愛知県段戸山地域の領家変成帯の泥質片岩から十字石を発見した.これらの泥質片岩には白雲母,黒雲母,石英,珪線石等の基質鉱物,紅柱石斑状変晶,および基質より粗粒な白雲母,黒雲母,石英から構成される扁平な形状の集合体(雲母-石英集合体)が含まれている.十字石は,紅柱石斑状変晶に包有されるものと,雲母-石英集合体内の石英や白雲母に包有されるものがある.偏光顕微鏡による詳細な観察から,紅柱石は十字石斑状変晶を消費しながら成長し,その過程で紅柱石から離れた十字石斑状変晶は,雲母-石英集合に置換され,紅柱石に接した十字石斑状変晶は紅柱石に置換されたと解釈した.段戸山地域や幡豆-本宮山地域の泥質岩に十字石が出現するのに対して,他地域の領家変成帯の同程度の変成度の泥質岩に十字石が見つからないのは,プログレード期のP-T経路がより低圧であったため,十字石が安定なP-T領域を通らなかったせいである可能性が高い.
旭岳(標高2291m)は御鉢平カルデラの南西に位置する成層火山で,現在でも活発な噴気活動がおこっている.旭岳山頂部から東には熊ヶ岳(2210m)の火砕丘と後旭岳(2216m)の溶岩円頂丘があり,いずれも旭岳の噴出物に覆われている.旭岳サブグループの活動は,山体の違いによって熊ヶ岳火山体,後旭岳火山体,旭岳火山体の3つに大別される.旭岳火山体については主にマグマ噴火を行った前期と主に水蒸気噴火を行った後期に区分され,さらに前期噴出物は噴出量とマグマタイプの違いを基にE-1サブステージとE-2サブステージに細分される.旭岳サブグループの噴出物は,特に苦鉄質側岩石の組成で山体および活動期間で区別できる.旭岳の活動では,従来の研究で指摘されているようにマグマ混合が支配的プロセスであるが,今回の検討によって山体(火口)および山体での活動期毎に,特に苦鉄質端成分が変化していることが明らかになった.
中国地方の始新世-漸新世火成岩類は山陰地方に多く分布することが知られていたが,本研究により岡山県南部の玉野市番田玄武岩から41.2Ma,倉敷市串の山玄武岩から46.1 Maのいずれも始新世中頃を示す斜長石K-Ar年代が得られた.両玄武岩の鉱物組成と化学的特徴は山陰地方の田万川期(始新世-漸新世)の玄武岩類と共通しており,両玄武岩はその活動期の中では古い方に位置づけられる.従って中国地方の古第三紀火成活動初期には,活動地域が現在の瀬戸内海沿岸域にまで及んでいた可能性がある.
番田玄武岩に覆われる砂礫層(北方層)は始新世中頃以前に堆積した地層ということになり,瀬戸内海沿岸の古第三紀層としては古い層準である.
Three Cyrtospirifer species (Cyrtospirifer choanjiensis sp. nov., Cyrtospirifer sp. 1 and Cyrtospirifer sp. 2) are described for the first time from Choanji, eastern part of the South Kitakami Belt, northeastern Japan. The occurrence of the Late Devonian brachiopod Cyrtospirifer from Choanji indicates the presence of Upper Devonian rocks in the Choanji area.