領家花崗岩類に見いだされたシュードタキライトの2つの例を紹介する. 領家帯では, このほか淡路島野島断層沿いで融解を伴ったシュードタキライトが報告されている(大槻, 1998).
1ページ目に紹介するシュードタキライトは, 三重県多気町のマイロナイト化した畑井トーナル岩由来のカタクレーサイト帯に存在しており, 中央構造線の露頭から初めて見つかったものである(本誌論文参照). 2ページ目のシュードタキライトは愛知県足助町周辺の伊奈川花崗岩に存在する足助剪断帯沿いで高木(1997)が報告したものである. 足助剪断帯は北東-南西方向に少なくとも10km延び, 中央構造線より30km北西に位置する幅数10mの左ずれ剪断帯である. いずれの剪断帯も, ウルトラマイロナイト, カタクレーサイトが共存するが, シュードタキライトはカタクレーサイトと密接に伴っている. 鏡下ではマイクロライト, 杏仁状組織などの融解-急冷組織が認められる.
シュードタキライトは通常黒色~暗褐色を示すことが多いが, 特に多気の場合は, 周辺のカタクレーサイトとほとんど同じ青緑灰色を示すことから, 露頭でシュードタキライトを識別することが難しい. このようなカタクレーサイト帯を伴う断層においてよく注意して観察すると, シュードタキライトが今後さらに各地で見つかる可能性がある.
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