地質学雑誌
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112 巻, 8 号
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論説
  • 堀 真子, 狩野 彰宏
    2006 年112 巻8 号 p. 491-502
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/02
    ジャーナル フリー
    岡山県西部の北部大賀台長屋の沢は,全長約1200 mに及び,大規模にトゥファが発達する.ここでは,石灰岩とその下位の砂岩頁岩相の低角スラスト境界から湧出した水が,長く急傾斜の流路沿いを流れる間にトゥファを堆積させている.湧水の水質の時期的変化は,これまで他地域で記載されてきた変化と類似する.ただし,夏期に溶存Ca2+濃度が低く,水温の季節的変化幅が大きいという特徴があり,これらは長屋の地下水塊が小さいことを示唆する.長屋の沢のトゥファには夏~秋の緻密層と冬~春の孔隙質層による,明瞭かつ規則的な年縞が発達する.孔隙質層中にはシアノバクテリアや珪藻が豊富に認められるが,緻密層には,径の大きな方解石結晶が発達し,微生物の痕跡は少ない.堆積物の組織的変化は,水質から計算された方解石沈殿速度のデータと矛盾し,むしろ降水や農業用水の流入を反映した水量の激変に関係すると考えられる.
  • 寺田 暁彦, 日野 正幸, 竹入 啓司
    2006 年112 巻8 号 p. 503-509
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/02
    ジャーナル フリー
    御蔵島火山ヤスカジヶ森溶岩ドームに分布する「冬に白煙を上げる穴」の成因を明らかにするため,2005年~2006年にかけて温度,湿度計および観測カメラによる連続観測を行った.その結果,冬季には外気より最大で17℃高い温度の空気が穴から噴き出ていること,夏季には逆に外気が穴内部へ吸い込まれていることを確認した.見積もられる放熱量は冬期間で合計約22 GJ程度で,一般的な火山性噴気孔からの年間放熱量に比較して数桁小さい.穴周辺での地中温度計測,周辺河川での水温,電気伝導度およびpH計測からも,火山性の熱水活動の活発化を示唆する値は得られなかった.以上の結果は,穴が火山の熱活動とは無関係な温風穴であることを示唆する.高感度カメラ等の整備が進み,活火山表面の常時監視能力が高まりつつある現在,火山の熱活動とは無関係に白煙を上げる温風穴について,その分布を把握しておくことが重要である.
  • 田沢 純一
    2006 年112 巻8 号 p. 510-518
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/02
    ジャーナル フリー
    舞鶴帯,京都府北西部河東・夜久野地域の舞鶴層群上部(Changhsingian)から産する河東フォーナは典型的なボレアル型-テチス型混合腕足類フォーナである.それは構成要素としてボレアル型(非熱帯型)の Lamnimargus, Megousiaとテチス型のEolyttoniaを含む.河東フォーナなどいくつかの後期ペルム紀(Lopingian)ボレアル型-テチス型混合腕足類フォーナを持つ舞鶴帯は,後期ペルム紀にはおそらく北中国(中朝地塊)東縁における前陸盆地に位置し,古生物地理学的にはボレアル区とテチス区の漸移帯に属していたと考えられる.
  • 酒巻 秀彰, 島田 耕史, 高木 秀雄
    2006 年112 巻8 号 p. 519-530
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/02
    ジャーナル フリー
    中部地方領家帯の伊奈川花崗岩体に北東-南西方向に延びる足助剪断帯には,シュードタキライトを含む延性-脆性断層岩類が分布する.足助剪断帯は全体の延びの方向に対してわずかに低角度に斜交する杉型の雁行配列をなす小規模の剪断帯から構成され,線構造と剪断センスの指標から,左ずれ正断層運動を記録している.このことは,足助剪断帯が全体として横ずれ伸張場でその幅を広げながら成長したことを示唆している.マイロナイト化しているシュードタキライトや破砕したマイロナイトの存在などから,本剪断帯の断層岩類は破砕-塑性遷移領域で形成したと考えられる.また,露頭の詳細なスケッチとマッピングから,シュードタキライトは小剪断帯内部に発達するP剪断面に優先的に形成する傾向が認められた.このことは小剪断帯の横ずれ圧縮部において選択的に摩擦熱発生が促進されたことを物語っている.
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