高知県福良地域にみられる四万十帯層状チャートのノルマルパラフィン組成, 主要元素組成, 希土類元素組成を分析し, その堆積環境の推定を試みた.この層状チャートは, 放散虫化石から, 上位層準から下位層準を通じてBarremianに堆積したことが推定される.その挟みの頁岩のノルマルパラフィン組成から, この層状チャートは全層準を通じて, 陸源有機物がほとんど供給されない海域で堆積したことが推定される.一方, tot.Fe
2O
3/TiO
2比や希土類元素組成から, 下位層準の試料には, 熱水に由来すると思われるFeの沈殿物の寄与が大きく, 上位層準の試料ほど, これらの寄与が減少していったことが推定される.このことから, この層状チャートは, 従来海嶺付近で堆積したと報告されている層状チャートに比べて, より短期間(5m.y.程度)のうちに熱水活動の影響が減少したと考えられる.
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