地質学雑誌
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112 巻, 12 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
論説
  • 久保 雄介, James P. M. Syvitski, 田辺 晋
    2006 年 112 巻 12 号 p. 719-729
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    水文学的モデルHYDROTRENDを過去13,000年間の古利根川に適用した.HYDROTRENDは流域内の気候と地形的条件から河川流量と砕屑物供給量を計算する.HYDROTRENDによる計算には年平均気温の変動,年間降水量の変動,海水準変動による流域面積の増減といった要素がパラメータとして含まれる.数値実験の結果,古利根川の河川流量と砕屑物供給量の時代的変遷を推定できた.それらは現利根川から推定される河川流量,関東平野の地下構造から推定される土砂供給量とそれぞれよく一致する.古利根川における年間砕屑物供給量の長期的変動パターンは日常的な河川流量を反映せず,むしろ年間当たり数日程度しか発生しない増水イベントに強く支配されていた.高海水準期にあたる過去7,000年間では,古利根川は河口から数百年に一回程度の頻度でハイパーピクナルフローが発生したと想像される.本研究を通じてHYDROTRENDの有用性が裏付けられる.
  • 清川 昌一
    2006 年 112 巻 12 号 p. 730-748
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    ベリース国北部からメキシコ国境付近に分布するアルビオン層は,チチュルブクレータから330~470kmの距離にあり,クレータから最も近い陸上に露出するイジェクタ層である.地層は下位のスフェロイド単層と上位のダイアミクタイト単層からなり,全層厚は7~30mで側方に薄くなる.スフェロイド単層は直径0.5~3cmの変質粘土のスフェロイドと変質したガラス質粘土岩片で構成される.古流向はチチュルブクレータ方向を示し,高速の流れを示すシュート・プール流の特徴を持つ.ダイアミクタイト単層は最大直径10mの巨大ブロック・衝撃変成石英を含む淘汰の悪い炭酸塩礫岩層である.ブロックは厚い炭酸塩付加物で覆われる付加岩塊を形成し,その粒径頻度分布と岩石類似性からすべて同一起源の岩塊と判断される.アルビオン層の特徴は,隕石衝突で形成したイジェクタ堆積物が2段階の異なる様式で堆積することを示しており,イジェクタ形成モデルに大きな制約を与える.
  • 荒井 晃作, 岡村 行信, 池原 研, 芦 寿一郎, 徐 垣, 木下 正高
    2006 年 112 巻 12 号 p. 749-759
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    フィリピン海プレートの沈み込み境界である南海トラフ東部の前弧斜面上部の音波探査を実施した結果,大陸棚および陸棚斜面に正断層帯が存在していることが明らかになった.これらの断層は,すべて北落ちで最大変位量は0.2秒(往復走時)に達する.音波探査断面の解釈から,これらの断層は中期更新世以降に活動的で,最終氷期以降も活動していると考えられる.断層の活動履歴を検討するために,断層の上盤および下盤側のピストンコア試料を採取した.調査を行った断層群は特に下盤側の堆積速度が小さいために,活動履歴は明らかにならなかったが,一連の研究でその平均変位量は数10 cm/千年であることが分かった.断層の形成は前弧斜面上部の傾動隆起と同じ時期に活動を開始していること,傾動隆起量の大きい海域で断層変位量が大きいことから,断層群の形成は前弧斜面上部の傾動隆起を伴うテクトニクスと密接に関連していると考えられる.
  • 吉川 敏之
    2006 年 112 巻 12 号 p. 760-769
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/05/29
    ジャーナル フリー
    栃木県北部のうち,日光市今市(旧今市市)周辺地域には珪長質火山岩類が広く分布する.このうち,飯山層および大滝凝灰角礫岩の火砕岩のフィッション・トラック(FT)年代を測定した.飯山層の火砕流堆積物中に含まれるジルコンのFT年代は14.8±0.7 Maで,ほぼ火砕流の噴出年代を表していると判断できる.大滝凝灰角礫岩の岩屑なだれ堆積物の基質部分に含まれるジルコンのFT年代は13.4±0.6 Maであるが,χ2検定に失格し,ポアソン変動以外の年代値を乱す要因を受けている可能性があり,大滝凝灰角礫岩の年代は依然として明確でない.飯山層の年代は栃木県内の海成中新世火山岩類では最も古く,放射年代に基づくと,各地域の珪長質火山岩は時間間隙を伴いながら場所を変えて噴出したものと見なせる.ただし,宇都宮地域の年代に関しては,年代値と層序の矛盾,年代決定手法間の不一致があり,この問題が解決されないと火山岩類の対比も確立できない.
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