地質学雑誌
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110 巻, 1 号
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論説
  • 納谷 友規, 天野 一男, 岡田 誠, 中里 亮治, 公文 富士夫, 楡井 久
    2004 年 110 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    浅い湖沼における表層堆積物堆積過程を明らかにすることを目的として, 浅い海跡湖である北浦の118地点で, 粒度, 全有機炭素量 (TOC) そして全窒素量 (TN) の分析を行った. それに基づいて風による波浪の影響の強い浅い湖沼における堆積モデルを提唱した. 北浦湖底堆積物は, 湖底平原の大部分を粘土質堆積物が占めることと, 沿岸域の2.5 m以浅に砂質堆積物が狭く分布することにより特徴づけられる. この特徴は, 本モデルによれば, 以下のように説明できる. 粘土質堆積物は波浪によって浅部または沿岸部から懸濁物として運ばれたものであり, 砂質堆積物は卓越風によって生じた吹送流に淘汰された残留堆積物となる. 北浦周辺地域の地形は低く流入河川の流域面積も小さい. このため, 湾入部の河口における粗粒堆積物の分布が狭く限定されている. なお, 南端部に分布する砂質堆積物は, 高海水準期における潮汐の影響により堆積したものであると解釈される.
  • 村上 晶子, 井上 淳, 吉川 周作, 山崎 秀夫
    2004 年 110 巻 1 号 p. 11-18
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    大阪城外堀堆積物に含まれる微粒炭・球状炭化粒子 (SCPs) の分析と球状炭化粒子の表面構造の観察を行った. 微粒炭分析からは, 粗粒の微粒炭濃集層準を見出し, この層準が1945年大阪大空襲の火災であることを指摘した. 球状炭化粒子分析では, 球状炭化粒子の時系列変化の解読から, 化石燃料 (石炭・石油) 使用量の歴史的変化が解明できることを示した. 球状炭化粒子は堆積物中に極めて良好に保存され, 短時間・簡単に分析できる利点を持っていた. この球状炭化粒子は過去の化石燃料の燃焼を解読する上で重要な役割を果たすと考えられる. 今後, 球状炭化粒子に関する研究は, 産業革命以降を示す「Anthropocene (Crutzen, 2002)」の時代の地質学的研究を行う上で重要な指標となることを指摘した.
  • 古澤 明
    2004 年 110 巻 1 号 p. 19-37
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    由布岳火山周辺のテフリックレスからRIPL法を用いて周辺火山の活動履歴の識別を試みた. RIPL法とは, 地層中に含まれるテフラ起源とおぼしき火山ガラス, 斜方輝石および角閃石などの屈折率を数cm間隔で連続的に採取した試料全てにおいて測定する手法である. その結果, テフリックレスは野外で識別できなかった12層準のEvent horizonに区分され, それらをテフラとして新たに識別できた. Event horizon4はガラス質テフラでこれまでに知られていない九重火山起源のテフラである可能性がある. Event horizon9は, 火山ガラスの屈折率, 形態および斜方輝石, 角閃石の屈折率などの一致から九重火山の白丹火砕流堆積物と阿蘇火山起源のACP4との混交層準であると考えられる. Event horizon11は鬼箕山火山起源のテフラである可能性が高い. テフラの降灰主軸からはずれた地点においてRIPL法をテフリックレスに適用した場合, 火山活動履歴の把握精度の向上が期待できる.
  • 佐藤 時幸, 中川 洋, 小松原 純子, 松本 良, 井龍 康文, 松田 博貴, 大村 亜希子, 小田原 啓, 武内 里香
    2004 年 110 巻 1 号 p. 38-50
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    沖縄本島南部のうりずん露頭とそれに近接する守礼ゴルフ場露頭における知念層の石灰質ナンノ化石および浮遊性有孔虫化石生層序を検討した. その結果, 知念層基底の地質時代は両露頭とも1.97Maよりやや古い鮮新世末に対比されるが, うりずん露頭における知念層の基底の地質年代は, 守礼ゴルフ場露頭の同基底年代よりやや古い. また, うりずん露頭および守礼ゴルフ場露頭のいずれにも時間間隙が認められたが, うりずん露頭では知念層下部に約30万年の時間間隙が, 守礼ゴルフ場では新里層と知念層の境界に若干の時間間隙が推定され, 両露頭は近接するにもかかわらず, 時間間隙の層準および規模が異なることが明らかとなった.
    本研究の結果は, 琉球列島が現在のようなサンゴ礁の広がる海域へと姿を変えた過程を復元するためには, 知念層およびその上下層の岩相層序と微化石層序との関係を解明することが, 重要であることを示唆している.
  • 卜部 暁子, 保柳 康一
    2004 年 110 巻 1 号 p. 51-64
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/07
    ジャーナル フリー
    北海道東部阿寒地域に分布する新第三系について, 岩相の再検討と珪藻化石生層序に基づいて新しい層序区分を提案する. この区分では, 阿寒地域の新第三系は, 下部中新統のチチャップ川層 (新称), 中部中新統下部の殿来層, 中部中新統中部から上部中新統下部の知茶布層, 上部中新統最上部から鮮新統の阿寒層群古潭層の順に下位から累重することになる. 下部中新統のチチャップ川層は, この研究で新たに定義された地層で, 中部中新統の殿来層とは構造運動をともなった不整合関係にあると考えられる. 北海道東部の下部中新統は, これまで網走構造線の東側の地域に沿って狭く分布するとされていたことから, 当時の堆積盆地は南北方向の伸張を持っていたと考えられてきた. しかし, より東に位置する阿寒地域での下部中新統の発見とその岩相は, 堆積盆地の東方へ広がりを示唆する.
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