地質学雑誌
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106 巻, 12 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 近重 史朗
    2000 年 106 巻 12 号 p. 825-835
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    関東山地北東縁部の三波川帯に分布する白亜紀末~暁新世に堆積した寄居層は, 岩相, 放射年代から西南日本内帯起源のナップであることが推定されている.古地磁気の観点から検証するため, 6サイトの寄居層細粒砂岩から採取した57試料について段階熱消磁を行い, 褶曲前に逆磁極方向をもつ残留磁化として, 6サイトの全平均磁化方位偏角200.8°, 伏角-46.0°(α95=5.6°, κ=143.4)が得られた.正磁極に換算した偏角は20.8°の時計回りの回転を示し, 関東山地の15~16Ma以降94°時計回り回転に対して73°の差があることから, 寄居層は三波川帯上に堆積したのではなく, ナップとして三波川帯に移動しその移動過程で反時計回りに73°回転した異地性の地質体であることを示唆している.
  • 高橋 修
    2000 年 106 巻 12 号 p. 836-852
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    関東山地秩父帯南帯および四万十帯北帯に分布する中生代付加コンプレックスを, 前期ジュラ紀から後期白亜紀にかけて形成された15のユニットに区分した.それらの復元された海洋プレート層序から, 関東山地では, ジュラ紀全般(第I期)および後期白亜紀(第III期)の付加体が連続的に形成された時期と, 最後期ジュラ紀~前期白亜紀の, 付加体形成の減衰の時期(第II期)が認められた.後者(第II期)は, 秩父帯付加コンプレックスと四万十帯付加コンプレックスの境界に一致している.また, 復元された海洋プレート層序は, 秩父帯および四万十帯付加体を形成した二つの異なったプレート(イザナギプレートおよびクラプレート)の沈み込みを示唆する.上述した付加の減衰は両プレートの沈み込みの変換期に起こった可能性がある.このように, 付加体の研究は, 中生代のアジア東縁のプレート運動史を考える上で, 重要な示唆を与えてくれる.
  • 太田 彩乃, 勘米良 亀齢, 磯崎 行雄
    2000 年 106 巻 12 号 p. 853-864
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    宮崎県北部, 高千穂町上村のペルム系石灰岩, 岩戸層と三田井層の新露頭において, 岩相層序および生層序を検討した.その結果, 整合に累重する4つの化石帯, すなわち下位よりLepidolina帯および無化石帯(岩戸層), Codonofusiella-Reichelina帯およびPalaeofusulina帯(三田井層)が識別された.前二者は南中国の茅口階に, 後二者はそれぞれ呉家坪階および長興階に対比される.本石灰岩は, 西南日本外帯, 秩父累帯のジュラ紀付加体中に巨大な異地性岩体として産するが, 初生的には海洋中央部に位置していた古海山頂部に形成された浅海成石灰岩体に起源をもつ.このような遠洋浅海成石灰岩中に茅口階から長興階に至る連続セクションが確認されたのは世界で初めてであり, ペルム紀末の大量絶滅事件直前の超海洋パンサラサでの環境変化を解明する上で重要な記録が得られた.
  • 山元 孝広, 阪口 圭一
    2000 年 106 巻 12 号 p. 865-882
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    東北本州弧南部の活火山である安達太良火山のテフラは, 約25-20万年前の安達太良-水原テフラ群と, 約12万年前から始まった安達太良-最新期テフラ群からなる.このうち水原テフラ群は, 本火山の主要山体をなす大規模な安山岩溶岩の流出期に噴出したものである.最新期テフラ群の最初の噴出物は総噴出量が岩石換算体積で約2km3の安達太良-岳テフラで, 初期のデイサイトプリニー式降下火砕堆積物, 後期の安山岩火砕流堆積物で構成されている.岳噴火以降は1-2万年に1回程度の頻度で, 総噴出量が岩石換算体積で10-2~10-1 km3程度の安山岩のサブプリニー式噴火やブルカノ式噴火が繰り返されてきた.特に最近1万年間では, 沼ノ平火口において総噴出量が岩石換算体積で10-3~10-2 km3程度のブルカノ式噴火が0.5-2千年間隔で繰り返され, 最後のマグマ噴火は2.4千年前に起きている.
  • 天野 和孝, 佐藤 時幸, 小池 高司
    2000 年 106 巻 12 号 p. 883-894_2
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    鮮新世における日本海中部沿岸域の古海況を明らかにすべく, 新潟県新発田市周辺の鍬江層産軟体動物群を検討した.鍬江層は岩相的に下部, 中部, 上部に細分される.軟体動物化石を多産する本層中部の上部~本層上部の年代は抽出された石灰質ナンノ化石より鮮新世中期のNN16帯下部から中部と判断される.鍬江層から産出した軟体動物群中には鮮新世~更新世前期に日本海側で生息した大桑・万願寺動物群の特徴種が含まれる.また, 多くの寒流系種に加え, 本層中部の上部~本層上部から35種もの暖流系種が認められた.特に, 本層上部から, ほぼ同時期に堆積した秋田県の天徳寺層よりも多くの暖流系種が認められ, 当時日本海に流入した暖流の温度勾配を反映していると考えられる.また, 暖流系種中には西南日本太平洋側の掛川動物群との共通種や現在日本海に生息しない暖流系種が認められ, 現在より高温で薄い暖流が, 冷水塊上を流れていたと思われる.
  • 片岡 香子, 中条 武司
    2000 年 106 巻 12 号 p. 897-900
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Hyperconcentrated flow deposit, in the Ebisutoge-Fukuda tephra from Mie Prefecture, is thought to be deposited from dilution of the debris flow. Debris-flow deposit (facies A) is overlain by hyperconcentrated flow deposit (facies B). Typical hyperconcentrated flow deposit (facies B1 ; horizontal bedding part) changes upward into diluted hyperconcentrated flow deposit (facies B2 ; scour and fill structure part). These facies characteristics indicate that the debris flow changed through hyperconcentrated flow into normal streamflow by dilution during flow traveling.
  • Yoichi Ezaki, Natsuko Adachi
    2000 年 106 巻 12 号 p. 901-904
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Well preserved calcimicrobes and microbialites are found from the Lower Devonian Fukuji Formation in the Hida "Gaien" Terrane. Calcimicrobes occur with skeletal metazoans and intergrow to form unique microfacies together with varied microbialite fabrics. Microbialites were ubiquitous and largely contributed to limestone formation. Research into calcimicrobial compositions and microbialites is indispensable to elucidate the biotic diversity and palaeoecological conditions at that time.
  • 石原 敬久, 大平 寛人, 立石 雅昭
    2000 年 106 巻 12 号 p. 905-908
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Fission-track age determination on the Cenozoic marine sedimentary sequences distributed in the Shinjo Basin, Yamagata Prefecture was carried out. Though the upper Sakekawa and Oriwatari Formations have been considered to be late Pliocene-Pleistocene in previous researches, the present result of FT dating on the volcanic tuffs intercalated in the basal part of the Oriwatari Formation showed 4.3-4.6 Ma the early Pliocene age.
  • 廣野 哲朗, 塩野 正道, 小川 勇二郎, 坂本 竜彦, 中嶋 悟, 小泉 格
    2000 年 106 巻 12 号 p. 909-912
    発行日: 2000/12/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
  • Simon Wallis, 青矢 睦月, 河上 哲生, 辻森 樹
    2000 年 106 巻 12 号 p. XXV-XXVI
    発行日: 2000年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    平均標高5,000m,「世界の屋根」チベット(Fig.1)はインドーアジア両大陸の衝突現場である(Fig.2). そして, その南縁のヒマラヤ山脈までを合わせた地域は面積・標高ともに地球上で比類のない規模を持つ. この異常にぶ厚い地殻は造山運動における重力の役割を際立たせる. 造山運動に対して重力がいかなる影響を与えるかを知るのに, チベットーヒマラヤは最適の地域なのである. この重要性にも関わらず, チベット高原とヒマラヤ山脈という2地域の関連性や相違点については未だ不明な点が多い. 特にチベットとヒマラヤの境界である南チベットは両者の成因上の関係を知る鍵となる地域の1つであるが, その地質はほとんどわかっていない. この夏, 私達はこの関係を知るべく, 南チベットのTethyan Himalayan Sequenceを3週間に渡って調査した(Figs. 2and 3). この調査でわれわれはチベット調査の難しさを実感した. 一つの問題は高山病, もうひとつは道路の悪さである(Fig.4). とはいえ, 大陸衝突を研究する上で, チベット高原は世界でも最高級にやりがいがあり, かつ潜在的に成果を期待できる地域である. さまざまな困難を押してでも挑戦する価値がある.
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