地質学雑誌
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107 巻, 2 号
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  • 植田 勇人, 川村 信人, 岩田 圭示
    2001 年 107 巻 2 号 p. 81-98_2
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    浦河地域イドンナップ帯の白亜系付加体は5つの岩相ユニットの組み合わせから, 緑色岩優勢のナイ沢コンプレックスと砕屑岩優勢の幌別川コンプレックスに区分される.ナイ沢コンプレックスは, 緑色岩スラブ(B-Unit)と, 二畳紀の海山体および二畳紀-前期白亜紀の大洋底-海溝充填堆積物の断片(MN-Unit)の, 互層状複合体である.幌別川コンプレックスは白亜紀後期の大洋底および海溝充填堆積物(PT-Unit), 白亜紀前期-後期の海底地すべり・土石流堆積物(MH-Unit), および白亜紀後期-暁新世の斜面海盆堆積物(T-Unit)から構成される.イライト結晶化度から, 付加後の上昇・衝上運動と後期の再配列が認められた.ナイ沢コンプレックスは, 前弧オフィオライトと海溝に沈み込む海山の衝突によって, 白亜紀前期に形成された.一方, 幌別川コンプレックスは, 前弧海盆堆積作用の終息とほぼ同時に, 白亜紀後期に形成された.
  • 花方 聡, 本山 功, 三輪 美智子
    2001 年 107 巻 2 号 p. 101-116
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    秋田県内の7ルートにおいて放散虫化石層序を検討した結果, 底生有孔虫化石Spirosigmoilinella compressaの産出上限の年代として5.4 Ma, Miliammina echigoensisの産出下限の年代として5.2 Maを得た.さらに, ODP Legs 127/128の公表資料について各サイトの年代層序を再検討し, S. compressaの産出上限の年代と, M. echigoensisの産出下限の年代を調査した結果, 秋田地域で得られた年代値と整合的であることが明らかとなった.両種の入れ替わる年代は中新世・鮮新世境界の年代(5.32 Ma)と接近しており, 同地域における中新統・鮮新統境界を認定する上で大変有効である.既存資料に基づいてS. compressaとM. echigoensisの生息深度を推定した結果, 両種の生息深度は互いに重複し, 日本海最深部に及ぶことが判明した.これら2種の日本海地域における入れ替わりは鮮新世初期の汎世界的な海水準上昇に起因する日本海底層水環境の変化に対応すると推測される.
  • 島田 耕史, 小針 雄一郎, 岡本 隆之, 高木 秀雄, 坂 幸恭
    2001 年 107 巻 2 号 p. 117-128
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    中央構造線沿いのマイロナイト化した領家花崗岩類から, 新たに断層生成型シュードタキライトが発見された.本シュードタキライトはマイクロライトや杏仁状組織の存在に基づき, メルト起源である.メルト生成過程は, 低い融解温度を持つ鉱物の選択融解によるものと考えられる.シュードタキライト中の岩片として, 角閃石, 黒雲母が存在しないことと, SiO2含有量の母岩に対する系統的な減少は, この解釈を支持する.本シュードタキライトは, マイロナイト化の後に形成され, その後にMTLの活動に由来するカタクレーサイト化を受けている.MTL, シュードタキライトの断層脈, マイロナイト面構造の類似した姿勢は, 一連の断層岩類の形成が, 1つの造構応力場のもとで進行したことを示している.本シュードタキライトは, 摩擦融解過程を伴った過去の高速断層運動の一例であり, 中央構造線の地震性断層運動を示している.
  • 星 博幸, 山田 桂, 入月 俊明
    2001 年 107 巻 2 号 p. 129-141
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    秋田県五城目地域の鮮新-更新統笹岡層から試料を採取し, 残留磁化を測定した.採取した26サイト(層準)中, 11サイトからサイト平均磁化方位が求められた.段階熱消磁, 累進褶曲テスト, および累進反転テストにより, 残留磁化の安定性と獲得時期を詳細に検討した.その結果, 褶曲テストと反転テストの両方とも, 現在の褶曲形態を80%補正したときに最良の結果が得られた.このことから, 得られたサイト平均磁化方位は, 褶曲運動による地層の歪により堆積時の磁場方位からずらされていることが示唆された.そのため堆積時以降の地殻回転を詳しく論じることはできないが, 少なくとも数十度を越すような大きな回転は被っていないことが示唆された.既報の石灰質ナンノ化石層序を加味して古地磁気層序を検討した結果, 本層中にガウス正磁極期-松山逆磁極期の境界(Berggren et al. (1995)によると2.58 Ma)に対比される磁化極性の反転が記録されていることが明らかになった.
  • 安藤 寿男, 友杉 貴茂, 金久保 勉
    2001 年 107 巻 2 号 p. 142-162_2
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    中頓別地域の蝦夷超層群上部は上部蝦夷層群寿層, 函淵層群上駒層・平太郎沢層・奥宇津内層・宇津内川層に区分できる.他地域に比べ細粒の沖合相が卓越し, 非海成層は見られないが, 下部外浜のストーム成浅海成砂岩も少なからず含まれる.上駒層下部以下は下部カンパニアンのSphenoceramus schmidti帯, 上駒層上部はInoceramus shikotanensis帯で下部マストリヒシアン, 上駒層最上部から平太郎沢層下部はSphenoceramus hetonaianus帯で下部マストリヒシアンの上部に位置づけられる.平太郎沢層中上部はイノセラムスが消滅し, アンモナイト数種とTenuipteria awajiensisで特徴づけられ, マストリヒシアン上部に達している.マストリヒシアン最上部は奥宇津内層基底のシーケンス境界によって侵食され確認できない.堆積相変化と宇津内川層からの暁新世微化石記録から, 両層間にマストリヒシアン最上部~ダニアンが欠如しており, K/T境界は存在しない可能性が高い.
  • 澤口 隆, 後藤 健太郎, 高木 秀雄
    2001 年 107 巻 2 号 p. 165-178
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    変形したカンラン岩中の伸長した斜方輝石ポーフィロクラストに発達した(100)離溶ラメラの内部非対称性は, 独立した剪断センスの指標となる可能性がある.統計学的にこの有用性を検証するために, 北海道・幌満カンラン岩体の異なる構造ユニットにおいて, XZ平面上での3つの幾何学的パラメータ(R : 伸長比, θ : 伸長方向, φ : (100)離溶ラメラ方向)を測定した.R-φおよび伸長比で階級分けしたθ-φダイアグラムに認められる非対称性は, 斜方輝石ポーフィロクラストの初期方位の違いによる(100)面上の転位すべりと剛体粒子回転の違いによって形成されたと考えられる.さらに, 信頼できる別の剪断センス指標であるカンラン石格子定向配列と比較することによって, 斜方輝石の剪断センス指標としての有用性が示され, より複雑な運動学的な履歴を読みとることが可能となる.
  • 七山 太, 土井 康裕, 北田 奈緒子, 竹村 恵二
    2001 年 107 巻 2 号 p. 179-197
    発行日: 2001/02/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    大阪平野西部で採取された住之江コア(A~F孔)を用いて, 大阪湾東部沿岸地域の過去13万年間の層序, 堆積シークエンスおよび堆積環境の検討を行った.その結果, 以下の3項目が明確となった.(1)住之江コアは7つの堆積ユニット(Sm-1~Sm-7)に区分される.このうちSm-7~Sm-5は上町累層(中位段丘堆積層), Sm-4~Sm-2は難波累層(沖積層)に区分される.(2)住之江コアには2つの礫質網状河川システム(Sm-5およびSm-4)ならびに2つの内湾~デルタシステム(Sm-7~Sm-6およびSm-3~Sm-2)が認定される.(3)住之江コアをシークエンス層序学的に解釈するならば, 過去13万年間に3つの第5から第6オーダーの堆積シークエンス(DS1~DS3)の認定が可能である.
  • 高木 秀雄, 島田 耕史, 坂 幸恭, 荒井 誠一, 小針 雄一郎, 岡本 孝之
    2001 年 107 巻 2 号 p. III-IV
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    領家花崗岩類に見いだされたシュードタキライトの2つの例を紹介する. 領家帯では, このほか淡路島野島断層沿いで融解を伴ったシュードタキライトが報告されている(大槻, 1998).
    1ページ目に紹介するシュードタキライトは, 三重県多気町のマイロナイト化した畑井トーナル岩由来のカタクレーサイト帯に存在しており, 中央構造線の露頭から初めて見つかったものである(本誌論文参照). 2ページ目のシュードタキライトは愛知県足助町周辺の伊奈川花崗岩に存在する足助剪断帯沿いで高木(1997)が報告したものである. 足助剪断帯は北東-南西方向に少なくとも10km延び, 中央構造線より30km北西に位置する幅数10mの左ずれ剪断帯である. いずれの剪断帯も, ウルトラマイロナイト, カタクレーサイトが共存するが, シュードタキライトはカタクレーサイトと密接に伴っている. 鏡下ではマイクロライト, 杏仁状組織などの融解-急冷組織が認められる.
    シュードタキライトは通常黒色~暗褐色を示すことが多いが, 特に多気の場合は, 周辺のカタクレーサイトとほとんど同じ青緑灰色を示すことから, 露頭でシュードタキライトを識別することが難しい. このようなカタクレーサイト帯を伴う断層においてよく注意して観察すると, シュードタキライトが今後さらに各地で見つかる可能性がある.
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