した際の血漿中濃度並びに尿中排泄を検討した。
PAPMの点滴静注終了時の血漿中濃度は, 10mg/10mg/kg投与例では30.75±4.98μg/ml, 20mg/20mg/kg投与例では68.72±5.73μg/mlで, その後1.08±0.09時間, 0.98±0.02時間の半減期をもつて漸減し, 点滴静注開始後5.5時間では各々0.39±0.14μg/ml, 0.62±0.06μg/mlであつた。又, BPの点滴静注終了時の血漿中濃度は10mg/10mg/kg投与例では18.93±3.75μg/ml, 20mg/20mg/kg投与例では37.09±2.68μg/mlであり, 半減期は各々0.55±0.07時間, 0.61±0.03時間で, 55時間後では全例測定不能であつた。
一方, 点滴静注開始後6時間までの平均尿中回収率は, PAPMでは10mg/10mg/kg投与例で33.0±641%, 20mg/20mg/kg投与例で218±2.3%であり, BPではそれぞれ77.0±2.4%, 76.6±7.3%であった。
2. 化膿性髄膜炎の1症例に対しPAPM/BP31.3mg/31.3mg/kgを30分かけて点滴静注した際の髄液中PAPM濃度は, 投与開始日の点滴静注終了時で0.76μg/ml, 投与開始後2~9日の点滴静注終子後30分では0.80~1.97μg/mlであった。
3. 小児期感染症43例, 47疾患にPAPM/BPを投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。なお, 1回の投与量は5.2mg/5.2mg~31.3mg/31.3mg/kg, 1日の投与回数は3~4回, 投与日数は31/3~11日, 総投与量は1.125g/1.125g~11.0g/11.0gであった。
急性化膿性扁桃腺炎6例, 急性化膿性胆管炎1例, 急性腸炎3例, 化膿性髄膜炎1例はいずれも著効, 蜂巣炎1例及び急性尿路感染症1例は有効, 急性化膿性中耳炎4例は著効1例, 有効3例, 急性肺炎30例は著効22例, 有効7例であり, 臨床効果を判定し得た症例では全例有効以上の成績が得られた。
又, これらの症例の原因菌と考えられた
Staphylococcus aureua1株,
Staphylococcus pyogenes1株,
Staphylococcus pneumoniae10株,
Haemophilus influenzae12株,
Escherichia coli1株に対する細菌学的効果は,
H. influenzaeの1株が減少であつた以外はすべて消失と判定された。
副作用の認められた症例はなかった。臨床検査値異常としては, GOTの上昇が1例, 血小板数の増多が3例に認められた。
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