地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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125 巻, 7 号
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特集 富山トラフと周辺部の堆積作用と後背テクトニクス
論説
  • :後期新生代深海堆積システム・堆積テクトニクスの変遷
    高野 修, 中嶋 健
    2019 年 125 巻 7 号 p. 467-481
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー

    東北日本弧と西南日本弧の境界ゾーンに属する北部フォッサマグナ信越堆積盆と富山トラフとの関連を後期新生代堆積テクトニクス史と砕屑物供給系の観点から検討した.信越堆積盆は東北日本弧型の堆積盆テクトニクス履歴を示すのに対し,頸城沖~富山トラフは西南日本内帯型の履歴を示す.堆積環境・堆積プロセス復元結果プロット,地震探査データ解析,砂岩組成解析の結果は,13~3Ma間には,北東-南西方向のトラフとその間をつなぐ海底扇状地によるステップ状供給パターンにより,信越堆積盆から富山トラフへ多くの砕屑物が供給されたことを示す.これに対し,約3Ma以降には現在と同じ富山湾経由の供給が主体に変化した.

  • 中嶋 健, 岩野 英樹, 檀原 徹, 山下 透, 柳沢 幸夫, 谷村 好洋, 渡辺 真人, 佐脇 貴幸, 中西 敏, 三石 裕之, 山科 起 ...
    2019 年 125 巻 7 号 p. 483-516
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    八尾地域の岩稲層から三田層にわたる地層から採取したジルコンについて,U-Pb法およびフィッション・トラック法による年代測定を行い,凝灰岩の火山灰分析および音川層の珪藻化石分析と合わせて各地層の堆積年代を決定し,新生界年代層序の再検討を行った結果,従来の報告より多くの不整合を挟むことが明らかになった.最下位楡原層の堆積相解析,砕屑性ジルコンの年代測定を行った結果,楡原層は上位岩稲層と不整合の関係にあり,前期リフト堆積盆の可能性があること,海域または湖水域に堆積した臨海/臨湖扇状地の堆積環境の下で多くの堆積サイクルが形成されたこと,砂岩の主要な供給源は南方の濃飛流紋岩と推定されることが判明した.北陸地方の周辺陸域層序および富山トラフの層序と広域対比した結果,リフト期およびポストリフト期のそれぞれについて,従来の推定より多段階のテクトニクスの変遷を経たことが明らかになった.

  • 野 徹雄, 佐藤 壮, 小平 秀一, 高橋 成実, 佐藤 比呂志, 石山 達也, 三浦 誠一, 金田 義行
    2019 年 125 巻 7 号 p. 517-525
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー

    富山トラフ周辺では,1993年能登半島沖地震や2007年新潟県中越沖地震のようなM6クラスの被害地震が発生しており,ひずみ集中帯とよばれる変動帯が横切っている領域に位置する.2007年と2009年に,富山トラフ周辺でマルチチャンネル反射法地震探査や海底地震計を用いた地殻構造探査を実施した.その結果,富山トラフの北部と南部では地殻構造に違いがあることがわかった.地殻の厚さは主に上部地殻において北部の方が南部より薄くなり,北部では地殻内やモホ面が明瞭にイメージングされる.一方,背斜や逆断層の形成はトラフ縁辺部を除くと,南東部に多く発達している.これらの短縮変形構造が発達している近辺では,相対的に地震活動も活発である.

口絵
巡検案内書:第126年学術大会(2019山口大会)
  • 2019 年 125 巻 7 号 p. 527-528
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー
  • :吉部,山口,生雲,佐々並カルデラ
    今岡 照喜, 井川 寿之, 岸 司, 木村 元, 大中 翔平, 西川 裕輔, 小室 裕明
    2019 年 125 巻 7 号 p. 529-553
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー

    西中国地域には,後期白亜紀の大規模な火山岩とそれに随伴する貫入岩類からなるカルデラ群が分布している.このうち主に周南層群の火山活動に関連した吉部カルデラや山口カルデラは形成時期が少し古く,深いレベルの侵食を受けたことによってカルデラの深部構造,例えばカルデラ壁崩壊堆積物やカルデラ床に貫入した深成岩類,カルデラ境界断層(構造境界)に貫入した環状岩脈(火道内部),さらにはカルデラ床の基盤岩が露出している.一方,中国脊梁山地に分布し,阿武層群の火山活動に関連して形成された生雲カルデラや佐々並カルデラでは削剥量も比較的少なく,カルデラの浅部構造,つまりカルデラを埋積する火山岩層やそれを貫く岩脈,中央溶岩ドームやカルデラ湖の堆積物などがよく観察できる.今回の巡検では,山口県中央部に分布する侵食程度の異なるカルデラ群の地質を観察し,大規模カルデラの深部から浅部までの基本的な構造要素を把握する.

  • 相山 光太郎, 金折 裕司
    2019 年 125 巻 7 号 p. 555-570
    発行日: 2019/07/15
    公開日: 2019/09/15
    ジャーナル フリー

    中国地方西部,山口県中央部から島根県中央部にかけて,浅部地震がNE-SW方向に配列することで特徴づけられる山口(やまぐち)-出雲(いずも)地震帯が存在する.地震帯の西部から中央部沿いには,大原湖(おおはらこ)-弥畝山(やうねやま)西(にし)断層系が分布している.断層系を構成する活断層の分布や性状,活動性は,主に約20年前以降の山口大学による精力的な現地調査によって明らかにされてきており,山口県中央部で新たに7条の活断層が認定された.最近,地震帯西端部においても新たに活断層露頭が発見されている.しかし,地震帯東部では未だ活断層が報告されてない区間が存在しており,今後の調査により活断層が新たに認定される可能性もある.露頭で確認された断層破砕帯は,断層ガウジと断層角礫,カタクレーサイトから構成され,P-フォリエーションなど複合面構造を含むこともあり,変位センスを知ることができる.断層破砕帯の外側には,割れ目の発達で特徴づけられる‘プロセスゾーン’が広がっている.本巡検では,断層系西部を構成する活断層の露頭や変位地形を観察するとともに,断層系の特徴や活断層発見の経緯を概観する.さらに,日本人として最初の地域地質図を作成した高島北海の足跡もたどる.

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