地質学雑誌
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115 巻, 12 号
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特集 陥没カルデラ(I):構造とマグマ
論説
  • 楠本 成寿, Agust Gudmundsson, 竹村 恵二
    2009 年 115 巻 12 号 p. 625-634
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/29
    ジャーナル フリー
    弾性理論に基づき,初期カルデラ(環状断層)の半径からマグマ溜りの深さを与える解と,環状断層形成に必要とされるマグマ溜りの体積変化量を与える解を解析的に導いた.環状断層の半径とマグマ溜りの深さの関係は,基本的に,弾性定数によって構成される比例係数を持つ線形関数で表現されることが,点力源モデルにより示された.有限球モデルでは,この比例係数に,マグマ溜りの半径と深さの比が含まれることが示された.環状断層形成に必要とされる体積変化量は,点力源モデルではマグマ溜りの深さの3乗に比例すること,有限球モデルではマグマ溜りの深さの3乗に比例する第1項と,マグマ溜りの半径の3乗の比例する第2項からなることが示された.本論で示した解は,マグマ溜りの深さとカルデラ形成に必要な体積変化量についての有用な一次近似情報を与えると思われる.
  • 岡本 泰子, 小室 裕明
    2009 年 115 巻 12 号 p. 635-642
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/29
    ジャーナル フリー
    縦長型マグマだまりの膨張ないし収縮によって形成されるカルデラを,アナログ実験で再現した.アナログ地殻は上新粉(米の粉末),アナログマグマだまりはゴム風船を使用した.実験結果は以下の通り.
    1.マグマだまりの膨張によってドーム隆起が生じ,ドーム頂部にグラーベン状に小さな漏斗型陥没が形成される.陥没の直径は,実際のスケールでは0.8~1.6 kmなので,カルデラというにはやや小さい.
    2.マグマだまりの収縮によって,平坦な底を持つ浅いカルデラと,その中心部の小径陥没が形成される.実際のスケールでは,カルデラの大きさは0.9~4.4 km,深さ200~400 mとなる.このモデルは,キラウエアカルデラと相似である.
    3.膨張後に収縮するマグマだまりによって形成されるカルデラは,先行するドーム隆起による地殻ダイラタンシーのため,マグマだまりが収縮するだけのモデルに比べて陥没量が小さくなる.
  • 吉田 健司, 高橋 厳己, 今岡 照喜
    2009 年 115 巻 12 号 p. 643-657
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/29
    ジャーナル フリー
    山口県北西部に分布する後期白亜紀阿武層群白滝山層の層序・構造および貫入岩類の活動史について検討した.白滝山層は下位の蓋の井川流紋岩部層と上位の天井ヶ岳安山岩部層に2分され,これらは各種岩脈とともに流紋岩と安山岩のバイモーダルなマグマからなる火山-深成複合岩体をなす.
    白滝山層は盆状構造を示し,北半分は盆地の中央へ向かい約45-70°と高角傾斜を示すが,南半分は中央へ向かい20°以下の低角傾斜を示す.このように白滝山層は南北で非対称な盆状構造をなし,周辺に分布する基盤岩類の地質構造と斜交し,それらと高角の正断層あるいは岩脈などによって囲まれた6×4 kmの小規模なコールドロンを形成していることが明らかになったので,白滝山コールドロンを提唱する. これは陥没深度が北側で深く南側で浅い非対称な陥没形態を有しており,多角形の陥没縁の形成と同時にカルデラ底の破断を伴ったピースミール型コールドロンの可能性が高い.
  • 古川 邦之, 三好 雅也, 新村 太郎, 柴田 知之, 荒川 洋二
    2009 年 115 巻 12 号 p. 658-671
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/29
    ジャーナル フリー
    先カルデラ火山活動期の噴火活動およびマグマ供給系を明らかにするため,カルデラ北西壁に分布する先阿蘇火山岩類の地質調査,全岩化学分析およびSr, Nd同位体比分析を行った.カルデラ北西壁は,主に安山岩溶岩から構成され,一部にデイサイト溶岩が分布する.これらの比較的穏やかな噴火様式からカルデラ噴火への噴火様式の変遷は,豊肥火山地域における地殻歪速度の減少に起因している可能性がある.また先阿蘇火山岩類の全岩化学組成は,カルデラ形成期以降の噴出物と大局的には類似している.このことは,先カルデラ火山活動期のマグマがカルデラ形成期と同じく,地殻物質の溶融により生成されたことを示唆する.一方で,Sr同位体比は先阿蘇火山岩類とカルデラ形成期の噴出物で異なる.つまり先カルデラ火山活動期とカルデラ形成期のマグマは,全岩化学組成は類似するが,同位体組成が異なる地殻を溶融することにより生成されたのかもしれない.
  • 三好 雅也, 古川 邦之, 新村 太郎, 下野 まどか, 長谷中 利昭
    2009 年 115 巻 12 号 p. 672-687
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/05/29
    ジャーナル フリー
    阿蘇火山直下のマグマ溜りの化学的進化を明らかにするため,先阿蘇火山岩類の岩石記載と全岩化学組成分析を行った.それら溶岩は,斑晶鉱物組合せと全岩化学組成の異なる8タイプに区分できる.液相濃集元素のモデル計算結果は,先阿蘇火山岩類が示す組成多様性が単純な分別結晶作用では導かれないことを示した.さらに,先阿蘇火山岩類とカルデラ形成期以降噴出物を比較した結果,特に安山岩~流紋岩の斑晶鉱物組合せ,量比に顕著な違いがみられること,前者が後者に比べてSiO2含有量に対する液相濃集元素含有量が乏しい特徴があることが明らかになった.これらの結果は,先カルデラ火山活動期からカルデラ形成期の間に,安山岩~流紋岩マグマの起源物質化学組成や生成時の物理条件などに変化が生じたということを示唆している.
口絵
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