地質学雑誌
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111 巻, 12 号
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論説
  • 田村 糸子, 山崎 晴雄, 水野 清秀
    2005 年 111 巻 12 号 p. 727-736
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/05
    ジャーナル フリー
    中央日本において,近畿東海地域から北陸,新潟,房総地域にかけて分布する前期鮮新世の広域テフラ-坂井火山灰層とその相当層の広域性を検討した.
    坂井火山灰層とその相当層は,発泡のよい火山ガラスからなり極少量の黒雲母を含む.火山ガラスの化学組成がK2Oに富みCaOに乏しく,特に微量成分においてBaやSrが著しく乏しいという特徴を示す.堆積年代は,各地域の挟在層準において,Znp-大田火山灰層の下位,浮遊性有孔虫化石N.19帯上部,Gilbert ChronのCochiti Subchronに近接した層位等から,およそ4.1 Maと推定される.坂井火山灰層とその相当層の給源は,粒径や層厚の変化,火山ガラスの化学組成の特徴から,近畿地方より西方と推定され,北九州から山陰にかけての鮮新世アルカリ火山岩の活動と関係する可能性がある.
    坂井火山灰層とその相当層は,極めて特徴的な火山ガラスの化学組成を示すことから,今後,他の地域でも見出される可能性が高く,前期鮮新世の重要な鍵層となると予想される.
  • 相澤 泰隆, 小林 健太, 梅津 健吾, 山本 亮
    2005 年 111 巻 12 号 p. 737-750
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/05
    ジャーナル フリー
    本研究では,2000年鳥取県西部地震の余震域とその周辺地域の地表踏査を行い,地質学的手法を用いて,この地域の断層系の推定を試みた.地表踏査では断層岩類の分布,密度,幅,姿勢,変位量,色相,剪断面密度などの記載を重点的に行った.調査地域に分布する断層面の姿勢は,WNW-ESE走向とNE-SW走向,高角度に卓越している.これは地形から判読されたリニアメントや地震学的に求められた震源断層モデルのNW-SE走向の姿勢とは,若干異なっている.さらに,断層岩類と玄武岩~安山岩質岩脈は,分布・姿勢に相関関係が認められる.これらの岩相境界,特に母岩である花崗岩側に,多くの破砕帯が形成されている.これらの結果より,余震域では今回の地震以前にも断層運動が繰り返し生じ,岩脈によって活動していることが推定できる.また,生成深度の異なるカタクレーサイト,断層ガウジが共に地表に存在していることからも,複数回の断層活動が生じていたことが明らかとなった.
  • 高島 千鶴, 狩野 彰宏
    2005 年 111 巻 12 号 p. 751-764
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/05
    ジャーナル フリー
    奈良県川上村にある入之波温泉山鳩湯の温泉水は,CO2とCaを多量に溶存する.その化学成分と安定同位体比は,天水起源の水が地下深部からの二酸化炭素を含み,岩石と反応したことを示す.温泉水は長さ70 mの谷を流れ,鉄質沈殿物を含む方解石沈殿物(トラバーチン)を堆積する.また,谷沿いでの温泉水中のFeとCaイオン濃度の減少傾向は,鉄質沈殿物とトラバーチンの分布と調和的である.湯元付近に発達する鉄質沈殿物は,フィラメント状の形態を示し,非晶質な鉄水酸化物を主体とする.鉄水酸化物の沈殿には,大気からの酸素吸収に加え,鉄酸化細菌と思われる微生物の代謝活動が重要に働いていたと考えられる.より下流で発達するトラバーチンは,二酸化炭素の脱ガスにより沈殿し,100μm~数mmオーダーの縞状組織を示すものもある.縞状組織は日輪であり,このトラバーチンの堆積速度は20 cm/年に達することが判明した.
  • 守山 武, 山本 啓司
    2005 年 111 巻 12 号 p. 765-778
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/05
    ジャーナル フリー
    天草下島西端に露出する高浜変成岩類は岩体の北部,東部,南部を上部白亜系姫浦層群に覆われている.高浜変成岩類と姫浦層群は低角な正断層によって接している.高浜変成岩類は結晶片岩類からなる下部ユニットと,緑れん石角閃岩,ざくろ石角閃岩およびざくろ石-雲母片麻岩からなる上部ユニットの2つの構造単元に区分できる.両ユニットの境界は,低角のスラストまたは延性剪断帯であると推定される.すなわち上部ユニットは下位を結晶片岩類に,上位を非変成の姫浦層群によって挟まれた低角なシート状構造をなしている.高浜変成岩類の変形過程は6つの時相に区分できる.最も著しい延性剪断変形を被ったと考えられるD2時相の剪断センスの解析から,高浜変成岩類が北ないし北東方向に上昇したことが示唆される.本研究の結果および九州の変成岩類に関する既報を総合すると,高浜変成岩類は三波川変成帯に帰属する説が最も支持される.
  • 藤原 祐希, 入月 俊明, 林 広樹, 田中 裕一郎, 渡辺 真由子, 清水 謙二朗
    2005 年 111 巻 12 号 p. 779-791
    発行日: 2005年
    公開日: 2006/04/05
    ジャーナル フリー
    三重県伊賀市東部に分布する中新統阿波層群の岩相層序の再検討を行い,さらに微化石に基づく年代推定を行った.阿波層群は下位より東谷畑層,平松層および槇野層から構成される.東谷畑層は領家帯の花崗岩・片麻岩類を不整合に覆う基底礫岩からなる.本研究での平松層は従来の子延層と平松層を一括して再定義された地層で,砂質礫岩,砂岩および泥岩からなり,2回の海進-海退サイクルが存在する.槇野層は含礫泥岩からなり,平松層を不整合に覆う可能性が高いことが本研究で明らかになった.東谷畑層と平松層には北東~南西方向に延びる断層や褶曲構造が発達している.一方,槇野層には盆状構造が発達している.浮遊性微化石の生層序学的研究の結果,平松層はBlow(1969)の浮遊性有孔虫化石帯N.6~N.8帯のいずれかの区間に対比される.槇野層はN.8~N.9帯およびOkada and Bukry(1980)の石灰質ナンノ化石帯CN3に対比されることから,16.4~15.6 Maに堆積した地層であることが明らかになった.
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