地質学雑誌
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118 巻, 6 号
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総説
  • 山路 敦
    2012 年 118 巻 6 号 p. 335-350
    発行日: 2012/06/15
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    岩脈は最小主応力軸と直交する面に形成されるという考えを,初めて論文に記したのはStevens(1911)である.そして,その考えに依拠して,Anderson(1942)以来,特に1970年代以降,岩脈の方向から貫入時の最小主応力軸が推定されてきた.いわゆる岩脈法である.四半世紀前には,岩脈形成と応力との関係について新たな定式化がなされ,以来,それにもとづく新しい岩脈法が構築されつつある.それは,既存断裂あるいは新たな断裂であれ,その面に作用する法線応力よりマグマ圧が高ければ貫入できるという原理に立脚し,3本の主応力軸と応力比を決定する.最近は,複数の応力時階で形成された岩脈群が混じったデータから,複数の応力状態が検出できるようになり,また,個々の岩脈がどの応力状態でできたか分かるようにもなった.新旧の岩脈法の方法論について,発展史を解説する.
論説
  • 鹿野 和彦, 谷 健一郎, 岩野 英樹, 檀原 徹, 石塚 治, 大口 健志, Daniel J. Dunkley
    2012 年 118 巻 6 号 p. 351-364
    発行日: 2012/06/15
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    赤島層デイサイト溶結火山礫凝灰岩についてジルコンのU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代,斜長石のAr-Arプラトー年代を測定し,それぞれ72 Ma,65〜63 Ma,34 Maの値を得た.ジルコンは自形に近い外形とこれに調和的な累帯構造を保持し,かつ溶結した基質や軽石もしくは緻密なレンズの中に散在しており,本質結晶と考えられる.個々のジルコンのU-Pb年代値は集中して標準偏差も1〜2 Maと小さく,マグマの噴出年代を示している可能性が高い.FT年代値は,FTの短縮化が確認できるので,噴出後に熱的影響を受けて若返ったと考えることができる.斜長石のAr-Ar年代値は,段階加熱の広い範囲で安定しているものの,プラトー年代値は上位の門前層火山岩の同位体年代値の範囲内にあり,門前層の火山活動によってアルバイト化して若返った可能性が高い.得られたU-Pb年代は,東北日本においても後期白亜紀の後半に酸性火山活動が活発であったとする見解を支持する.
  • −島根県川本花崗閃緑岩中の均質ジルコンを用いて−
    岩野 英樹, 折橋 裕二, 檀原 徹, 平田 岳史, 小笠原 正継
    2012 年 118 巻 6 号 p. 365-375
    発行日: 2012/06/15
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    同一ジルコン粒子を用いたフィッション・トラック(FT)法とU-Pb法によるダブル年代測定した年代値の信頼性を評価した.試料にはFT年代が33 Ma,自発FT密度が106〜107/cm2の島根県川本花崗閃緑岩三原岩体のジルコン粒子(OD-3)を用いた.U-Pb年代分析は,Nd-YAG(λ=213 nm)レーザーアブレーションシステムを搭載したICP質量分析法を用い,ジルコンを47%HF溶液による洗浄あるいはKOH-NaOH共融液によるFTエッチングを施した後に行った.その結果,33 MaのコンコーディアU-Pb年代が得られた.これは化学処理されたジルコンには顕著なPb損失は生じず,そして同一ジルコン粒子のFTおよびU-Pbダブル年代測定が実行可能であることを示す.今回使用した川本花崗閃緑岩三原岩体のジルコン粒子(OD-3)は若いジルコンU-Pb年代測定の標準試料になりうる試料である.
  • 大場 忠道, 谷村 好洋
    2012 年 118 巻 6 号 p. 376-386
    発行日: 2012/06/15
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    最終氷期最盛期(LGM; 21±3 ka)前後の日本海の表層環境(信頼できる水温と塩分)はまだ明らかになっていない.これまでに行われた4種類の微化石(珪藻・浮遊性有孔虫・放散虫・石化質ナノ化石)群集による解析によって,LGMの表層水温(SST)は現在より低かったと推定され,反対にアルケノンによって2〜3 °C高かったと見積もられている.また,LGMの表層塩分(SSS)は現在の34に対して,16〜30であったと見積もられている.本研究では,日本海南部から採取された4本の海底コアに含まれる浮遊性有功孔虫の1種(Neogloboquardrina pachyderma)の左巻き個体の産出頻度を,日本海北部の表層堆積物中のそれと比較することにより,LGMにおける日本海南部の水温と塩分を見積もった.その結果,日本海南部(36〜37 °N)の表層水塊は,現在の日本海北部(46〜48 °N)のそれに相当し,5月のSSTでみると現在の15〜16 °Cから3〜6 °Cまで低下していたことが明らかになった.また,数本の海底コア中の浮遊性有孔虫殻の酸素同位体比から推測されるLGMのSSSは26〜29の範囲にあったと見積もられた.LGMにおけるこのような低温・低塩分の表層環境は,日本海南部から採られた海底コア中の珪藻群集解析からも支持された.
ノート
  • 地層のはぎ取り標本と簡易水路実験の授業での活用を目指して
    植木 岳雪, 伊藤 孝, 中野 英之, 小尾 靖, 牧野 泰彦
    2012 年 118 巻 6 号 p. 387-392
    発行日: 2012/06/15
    公開日: 2012/11/07
    ジャーナル フリー
    The field excursion entitled “Observing, Peeling, and Making Strata” took place on 10 September 2011, during the period of the annual meeting of the Geological Society of Japan. The excursion, which targeted school teachers, emphasized the field collection of peel specimens of sediments and the application of simplified laboratory flume experiments, as means to enhance earth science teaching materials and methods, and to thereby improve earth science education. During the excursion, all participants were familiarized with the technique of obtaining peel specimens of sediments and for conducting simplified flume experiments; as a consequence, participants showed favorable impressions of the excursion.
口絵
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