栃木縣鍋山より産出する腕足類に就ては早坂一郎博士の研究以來有名である。筆者等は, 此の化石層準を門ノ澤で確めたるに, 此の腕足類帶の下位約10米の層準に, 紡錘蟲の多産する所を發見した。其の中には半澤正四郎博士の鑑定に依れば, Parafusulina kaerimizuensis (OZAWA)を合む。從來の報告に依れば, 此の腕足類帶の上には, Parafusulina kaerimizuensis OZAWAを含む紡錘蟲帶の壘重する事が知られ, 前者は石炭紀, 後者は下部三疊紀とされてゐた。何れにせよ, 腕足類帶と上の紡錘蟲帶とは切り離して考えられて來てゐた。しかるに今囘の發見により, 腕足類帶も亦下部二疊紀に屬する事が明瞭となったわけである。
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