日本大腸肛門病学会雑誌
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61 巻, 6 号
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原著
  • 宮崎 道彦, 三嶋 秀行, 池永 雅一, 安井 昌義, 中森 正二, 辻仲 利政
    2008 年 61 巻 6 号 p. 285-290
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    目的:当院外科ではHIV陽性患者への専門治療の提供を2005年7月に開始した.今回,治療成績と管理に関するポイントについて紹介する.対象と方法:2007年6月までに尖圭コンジローム32例(70%),痔瘻(肛門周囲膿瘍)8例(17%),痔核3例(7%),肛門ポリープ1例(2%),フルニエ症候群1例(2%),肛門癌1例(2%),計36例(全例男性)である.治療うちわけは手術45例,化学放射線療法1例であり,以上を対象としretrospectiveに検討した.すべて当院免疫感染内科通院中であった.結果:後出血1例と再発2例(尖圭コンジローム)を認めた.構想と提案:HIV陽性患者の肛門疾患の外科治療は手技的な面よりも治療をとりまく環境整備が重要であり,他の感染患者と同様に扱うべきである.
  • 辻 順行, 緒方 俊二, 山田 一隆, 高野 正博
    2008 年 61 巻 6 号 p. 291-297
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    2003年2月から2005年3月の期間に,当院の特定の医師により狭窄性裂肛に対して行われたSSGの75例を対象として以下の結果を得た.
    1.術後の結果は,治癒が65例(86.7%),非治癒症例が5例(6.7%),ガス漏れなどの括約不全が4例(5.3%),不明症例が1例(1.3%)であった.術後に括約不全を来した4例は,括約筋機能回復訓練を行い,3∼6カ月の間に全例で症状は消失した.
    2.術前の肛門内圧におけるMRPは105.5±30.7cmH2O, MSPは297.5±98.6cmH2O, HPZは3.77±0.42cmであった.術後1カ月ではそれぞれ91.3±30.7cmH2O, 284.5±106.9cmH2O,4.16±0.43cmで,HPZのみが術前後の比較で有意に延長を認めた.MRPとMSPは術後に低下を認めたが,有意な低下ではなかった.
臨床研究
  • 内野 基, 池内 浩基, 松岡 宏樹, 田中 慶太, 久野 隆史, 大嶋 勉, 塚本 潔, 中村 光宏, 外賀 真, 中埜 廣樹, 野田 雅 ...
    2008 年 61 巻 6 号 p. 298-302
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    2006年12月までに当科で手術を行った潰瘍性大腸炎(以下UC)症例902例のうち,穿孔で手術適応となった28症例につき,その臨床的特徴について検討した.炎症性腸疾患(以下IBD)における穿孔はクローン病,ベーチェット病に多いとされ,UCでは比較的少ないとされている.しかしUC穿孔症例では活動期,ステロイド大量投与症例が多く,surgical site infection(SSI)を初めとする術後合併症は高頻度に見られ,管理に苦渋した.さらに疾患の性質上,若年者が多く,QOLを考慮して可能な限り肛門温存に努めるべきであり,当科症例28例中24例(85.7%)に肛門温存手術が可能であった.
  • 池内 浩基, 中埜 廣樹, 内野 基, 中村 光宏, 松岡 宏樹, 竹末 芳生, 福田 能啓, 樋田 信幸, 中村 志郎, 松本 誉之, 冨 ...
    2008 年 61 巻 6 号 p. 303-310
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    クローン病(以下CD)に対するFDG-PET検査の有用性について検討した.吻合部狭窄を含めた狭窄病変はFDG-PET検査で比較的明瞭に表現されたが,成人例では造影検査がFDG-PET検査よりも特異性が高く,有用性は否定的であった.癌合併症例のFDG-PET検査の陽性率は50%であり,陽性率が低い原因としてはCDに合併する癌に粘液癌が多いことも関与している可能性があると思われた.局所再発に関してはFDG-PETよりもMRIの方が周囲臓器との位置関係,浸潤範囲の診断に有用であると思われた.直腸肛門病変に対するFDG-PET検査は,低侵襲に瘻孔の走行および一次口の検索が可能である症例もあるが,サーベイランスに関しては診断の精度,費用等を考慮すると,サーベイランスプログラムに組み込む検査としては適切ではないものと思われた.
  • 池永 雅一, 三嶋 秀行, 安井 昌義, 宮崎 道彦, 中森 正二, 辻仲 利政
    2008 年 61 巻 6 号 p. 311-314
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    目的: がん専門施設における緊急手術症例にかかわる大腸外科医の現状につき検討した.方法: 2003年5月より2006年12月までがん専門医がかかわった消化器外科としての全身麻酔手術症例は3,252例.そのうち腹部緊急手術症例は139例(4.3%)であった.腹部緊急手術症例の臨床的特徴およびそれに携わる外科医の現状について検討した.結果: 緊急手術となった原因疾患は,急性虫垂炎36例,腸閉塞15例,腸穿孔15例,炎症性腸疾患10例など下部消化管にかかわる疾患が多かった.担当医は大腸外科医が43例と最多であった.結語: 多くの大腸外科医は,外来·手術のみならず,内視鏡検査,化学療法,さらに緩和医療まで広く携わっている.予定業務だけでも仕事量は増加している上に,緊急手術となるとその負担は無尽蔵となる.医療の質の確保やリスクマネージメントを考慮し,業務分担が必要と考えられた.
症例報告
  • 谷 友之, 太田 智之, 武藤 桃太郎
    2008 年 61 巻 6 号 p. 315-319
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院した.血液検査では炎症マーカーの軽度上昇がみられ,腹部CT検査で右下腹部にtarget signを認めたため回盲部腸重積症と診断した.その後の大腸内視鏡検査では虫垂開口部を中心とした発赤の強い粘膜下腫瘍様隆起を認めたため,虫垂炎による虫垂重積症と診断した.1週間の保存的治療により重積所見の改善を認めた.その後外科的に虫垂切除術を施行したところ,病理組織学的結果は特に重積の核となるような器質的疾患をともなわない急性蜂窩織炎性虫垂炎であった.虫垂重積症は成人腸重積の中で頻度はまれだが,原因として本例のような急性虫垂炎の可能性も考慮する必要があると考えられた.
  • 中村 浩之, 藤本 三喜夫, 宮本 勝也, 中井 志郎
    2008 年 61 巻 6 号 p. 320-323
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は14歳の男性.平成18年6月より腹痛,嘔気,嘔吐を主訴に近医受診.腸重積症と診断されたため,加療目的のため当院へ紹介された.腹部は平坦,軟で,右下腹部に腫瘤を触知したが,下血を認めなかった.腹部造影CT上,回盲部腸重積症の所見であった.注腸による整復を試みたが,不成功のため,緊急手術を施行した.腹腔内を検索したところ,盲腸および上行結腸は後腹膜への固定が不十分であった.回腸が約10cmの長さにわたって上行結腸に重積しており,Hutchinson手技で用手的に整復した.同部位に腫瘤,癒着,捻れなどはなく,血行障害も認めなかった.術後4日目の下部消化管内視鏡検査で回腸末端にリンパ濾胞の過形成を認めるのみであった.回盲部および上行結腸の固定不全という広義のmalrotationとintussusceptionとの合併はWaugh's syndromeといわれ,稀な病態である.
  • 豊田 和広, 高橋 忠照, 池田 昌博, 徳本 憲昭
    2008 年 61 巻 6 号 p. 324-328
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    転移性胃癌の頻度は少なく,大腸癌が胃に転移することはまれである.今回上行結腸癌術後に胃転移をきたした症例を経験した.症例は65歳,男性.上行結腸癌(粘液癌,SE, N2, Stage IIIb)の診断で結腸右半切除術,D3郭清を施行した.術後補助療法としてUFT/LVの内服治療を行ったが,正常化していた腫瘍マーカーが再上昇した.再発部位は明らかではなかったが,腫瘍マーカーを指標にFOLFIRI療法,mFOLFOX6療法にて治療継続した.しかし術後1年5カ月で腫瘍マーカー値上昇が著明となりCT検査で評価した結果,腹部大動脈周囲リンパ節再発のみと判断し放射線治療を行った.その後心窩部痛を訴え胃内視鏡検査を施行したところ,胃内には粘膜下腫瘍様の病変やびらんが多発しており転移性胃癌と診断した.大腸癌術前および術後には重複癌のリスクを考え胃内視鏡検査を行っているが,転移性胃癌も念頭に置くべきと考えられた.
  • 益澤 徹, 富永 修盛, 宮垣 博道, 福崎 孝幸
    2008 年 61 巻 6 号 p. 329-332
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    結腸切除後の吻合部出血は稀にみられる合併症である.今回,Functional end to end anastomosis(FEEA)後の吻合部出血に,アルゴンプラズマ凝固法(APC)を用いて止血できた1例を経験したので報告する.症例は79歳,男性.下行結腸に約2cmの隆起性病変を認め,2006年2月に結腸部分切除術を施行し,FEEAで吻合した.術後11日目から下血を認めたため,下部内視鏡検査を施行.易出血性の吻合部潰瘍と診断し,出血部をAPCで焼灼止血した.以後出血することなく退院となった.FEEAの吻合部には内視鏡的に死角となる部位があり,その死角に潰瘍が発生した本症例では,非接触性で均一に焼灼止血できるAPCが効果的であった.
  • 木村 聖路, 田中 正則, 工藤 敏啓, 相沢 弘, 福田 真作
    2008 年 61 巻 6 号 p. 333-338
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    大腸癌は高齢になると女性の比率が増加し,女性では右側癌の比率が多い現象の分析を試みた.内視鏡検査を受けた大腸腫瘍患者1,004例(腺腫のみ598例,1個以上の粘膜内癌185例,1個以上の浸潤癌221例)を男性638例(M群)と女性366例(F群)に分類した.平均年齢は腺腫群がM群63.3歳,F群67.6歳,粘膜内癌群はM群66.2歳,F群70.1歳,浸潤癌群はM群68.5歳,F群71.8歳であり,いずれもF群が高齢だった(p<0.05).腺腫: 粘膜内癌: 浸潤癌の比率はM群 60.7%:19.4%:19.9%,F群 57.6%:16.7%:25.7%であり,F群はM群より浸潤癌のみ高率だった(p<0.05).近位腫瘍と遠位腫瘍の比率はM群は腺腫48.3%vs 51.7%,粘膜内癌37.0%vs 62.9%,浸潤癌29.1%vs 70.9%であり,腫瘍が進行するほど遠位側移動した(p<0.005).F群は腺腫48.8%vs 51.2%,粘膜内癌41.0%vs 59.0%,浸潤癌43.6%vs 56.4%であり,遠位側移動はなかった.以上から女性は男性より高齢で近位側の浸潤癌を発症しやすいと考えられる.
  • 間遠 一成, 潮 真也, 万本 潤, 間崎 武郎, 石井 敬基, 増田 英樹, 高山 忠利
    2008 年 61 巻 6 号 p. 339-341
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    直腸異物は,性的嗜好や事故により肛門から器具などが挿入され,抜去不可能となったものである.近年普及したPET(Polyethylene terephthalate)ボトルを挿入した症例に対する,安全な経肛門的摘出術の工夫を紹介する.
    症例は61歳男性.入浴中に胴部で切断したPETボトルの上に尻餅をつき,異物が肛門から挿入された.用手的,内視鏡的には摘出困難で,腰椎麻酔下に摘出を試みたが,胴部で切断されたPETボトルの切断面は直腸粘膜に食込み,摘出困難であった.そこで胴部に2∼3cmの間隔で割を数本入れ,胴部を内側に折り畳むことで円錐状に形成したところ滑らかに摘出できた.異物は直径5cm,長さ6.7cmであり,合併症は認めなかった.
    治療は一般的に内視鏡や経肛門的摘出術だが,難渋する場合も少なくない.我々の検索する限り,PETボトルによる直腸異物の報告はこれが初めてである.
  • 村川 力彦
    2008 年 61 巻 6 号 p. 342-346
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/02
    ジャーナル フリー
    症例は56歳男性.血便を主訴に受診.下部消化管内視鏡にて,直腸に隆起性病変を認め,生検にて直腸癌と診断した.その肛門側には10mm弱の亜有茎性ポリープを認めた.手術は腹腔鏡補助下低位前方切除術を施行.切除標本では直腸Rbに20mmの1型腫瘍と,6mmのIspポリープを認めた.病理学的所見では直腸癌は高分化型腺癌でpSM1, pN0であった.ポリープはカルチノイドで,pSM1, ly1, v0, 1群リンパ節1個に転移を認めた.
    10mm以下のカルチノイドはリンパ節転移を認める可能性が低く,局所切除となる場合が多い.しかし微小カルチノイドであっても,脈管侵襲が認められれば,リンパ節転移の可能性があり,根治手術が必要と考えられた.微小直腸カルチノイドに対する腹腔鏡手術は低侵襲であり,良い適応と考えられた.
私の診療と工夫
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