地質学雑誌
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105 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 下山 正一, 木下 裕子, 宮原 百々, 田中 ゆか里, 市原 季彦, 竹村 恵二
    1999 年105 巻5 号 p. 311-331
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    従来の第四紀地殻運動論では, 九州のほぼ全域を隆起地域と解釈してきた.最近, 九州北部各地に沈降域があることが明らかになったので, 堆積相・貝化石群集・生痕化石などの古水深指標と広域テフラに基づいて九州各地の最終間氷期最高海面期(ステージ5e)の旧汀線高度を比較し, 過去約12.5万年間の九州の地殻運動を見直す作業を行った.その結果, 過去12.5万年間の動きは別府~島原地溝帯を境に, 九州北部は全て沈降地域である.また, 九州南西部にも沈降地域があることが判明した.特に佐伯から川内にかけて九州を北東-南西に横切る1本の顕著な沈降軸(佐伯~川内沈降軸)が存在する.九州南東部は顕著な隆起地域であることを再確認した.沈降地域や隆起地域の隣接分布は, 現在の九州の海岸地形と極めて調和的である.中期から後期更新世にかけて地殻運動が逆転したと考えられる地域が存在する.これは九州の複雑な地殻運動史を示している.
  • 吉川 周作, 三田村 宗樹
    1999 年105 巻5 号 p. 332-340
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    大阪平野中央部のボーリングコアの岩相・火山灰層序に基づいて, 地下第四系を淡水成層の都島累層と海成・淡水成互層の田中累層に区分し, 田中累層には, 20層の海成粘土層(Ma-1・Ma 0…Ma 12層)が挟まれることを報告した.これらの岩相層序, 火山灰・古地磁気層序や花粉・ナンノ化石などの資料を総合的に検討し, 大阪平野第四系層序と深海底の酸素同位体比層序との対比を行った.その結果, 各海成粘土層(Ma-1~Ma 12)の形成時期は酸素同位体の奇数ステージ(37~5)に対比できること, 花粉・ナンノ化石資料からみて, 温暖な気候のもとで高海面を示す海進によって堆積したと考えられるMa 3・Ma 6・Ma 9・Ma 10・Ma 12・Ma 13層は, Shackleton(1997)などが酸素同位体比変化曲線から指摘した特に寒冷な氷期から温暖な間氷期への急変を示すターミネーション直後の間氷期とそれぞれ一致することを明らかにした.本研究の結果は, 大阪平野第四系で認められる海進現象が深海底の酸素同位体比変化曲線と密接に関連しており, 地球規模の気候変動と同調していることを示している.
  • 青木 淳, 周藤 賢治, 板谷 徹丸
    1999 年105 巻5 号 p. 341-351
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道西北部, 日本海沿岸の浜益地域には, 鮮新世の署寒別火山噴出物に覆われて第三紀火山岩が広く分布しているが, それらは層序学的に下位から岩老層, 幌層, 浜益層に分けられ, さらに岩老層は, AからFの6ユニットに細分される.K-Ar年代は下位の5ユニットの玄武岩と安山岩が3.7±0.1 Maと3.8±0.1 Ma, Bユニット中の安山岩岩脈が3.8±0.1 Ma, 最上位の浜益層の玄武岩が2.6±0.1 Maを示す.岩老層の溶岩および火砕岩は, 3.7~3.8 Maに本地域東部に形成された火山から噴出し, 土石流堆積物や河川性堆積物は, この火山の山体崩壊によって形成されたと推定される.2.6 Maには浜益層の溶岩が噴出し, 3.7~3.8 Maの火山生成物を覆った.本地域の玄武岩は, 東北日本・千島弧の鮮新世~第四紀の玄武岩と異なる地球化学的性質をもっている.これは, 本地域の鮮新世のマグマが, これらの鮮新世~第四紀のマグマとは異なる成因により形成されたことを示唆する.
  • 田中 尚, 宮田 雄一郎
    1999 年105 巻5 号 p. 352-363
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    歪み速度が泥質堆積物の変形様式に与える効果を検討した.試料には圧密したカオリン粘土を用い, 平面歪み圧縮条件でせん断した.歪み速度は従来のせん断試験よりも高速な2.0×10-4s-1から3.0×100 s-1の範囲とした.その結果, 歪み速度が変形様式に大きな影響を与えることが明らかになり, 高歪み速度では流動的な変形を示すことがわかった.低速でせん断すると, 低軸歪み段階でせん断歪みが局所化し, 少数で長い明瞭な主せん断面が成長する.軸歪み20%に至る前に試料は分断され, 滑り変位が主体の脆性的な変形様式を示す.一方, 高速でせん断すると大歪みまで塑性変形を示し, せん断歪みが局所化しなくなる.40%もの軸歪みを与えても試料を分断するようなせん断面は発生せず, 広範囲に微細で短い微少変位のせん断面が密に生じ, 巨視的には流動的な変形様式を示す.天然のスランプ褶曲にも歪み速度の違いにより, 対照的な破壊形態が観察されることもある.このような変形様式は, せん断面の発生に先立って起こるせん断歪みの局所化に支配されていると考えられる.
  • 奥野 充, 吉本 充宏, 荒井 健一, 中村 俊夫, 宇井 忠英, 和田 恵治
    1999 年105 巻5 号 p. 364-369
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道駒ヶ岳火山, Ko-fテフラの噴出年代は, 約3.0 kyr BPとされてきた.それは, Ko-f直上の土壌について, 2750±110 yr BPの14C年代が得られていたためである.しかし, テフラ直上の土壌の14C年代は, その噴出年代と大きく異なることがある.そこで筆者らは, Ko-f直下の腐植質土壌やその上下の炭化木片の14C年代をAMS法により測定した.Ko-f直下の土壌の14C年代は, 5480±90 yr BP(NUTA-5783)と5530±80 yr BP(NUTA-5785)で1σの誤差範囲内で一致する.この一致は, 2つの試料の閉鎖系がほぼ同時に成立したことを示す.すなわち, これらがKo-fの噴出年代を示すと考えられ, 約5.5 kyr BPと推定できる.この噴出年代は, 2点の炭化木片の14C年代とも調和する.この14C年代のキャリブレーションから, 約6.3 cal kyr BPの暦年代が得られる.Ko-f噴火に先行する休止期間は, 1000年に満たない.
  • 能條 歩, 長谷川 四郎, 岡田 尚武, 都郷 義寛, 鈴木 明彦, 松田 敏孝
    1999 年105 巻5 号 p. 370-388
    発行日: 1999/05/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道渡島半島に分布する瀬棚層の広域的な層序区分を行い, 微古生物学的検討を行って堆積年代を求め, 以下の結論を得た.1)瀬棚層は岩相層序学的特徴から花石砂礫岩部層・珍古辺砂岩部層・畑の沢砂礫岩部層・夏路砂礫岩部層・中里砂礫岩部層・添別砂岩部層の6部層に再定義される.2)花石砂礫岩部層・夏路砂礫岩部層・中里砂礫岩部層は瀬棚層下部に, 珍古辺砂岩部層・畑の沢砂礫岩部層・添別砂岩部層は瀬棚層上部に位置付けられる.3)瀬棚層の堆積年代は, 浮遊性有孔虫と石灰質ナンノ化石に基づく生層序学的な検討により, 下部が約1.2~1.0 Ma, 上部が約1.0~0.6 Maと考えられる.4)堆積初期に渡島半島東部から侵入した浅海・寒冷な海域は, 後期になって西方へ拡大・深化するとともに断続的な暖流の流入を受けた.5)瀬棚層は生層序学的に, 富川層・大釈迦層・北浦層上部~脇本層・灰爪層・大桑層中~上部等に対比される.
  • Ken Nakayama, Nihat Kaya
    1999 年105 巻5 号 p. IX-X
    発行日: 1999年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    In the Pontides belt of northern Turkey, a number of ophiolites, which represent the paleo-Tethys oceanic crust-mantle of the Permian to Jurassic and active continental margin sequences of the Permian to early Jurassic are juxtaposed along the Tethyan suture (Sengor et al., 1980). Around the Kure mine dismembered ophiolite lacking sheeted dike complex is chaotically jumbled among terrigenous sedimentary rocks. In the Kure open pit, blocks of massive and stockwork sulfide ore associated with hyaloclastite ranging from a few tens of centimeters to few hundred meters in diameter are inlaid in scaly argillite with a prominent tectonic contact; so-called melange. The oceanic crust of paleo-Tethys overlain by a Cyprus type deposit is thought to be mingled with trench-fill terrigenous sediments and accreted to the continent. Although VMS deposits in sedimentary settings such as a back arc basin or marginal sea have been defined as Besshi type deposits (e. g., Slack, 1993), what would be the product if allochthonous VMS deposits, such as in this case, were introduced to a deeper level within the subduction zone and consequently undergone high P/T metamorphism ?
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