新らしく合成された水溶性テトラサイクリン誘導体であるプロリノメチルテトラサイクリンおよびその静注用製剤の毒性, 血清中濃度, 尿中排泄および組織中濃度をマウス, ラットおよび犬を用いて検討した。
1. PM-TC静注剤の静脈内注射でのLD
50は,マウスのばあい, 114mg (力価)/kg, ラットのばあい115mg (力価)/kgで, 急性致死作用にほとんど種差がみとめられなかつた。また, 対照として用いたPRM-TC静注剤のマウスLD
5060mg (力価)/kgにくちべ, 急性致死毒性の低いことは明らかである。
2. 7日間の連続腹腔内投与では, 200mg (力価)/kgの大量投与でも全例生存したが, 300mg (力価)/kg投与では, 6日目の投与で全例死亡した。一方, PRM-TC静注剤のばあい, 全例生存するのは100mg (力価)/kg投与のばあいで, 300mg (力価)/kg投与では1回の投与で全例死亡し, このばあいもPM-TC静注剤の致死毒性はPRM-TC静注剤よりも明らかに低い結果を示した。
3. ラットに5mg (力価)/kgを静脈内注射したばあい, 30時間までの尿中回収率は, 平均66.2%で, PRM-TC静注剤よりもやや少なかつた。
4. ビーグル犬に5mg (力価) /kgを静脈内注射したばあいの血清中濃度は, PRM-TC静注剤と同様に30分でピークに達し, そのピーク値は約5μg (力価)/mlであつた。しかし, その後の減少は, PM-TC静注剤のほうがゆるやかで, やや持続的であると思われるパターンを示した。
5. ラットに5mg (力価)/kgを静脈内注射し斥ばあいの組織中濃度は, 腎, 肝, 卑清, 肺, 脾の順で高く, 膨では検出できなかつた。これらは, PRM-TC静注剤でも同様の傾向であつたが, 濃度はPM-TC静注剤のほうが高く, 膿器移行性がやや良好であると考えられた。
6. 以上の実験結果から, PM-TC静注剤は組織分布が良好で, 高い血清中濃度を持続する, 致死毒性の低い, 新らしいテトラサイクリン誘導体であるといえる。
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