地質学雑誌
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116 巻, 11 号
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総説
  • 岡村 行信
    2010 年 116 巻 11 号 p. 582-591
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    日本海東縁で発生した大地震の震源域と地質構造とを比較すると,大部分の震源域は幅15~20 kmの非対称な背斜構造に重なる.傾斜30~45°前後の逆断層が厚さ10~15 kmの上部地殻を切ると,その幅が10~20 kmになることから,日本海東縁に広く分布する同じような幅を持った背斜構造は震源断層を含む逆断層全体の上盤の変形によって形成された可能性が高い.2004年中越地震の震源域では褶曲構造を断層関連褶曲であると仮定して推定した断層形状が,震源断層とよく一致することが示されたが,同じような関係が日本海東縁の他の背斜構造にも適用できるかどうか検討する必要がある.地質構造から震源断層の位置を推定することができれば,将来発生する地震による地震動の推定精度を向上させることができ,地震災害の軽減に貢献できる.
  • 佐藤 比呂志, 加藤 直子
    2010 年 116 巻 11 号 p. 592-601
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    北部本州の背弧域は島弧方向に平行な褶曲-衝上断層帯によって特徴づけられ,しばしば浅い地殻内被害地震が発生してきた.厚い新第三系堆積層の下の震源断層の存在を明らかにすることは,強震動予測や被害地震のリスクを評価する上で重要である.深部反射法地震探査や余震観測データをもとに,東北地方中部で震源断層と地殻構造の関係について検討を加えた.前弧域では中新世の正断層が,現在の応力場に対応して逆断層として反転活動をしている.これらの震源断層は,断層の起源を反映し地震発生層の中で高角度の形状を示す場合が多い.背弧域の堆積層が厚い地域では,中新統の泥岩層中にデタッチメントが発達し,thin-skinnedテクトニクスの変形様式を示す.新潟堆積盆地では厚さ6 km以上の堆積層に隔てられ,基盤岩中の震源断層と活断層・活褶曲との関連については不明な点が多い.今後,深部地震探査による解明が必要である.
論説
  • 小荒井 衛, 宇根 寛, 西村 卓也, 矢来 博司, 飛田 幹男, 佐藤 浩
    2010 年 116 巻 11 号 p. 602-614
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    2007年7月16日に発生した「平成19年(2007年)新潟県中越沖地震(マグニチュード6.8)」について,陸域観測衛星「だいち(ALOS)」に搭載されている合成開口レーダ(PALSAR)による干渉SAR解析を行った.SAR干渉画像は,震源域近くの断層運動による地殻変動のみならず,震源から15 km東に離れた西山丘陵において,活褶曲の向斜軸に沿って幅1.5 km長さ15 kmの帯状隆起域が検出された.筆者らは,これは地震に伴って発生した間欠的な活褶曲の成長を示す直接的な証拠であると考えた.加えてSAR干渉画像は,柏崎市の中心街において,砂丘地盤の液状化や側方流動などの非地震性の地表変動についても検出することが出来た.
  • 大坪 誠, 山路 敦
    2010 年 116 巻 11 号 p. 615-623
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    2007年新潟県中越沖地震に関する被害調査を実施した.SAR干渉結果で隆起が明らかになった小木ノ城背斜において地表変形の有無および道路の亀裂に注目し,亀裂調査結果,地震時の地殻変動,地質構造の比較を行った.本背斜では道路の舗装を明瞭に破る地表面の断層変位にともなう変形が認められない.本背斜翼部で認められる層面すべり断層はflexural-slipに調和的な活動を示すが,中越沖地震による本背斜の成長に伴う層面すべり断層の活動は認められない.道路亀裂被害は,8 cm以上の隆起域では地盤の流動や変形を伴わない地点で開口亀裂が卓越し,背斜軸部および東翼部などの地域では,盛土の側方流動,人工埋設部での陥没,道路法面の崩落および斜面滑動が発生している地点で開口亀裂が認められる.8 cm以上の隆起域で認められる開口亀裂は地盤の隆起によるのに対して,それ以外のものは地震動の揺れによると考えられる.
  • 竹内 章
    2010 年 116 巻 11 号 p. 624-635
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    東北日本弧と西南日本弧にまたがる北陸および信越地域は,新生代末の衝上断層褶曲帯であり,中規模の地殻内地震が頻発することで特徴づけられる.最近刷新されたテフラ年代学にもとづいて,この地域の地形地質発達史を総括した.
    この地域の海岸平野は前期中新世から存続してきた堆積盆地であり,南北,東西,北東-南西の3構造方向からなる交差構造が発達した.第四紀には海岸平野に接する山地・丘陵の麓にある北東-南西走向の逆断層運動が活発で,強い地殻内地震が発生する.しかし,同じ逆断層区でありながら,北部フォッサマグナ地区では典型的な反転構造が発達し,北陸の堆積盆地では,境界断層による「盆地反転」は見られないという相違がある.
    このような構造発達史の比較から,地殻内地震の発生原因,ならびに中部地方の北部を縦断する歪集中帯の成因を理解する上で,100万年スケールでの応力場の逆転や移動現象が重要であることを指摘した.
口絵
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