地質学雑誌
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113 巻, 12 号
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論説
  • 鹿園 直建, 瀧野 昌嗣, 大谷 晴啓
    2007 年 113 巻 12 号 p. 593-610
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2008/11/08
    ジャーナル フリー
    神奈川県秦野市の黒ぼく土の化学風化,元素移動,溶解速度に関する研究を行った.主成分元素のAl規格値は,Na<Ca<K<Mg<P<Si<Ti<=Fe<Al<Mnであった.Na,Ca,Mgの移動は,長石とカンラン石の溶解によると思われる.Si,Fe,Alの移動度がこれらより小さいのは,アロフェン,ハロイサイト,Fe化合物として沈殿するからであろう.
    溶解カイネティックス-流動カップリングモデルをもとに,土壌水中のH4SiO4濃度とNa·Ca-長石の量の深さに対する変化を求めた.その結果,kA/M(k: Na·Ca-長石の溶解速度定数, A: 表面積, M: 流体の質量)が10-10.3±0.5と推定された.粒子サイズから求められたA/Mを30とすると,k=10-12.0±0.5となり,これは実験値(10-10~10-11)とほぼ一致する.
  • 金子 慶之, 有馬 眞, 佐藤 理恵子, 小野 紘斗, 岩垣 拓也, 川崎 昭如
    2007 年 113 巻 12 号 p. 611-627
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2008/11/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,環境評価指標としての基盤データを収集する目的で,直接的人為影響の少ない西丹沢山地中川上流域(約25 km2)における森林土壌の分布と構造および地球化学的特性を明らかにした.トーナル岩質土壌は本調査面積の約95%を占め,ローム土壌は尾根と山頂部に発達する緩斜面および谷にそった緩斜面地にわずかに認められる.トーナル岩質土壌層厚と地形傾斜角度に有意の負の相関が認められた. これは活発な削剥作用と表層土壌流出の程度を反映しているものと考えられる.トーナル岩質土壌の化学風化による母材からのアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の平均溶脱率は,K(44%),Na(38%),Al(31%),Ca(26%),Mg(16%)であった. このような高い溶脱率は,土壌の酸緩衝能が大きく低下している事を示唆している.トーナル岩質土壌表層(A0+A層)の化学組成と地形との関係をGISにより解析した.Si,Al,Ca,Mg,Fe,Naの溶脱率と標高との関係が明らかとなった.これは,トーナル岩質土壌の元素の溶脱過程が気温に強く依存している事を示唆している.
  • 中里 裕臣, 中澤 努
    2007 年 113 巻 12 号 p. 628-635
    発行日: 2007/12/15
    公開日: 2008/11/08
    ジャーナル フリー
    関東平野北西部の荒川中流域に分布する江南台地は,従来最終間氷期以降に形成された扇状地と考えられてきた.本研究では,江南台地の段丘礫層を覆う凝灰質粘土層中に1層のテフラ(江南テフラ)を認定し,記載岩石学的特徴からこのテフラが長野県北部の飯縄火山を給源とする飯縄西山テフラ群(In-Ny)の下部に対比されることを明らかにした.江南テフラは石英とカミングトン閃石に富み,特にカミングトン閃石の屈折率特性および主成分化学組成は給源付近におけるIn-Nyの下部のそれらとよく一致し,対比の根拠となる.In-Nyの噴出年代は,放射年代と上下の既知テフラとの層位関係から約180 kaと推定される.江南テフラが風成堆積物起源と考えられる凝灰質粘土層の基底に挟在することから,江南台地の形成年代はIn-Nyの年代で与えられ,MIS 7-6移行期と従来より古く見積もられる.それにより江南台地を変位させる江南断層の活動度は,0.06 m/kyと従来の4分の3に再評価される.
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