地質学雑誌
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111 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論説
  • 井上 卓彦, 塩屋 藤彦, 岩本 直哉, 天野 敦子, 井内 美郎
    2005 年111 巻5 号 p. 255-268
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    山陰地域中部,宍道低地帯東部の海域,美保湾で行った音波探査記録に基づき,同低地帯東部の中海から美保湾にかけての後期更新世以降の発達史を明らかにした.音波探査記録と既存ボーリングデータを比較した結果,縄文海進以前および後期更新世に形成された3つの顕著な反射面が認められた.これより,後期更新世以降の地史を5段階に区分した.ステージ1(MIS 6)は,最終間氷期前で,海水準が低下していた時代である.ステージ2(MIS 5)は海水準が現在とほぼ同じ時代で,旧弓ヶ浜砂州が現在とほぼ同じ位置に形成され,砂州先端では潮流により海釜地形が形成された.ステージ3(MIS 4-3)では,ステージ2で形成された海釜地形を埋める堆積が起こった.ステージ4(MIS 2)では海水準が大きく低下し,更新統上面に凹地形が形成された.ステージ5(MIS 1)では,縄文海進以降に現在の堆積地形が形成された.
  • 石原 与四郎, 徳橋 秀一
    2005 年111 巻5 号 p. 269-285
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    房総半島に分布する安房層群最上部の安野層(鮮新統)は,主として半遠洋性泥岩の卓越するタービダイト・サクセッションからなる.一組の背斜・向斜軸を挟んで地層が分布するうえ,鍵層となる多くの凝灰岩層が挟在することから,タービダイト堆積体の形態および層相の側方変化を3次元的に解析することができる.主体を占めるタービダイト/半遠洋性泥岩の互層と,これにしばしば伴われるチャネル相とレビー相,スランプ相など特徴的な層相との関係が明らかになった.堆積相の側方変化様式と古流向から,安野層がチャネル・レビー・システムを主体とする下部と,チャネル・ローブ・システムを主体とする上部から構成される海底扇状地システムであることが判明した.さらに,上位になるほど,堆積の中心域が北方に向かって次第に後退したことが示される.
  • 小林 博文, 山路 敦, 増田 富士雄
    2005 年111 巻5 号 p. 286-299
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    能登半島輪島地域の下部中新統は,扇状地成ないしファンデルタ成の砕屑岩層からなり,浅海成ないし広大な湖の浅部で堆積した薄層を数層準に挟む.積算層厚が1800 mを越えるこの地層中には傾斜不整合が複数認められ,それらによって層序が区分される.複数の鍵層を追跡することにより,地質図規模の正断層が推定された.また,頻繁にみられる小断層は,様々なトレンドの斜めずれ正断層を主とする.規模の異なるこれらの断層は,ともに東-西ないし北東-南西方向の伸長変形を示す.しかしこの地域の中部中新統以上の海成層には同様の変形がみられない.したがってこれは,前期中新統の堆積時の変形であったと考えられる.この伸長方向は能登半島北東部から報告されたグラーベン群の示唆する伸長方向と直交するが,半島西側の海域で発見された下部中新統のグラーベン群のそれとは調和的である.このことから日本海拡大時,西南日本は複雑なブロック化をしつつ移動したらしい.
  • 廣瀬 丈洋, 早坂 康隆
    2005 年111 巻5 号 p. 300-307
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    福井県小浜市下加斗片地域に露出している丹波帯と超丹波帯のナップ境界断層帯の内部構造と浸透率構造を調べた.その結果,(1)両地質体は約3 mのカタクレーサイト帯を介して完全に固着して接しており,変形は幅0.2~3 cmの面状カタクレーサイトに集中していること,(2)断層帯では,石英や方解石,リモナイト脈,炭質物の濃集層のほか,多量の層状珪酸塩鉱物が晶出しており,流体を媒介とした活発な物質移動があったこと,(3) 本ナップ境界では,上盤に低い浸透率を示す砂岩層,下盤および断層帯ではそれより1~3桁高い浸透率を示す礫質泥岩層およびカタクレーサイト帯が分布していることがわかった.このような浸透率構造によって,断層帯内部に高間隙水圧が保持され,ナップの大規模な衝上運動が可能になったと考えられる.
短報
  • 及川 輝樹, 古澤 明, 高橋 康
    2005 年111 巻5 号 p. 308-311
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/01
    ジャーナル フリー
    The Plio-Pleistocene Okui Formation in the Komoro Group in central Japan is composed of lake and fluvial deposits and contains many pyroclastic deposits. A thick pyroclastic flow deposit within the Okui Formation, namely the U-1 pyroclastic flow deposit, includes biotite mineral and is composed mainly of volcanic glasses and coarse pumice fragments (average maximum grain size: 10 cm). The U-1 pyroclastic flow deposit can be correlated to the Znp-Ohta Tephra Bed, which is the early Pliocene (ca. 4 Ma) widespread tephra in central Japan, by petrographic properties and stratigraphic position. This correlation enables precise correlation of the early Pliocene formations between the sea sides (the Pacific Ocean and Japan Sea) and the inland regions. The U-1 pyroclastic flow deposit is thickest among the pyroclastic flow deposits previously correlated to the Znp-Ohta Tephra Bed. This suggests that the source area of the Znp-Ohta Tephra Bed is located near the distribution area of the Okui Formation.
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