日本大腸肛門病学会雑誌
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68 巻, 3 号
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臨床研究
  • 加藤 典博, 加藤 久仁之, 細井 義行
    2015 年 68 巻 3 号 p. 147-150
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    目的:硫酸アルミニウムカリウム・タンニン酸(ALTA)療法における乙字湯の併用効果を検討した.方法:ALTA単独法あるいは外痔核切除との併用法を行った痔核患者を乙字湯群(ALTA療法の7日前から37日間投与)と非投与群に分け,術後50日以後に内視鏡検査で内痔核の縮小の程度を評価し得たALTA病変(非投与群93病変,乙字湯群91病変)を解析した.結果(非投与群/乙字湯群):Goligher分類とALTA量は両群間で有意差を認めなかった.著明縮小病変は51.6%/65.9%,縮小病変は20.4%/23.1%,不変病変は28.0%/11.0%で有意差を認めた.結語:ALTA療法時の術前からの乙字湯投与は内痔核縮小効果の増加に有益であることが示唆された.
  • 太田 智之, 佐藤 龍, 巽 亮二, 坂本 淳, 古川 滋, 折居 史佳, 前本 篤男, 笠井 章次, 北川 真吾, 河野 透
    2015 年 68 巻 3 号 p. 151-156
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    【目的】当院で経験した成人腸重積21例の臨床病理学的特徴と診断から治療にいたる時間経過から緊急性の検討を行った.【結果】主訴は腹痛を52%,血便を28%に認めたがイレウスや腫瘤触知は10%と少なく,病悩期間は半数以上が亜急性から慢性の経過であった.発生部位は大腸型57%,回盲部型38%であった.原因疾患は53%が大腸癌であった.治療は12例で外科手術,9例に保存的治療が行われ,超高齢でBSCを行った2例以外で全例腸重積は改善した.手術した12例において緊急手術を行った3例を含め全例に腸管壊死例はなく緊急性は低かった.手術した大腸癌9例では0-I型もしくは1型の隆起癌が6例,stage0-IIに留まるものが7例と多かった.【結論】成人腸重積21例の検討では大腸型および回盲部型が多く,半数が大腸癌であった.また本検討では緊急性を要する症例はなく待期的治療で良いものが多いと考えられた.
  • 藤田 昌久, 石川 文彦, 釜田 茂幸, 山田 千寿, 兼子 耕
    2015 年 68 巻 3 号 p. 157-162
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    2003年1月から2012年12月までに,2施設で手術を施行し,病理組織学的に診断された特発性大腸穿孔26例を対象とした.年齢は59歳から90歳,平均76.8歳であり,性別は男性11例,女性15例であった.慢性的な便秘を12例に,便秘との関連が疑われる併存疾患を12例に,排便など発症の誘因となる動作を11例に認め,88%に便秘や排便と関連する患者因子を認めた.死亡率は27%であり,生存例と死亡例で有意差を認めた予後因子は,重篤な併存疾患と術前ショックであった.発症後は手術と集中治療により敗血症性ショックからの離脱を目指すが,予後改善には併存疾患に対する管理も重要である.生存例では術後在院期間が平均58.8日と長く,32%に療養やリハビリテーション目的の転院を要したが,術後在院期間の短縮や発症後に低下したADL改善のため,敗血症の急性期を脱した後のリハビリテーションの早期開始が必要である.
症例報告
  • 藤井 研介, 新田 敏勝, 川崎 浩資, 片岡 淳, 石橋 孝嗣
    2015 年 68 巻 3 号 p. 163-167
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性で,発熱,腹痛を主訴に救急搬送された.腹部全体に筋性防御を認め,腹部CTで遊離ガスと腹水を同定し,下部消化管穿孔による腹膜炎と診断し緊急手術を行った.開腹所見では,便汁性腹水の貯留とS状結腸に10mm大の穿孔を同定し,結腸部分切除および人工肛門造設を行った.穿孔部には,ハサミで一包化されたPress through package(以下,PTP)を認め,その鋭利な角で線状潰瘍が形成されており,PTP誤飲によるS状結腸穿孔と診断した.PTPによる下部消化管穿孔の報告は比較的まれであり,誤飲の認識のない高齢者に多くみられる.高齢者急性腹症の一因として,PTPも念頭におき,診断・治療を行う必要があると思われ,文献的考察を加えて報告する.
  • 吉谷 新一郎, 三木 明寛, 森岡 広嗣
    2015 年 68 巻 3 号 p. 168-172
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.下血を主訴に近医を受診.内視鏡検査にて直腸に隆起性病変を認め直腸癌の診断で当科紹介となった.腹部は平坦,軟で直腸診では肛門縁から5cmに腫瘍を触知した.腫瘍マーカーは正常範囲であった.注腸造影では直腸S状部に蟹爪様の陰影欠損像を認め腹部CTでは直腸壁は同心円状を呈しており重積が疑われた.以上より腸重積をきたした直腸癌と診断したが腹部症状がないことから待機手術とし腹腔鏡手術を選択した.術中,重積腸管の解除を試みたが整復は困難であり,D3郭清を伴う腹腔鏡補助下直腸切除術を施行した.病理診断はRs,type1,pap>tub2,pT3(SS),N3,ly1,v1,StageIIIbであった.術後経過は順調で第10病日目に退院となった.現在,補助化学療法としてXELOX療法を継続中である.腸重積をきたした直腸癌は非常に稀であり待機的に腹腔鏡手術が可能であった症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 向井 洋介, 賀川 義規, 木村 慶, 向坂 英樹, 加藤 健志
    2015 年 68 巻 3 号 p. 173-177
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    症例は80代,女性.直腸脱の既往があり,1年前に当科にて修復術を施行されたが術後早期より再発を認め経過観察されていた.今回,自宅トイレにて急激な腹痛と会陰部より腸管脱出認め救急搬送となった.来院時身体所見でも会陰部より腸管脱出を認め,直腸診にて直腸脱穿孔部からの腸管脱出と診断した.脱出した小腸は会陰部の疼痛が激しく徒手整復は困難であったため手術の方針となった.術式は単孔式腹腔鏡下直腸切断術,S状結腸人工肛門造設術を行った.術後経過は良好で術後27日目に独歩にて退院となった.会陰部からの小腸脱出の報告は直腸脱や子宮脱を既往のある症例が半数を占め,本症例においても慢性的な直腸脱の既往があり菲薄化した直腸前壁に温水洗浄便座のノズルが刺さり穿孔をきたしたものと受傷起点から考えられた.これまで温水洗浄便座のノズルによって大腸穿孔をきたした症例は世界でも報告されておらず,非常に稀な病態と考えられた.
  • 鏡 哲, 小池 淳一, 船橋 公彦, 栗原 聰元, 塩川 洋之, 牛込 充則, 金子 奉暁, 新井 賢一郎, 鈴木 孝之, 大久保 陽一郎, ...
    2015 年 68 巻 3 号 p. 178-184
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    側方リンパ節転移陽性の進行直腸癌に対し術前化学療法が奏効し,肛門温存も図れた1例を報告する.症例は68歳女性.肛門出血を主訴に他院受診し,直腸癌の疑いで当科紹介された.直腸診・下部内視鏡検査で一部歯状線にかかる約1/3周性の可動性不良な腫瘍を認め,生検で直腸癌と診断された.精査で左閉鎖リンパ節腫脹を認め,RbP cT3 (cA) cN3 cM0 cStage IIIbと診断しAPRを検討したが,肛門温存と早期の全身化学療法導入による遠隔転移抑制を目的に,十分なICのもと術前化学療法(mFOLFOX6)を施行した.6クール施行後,腫瘍・リンパ節ともに著明な縮小を認め,肛門温存も可能と判断し,ISR(D3+側方リンパ節郭清),予防的回腸人工肛門造設術を行った.病理所見では原発巣,リンパ節に癌細胞を認めず,pathological CR,効果判定基準Grade3であった.
  • 稲岡 健一, 片岡 政人, 木下 満, 中山 裕史, 近藤 建
    2015 年 68 巻 3 号 p. 185-189
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/02/27
    ジャーナル フリー
    症例1は65歳の女性で,直腸癌に対して直腸低位前方切除,D2郭清を施行した.病理は高分化型腺癌,stageIであった.1年半後にCEAの上昇を認め,CTにて右副腎転移と診断した.初回術後1年7ヵ月後,右副腎摘出術を施行し,病理検査にて直腸癌副腎転移と診断した.術後再発なく副腎摘出術後12年8ヵ月の長期生存を得た.症例2は57歳の男性で,血便の精査によりS状結腸癌,肝転移,右副腎転移と診断した.原発巣に対して,S状結腸切除,D2郭清を施行後,mFOLFIRI療法を12コース施行した.新規病変の出現は認めず,初回術後10ヵ月後,肝部分切除,右副腎摘出術,胆嚢摘出術を施行し,肝・副腎ともに病理検査にてS状結腸癌転移と診断した.肝転移・副腎摘出術後7年5ヵ月無再発生存中である.大腸癌副腎転移切除の長期生存例はまれであるが,外科的治療を含めた集学的治療により長期生存が期待できる可能性が示された.
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