日本公衆衛生雑誌
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60 巻, 4 号
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公衆衛生活動報告
  • 河合 恒, 光武 誠吾, 福嶋 篤, 小島 基永, 大渕 修一
    2013 年 60 巻 4 号 p. 195-203
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 地域住民の主体的な介護予防活動推進のために,「介護予防リーダー養成講座」のカリキュラムを作成した。その実施を通して,受講生の介護予防自主グループの設立状況や,介護予防の理解度や自信の変化から講座の評価を行い,今後の課題について検討した。
    方法 平成21~23年度に東京都 A 区(1 期),B 市(2 期),C 村(1 期)と千葉県 D 市(3 期)において実施した 7 期分の介護予防リーダー養成講座の修了者178人を講座の評価の対象とした。介護予防リーダー養成講座は,知識の教授を目的とした講義,および地域の課題の調査や先駆的活動の見学などの演習から構成した。本講座の評価として,講座の修了者が設立した介護予防自主グループ活動について,①自主グループ活動の内容,②設立に至った経緯,③活動場所,④実施頻度,⑤参加者数などの調査を行った。講座前後に介護予防の理解度と自信に関するアンケート調査も行い,講座受講による変化を調べた。
    結果 受講者が設立した自主グループは35グループであり,活動内容は複数種類にわたっていた。グループの多くは地域包括支援センターや社会福祉協議会などの支援を得て設立•運営していた。介護予防の理解度は,対象としたほとんどの講座の前後において有意に向上していた。しかし,自信については全 7 講座のうち 4 講座では有意な向上を示したが,3 講座では向上は認められなかった。
    結論 講座修了者は複数の活動内容の自主グループを設立しており,講座は住民主体の介護予防活動の推進に有用であったことが示唆された。設立には関係機関や組織の協力が不可欠であり,これらとの結びつきを意識した講座の進行や,協働の機会の提供が重要と考えられた。講座は介護予防の理解や自信の向上に効果があったが,自信については地域差があり,受講者の地域ネットワークや地域資源の活用状況によっても影響を受けることが示唆された。したがって,自信を高めるためのフォローアップが重要と考えられた。
研究ノート
  • Tomoki SATO, Tomoyuki AKITA, Junko TANAKA
    2013 年 60 巻 4 号 p. 204-211
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    Objectives In 2009, epidemics of influenza (H1N1pdm) occurred worldwide. We evaluated 4 strategies for control and prevention of influenza (treatment with antiviral drugs, preventive actions, cancellation of large events, and school closures) by surveying the H1N1pdm epidemic in a geographically isolated rural town in Japan, and applying the epidemic to mathematical models.
    Methods Subjects were 291 children attending nursery, primary, and junior high schools in Kounu town. The 4 strategies were evaluated by 3 types of mathematical models with varying parameters.
    Results The total number of infected cases, as reported in questionnaires, was 120. In the best-fitting model, treatment with antiviral drugs shortened the epidemic period from 31 to 23 days. Event cancellation reduced the total number of infected cases from 127.1 to 87.6 and the maximum number of cases from 63.7 to 41.7. In this simulation, 56 people were affected by the intervention. Immediate school closure reduced the total and maximum numbers of infected cases to 62.6 and 23.1, respectively.
    Conclusion Statistical analysis confirmed that event cancellation and school closure are effective strategies for control of an influenza epidemic. The effective contact rate varied, which reflects a localized and rapidly spreading epidemic in a subpopulation.
  • 纐纈 朋弥, 後閑 容子, 石原 多佳子, 玉置 真理子, 後藤 忠雄, 小林 鈴香
    2013 年 60 巻 4 号 p. 212-221
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 妊産婦とそのパートナーを対象とした禁煙サポートプログラム作成のために,妊娠判明後のパートナーの喫煙行動に焦点を当て,妊娠を境に禁煙する者と喫煙を継続する者の関連要因を明らかにすること。
    方法 兵庫県 A 市,岐阜県 B 市の 4 か月児健診対象児1,198人(A 市776人,B 市422人)の父母を対象にそれぞれの児の健診時に無記名自記式質問紙調査を実施した。調査項目は次の通りである。調査対象者全員:年齢,最終学歴,喫煙歴,現在の喫煙状況,喫煙に関する認識。パートナーへの追加項目:職業,職場の喫煙状況,喫煙に対する態度等。女性への追加項目:子どもの数,家族構成,妊娠判明時のパートナーの喫煙に対する態度とその対応等である。
      有効回答数(父母ペア)および有効回答率は A 市776組中558組(71.9%),B 市422組中395組(93.6%)であった。そのうち本研究では,妻の妊娠判明前に喫煙していたパートナーを分析の対象とし,調査対象地域別に妊娠を機に禁煙した者(以下「喫煙中止群」)と喫煙を継続した者(以下「喫煙継続群」)で項目ごとの比較分析および,この 2 群を目的変数とし,両群で統計学的に差が認められた項目と調査対象地域に関連した項目を説明変数として,ロジスティック回帰分析により検討した。
    結果 分析対象としたパートナー A 市558人,B 市395人のうち妊娠判明前に喫煙していた者は A 市210人(37.6%),B 市204人(51.6%)であった。そのうち今回の妊娠判明後禁煙した者は A 市16人(7.6%),B 市26人(12.7%)であった。
      ロジスティック回帰分析の結果,子どもの数が 2 人以上のオッズ比は,2.77(95%信頼区間:1.17–6.57),パートナーが妻の妊娠判明時にタバコを今すぐやめようと思った場合のオッズ比は0.05(95%頼区間:0.01–0.18),妊娠判明時にパートナーの喫煙に対し女性が禁煙を強くすすめている場合のオッズ比は0.19(95%信頼区間:0.08–0.44)であった。
    結論 子どもの数が 2 人以上になると妊娠判明後も喫煙を継続し,妻の妊娠判明時にパートナーが今すぐタバコを止めようと思うこと,女性がパートナーの喫煙に対し禁煙を強くすすめることで喫煙を中止しやすいことが示唆された。
  • 村上 晴香, 吉村 英一, 髙田 和子, 長谷川 祐子, 窪田 哲也, 笠岡(坪山) 宜代, 西 信雄, 横山 由香里, 八重樫 由美, 坂 ...
    2013 年 60 巻 4 号 p. 222-230
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 2011年 3 月11日に発生した東日本大震災を受け,厚生労働省では被害が甚大であった地域を対象として「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査」を実施している。本研究は,この調査の質問票の中で身体活動状況を評価する 4 つの質問項目(質問 1:日常での身体活動,質問 2:外出の頻度,質問 3:歩行の時間,質問 4:不活動の時間)について妥当性および再現性を検討することを目的に行った。
    方法 対象者は,岩手県釜石市 H 地区の仮設住宅居住者のうち本研究への参加同意が得られた74人(男性21人,女性53人)であった。身体活動状況の質問票の妥当性を検討するため,3 次元加速度計による身体活動量調査を 2 週間実施した。また,再現性を検討するため 2 週間の期間を空け質問票への回答を依頼した。
    結果 3 次元加速度計で身体活動を評価すると,歩数では男性4,521±2,266歩/日,女性4,533±2,070歩/日であり,中高強度身体活動量は男性で週10.6±7.3メッツ•時,女性で週14.7±8.2メッツ•時であった。妥当性について,歩行時間の把握に関する質問 3 の各選択肢において歩数に有意な差が認められた(回答 1. 1 時間以上:5,343±1,757歩,回答 2. 30分~1 時間:4,760±1,752歩,回答 3. 30分以下:3,063±1,772歩,P<0.05)。さらに質問 1~3 の選択肢について活発であるとされる選択肢が高得点となるよう点数を配置し,その合計得点と 3 次元加速度計により得られた変数との相関を検討したところ,歩数(r=0.486, P<0.05)および中高強度身体活動量(r=0.342, P<0.05)ともに有意な相関が認められた。また,身体活動質問票の 1 回目と 2 回目に回答があった70人において,重みづけ κ 係数を用いて再現性の評価を行ったところ,0.41~0.65の中程度の再現性が確認された。
    結論 「東日本大震災被災者の健康状態等に関する調査」における身体活動状況の 4 つの質問について,3 次元加速度計を用いた妥当性の検討では,日常での身体活動,外出の頻度,歩行の時間に関する項目および 3 つの質問の合計得点で妥当性が認められた。またいずれの項目においても中程度の再現性が認められた。
  • 山縣 恵美, 山田 陽介, 杉原 百合子, 小松 光代, 木村 みさか, 岡山 寧子
    2013 年 60 巻 4 号 p. 231-240
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 地域に在住する自立高齢女性における各体力要素と抑うつ状態との関連を明らかにすることを目的とした。
    方法 平成14年から平成23年にかけて毎年継続開催している高齢者体力測定会への参加者のうち,初回参加時65歳以上であった女性の初回時データ(886人)を分析対象とした。調査項目は,平衡性や,歩行能力,筋力,柔軟性,持久性などの体力および抑うつ状況,質問紙による生活状況である。抑うつ状態は,GDS (Geriatric Depression Scale)簡易版を用い,GDS スコア 5 点以下の非抑うつ群と 6 点以上の抑うつ群に区分し,この 2 群間での生活状況および体力の比較を行った。また,体力については,年齢および抑うつ群•非抑うつ群間に有意差の認められた食習慣,運動習慣などの生活状況項目を共変量とした共分散分析を行った。
    結果 対象者の21.1%は GDS スコアが 6 点以上であった。抑うつ群は非抑うつ群に比べて,筋パワー,敏捷性,筋力,持久力,歩行能力が有意に低値であった。食習慣や運動習慣等の生活状況を交絡因子として調整をしても,垂直跳び,シャトル•スタミナ•ウオーク,等尺性膝関節伸展筋力のような下肢筋力に関連する体力および持久力が有意に低値を示した。
    結論 生活が自立し,自ら希望して体力測定に参加するような比較的活動的な高齢女性においても抑うつ状態にある者が一定割合存在することより,地域在住高齢者における潜在的なうつ傾向はこれより高率と考えられた。また,下肢筋力や持久力は生活習慣や活動状況と独立して抑うつ状態に関連することから,より下肢の筋力向上を意識した運動介入がうつに有効な可能性が示唆された。
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