地質学雑誌
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109 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 竹村 厚司, 三宅 誠, 松田 高明, 岩野 英樹, 檀原 徹
    2003 年109 巻6 号 p. 305-309
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    広島県三次盆地の中新統備北層群は,下位より塩町,是松,板橋の3累層に区分される.従来,非海成の塩町累層からは年代のデータがなかったため,フィッション・トラック法による年代測定を行った.塩町累層の凝灰岩層の2試料からは信頼できる年代値が得られ,前期中新世初頭の約22~23Maである.是松累層は微化石などのデータより約16Maであり,塩町累層との層序関係は平行不整合であると考えられる.また中国地方中央部には,古第三系以外に中新世前期の陸成層も存在することが明らかになった.
  • 嵯峨山 積
    2003 年109 巻6 号 p. 310-322_1
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道北部の遠別町ルベシュベ川,幌延町上ヌカナン川および天塩町男能富の西方域の遠別層・声問層と勇知層から採取した31試料について珪藻化石分析を行った結果,Thalassiosira oestrupii帯とNeodenticula koizumii-Neodenticula kamtschatica帯の連続する2つの化石帯を認識した.これら化石帯の存在とF・T年代値(3.8±0.4Ma),シルト岩から細粒砂岩へと漸移する層相変化,大きな地質構造の差異は認められないことから,秋葉ほか(2000)が示唆した遠別層・声問層と勇知層間の100万年という大きな時間間隙は本調査域では存在しないという結論に達した.勇知層におけるより上位の地層からの淡水棲種と中新世絶滅種の増加は,堆積盆の浅海化と陸域からの堆積物供給量が増加したことを示唆している.
  • 吉田 和弘, 松岡 篤
    2003 年109 巻6 号 p. 324-335
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    関東山地両神山地域に分布する両神山チャートユニットは,地質図に表現しうる3つのサブユニットに区分される.両神山チャートユニットは全体として,チャート砕屑岩シーケンスが構造的に積み重なったパイルナップ構造を呈している.サブユニット1とサブユニット2のチャートからジュラ紀中世Aalenianを,両サブユニットの珪質泥岩からはジュラ紀中世Bajocian~Bathonian前期を示す放散虫化石がそれぞれ得られた.復元した海洋プレート層序の比較からは,両神山チャートユニットが秩父累帯北帯の柏木層あるいは橋立層群に起源をもつナップであるとするとらえ方は成立しがたい.両神山チャートユニットに比較可能な秩父累帯の地質体としては,南帯の海沢層と北帯の上吉田層がその候補として挙げられる.
  • 吉田 孝紀, 瀧 修一, 伊庭 靖弘, 菅原 勝, 疋田 吉織
    2003 年109 巻6 号 p. 336-344
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道北部,天塩中川地域の白亜系,下部蝦夷層群神路層から,蛇紋岩礫を含む礫岩が見出された.神路層は主に堆積物重力流からなり,蛇紋岩礫は含礫泥岩や厚層理砂岩に石灰質な生物片とともに含まれる.蛇紋岩礫は非常に強く蛇紋岩化し,初生的な鉱物組織を認識することは困難である.礫岩中には蛇紋岩礫と同時に,クロムスピネル,蛇紋岩片を核とするウーイドやそれらからなるウーライト質石灰岩礫も含まれている.砕屑性クロムスピネルの化学組成は枯渇したマントルかんらん岩からの供給を示唆している.蛇紋岩礫の変質・摩滅に対する抵抗性は非常に低いと考えられるので,蛇紋岩礫の堆積は供給源岩体に非常に近い地域でなされたと推定される.ウーライト質石灰岩の存在は,石灰質堆積物が形成されるような浅海にまで,蛇紋岩体が上昇したことを示唆している.従って,この含蛇紋岩礫岩の存在は,白亜紀前期の前弧海盆への蛇紋岩類の貫入と露出を示す.
  • 高橋 雅紀, 須藤 斎, 大木 淳一, 柳沢 幸夫
    2003 年109 巻6 号 p. 345-360
    発行日: 2003/06/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    関東平野東端の銚子地域に分布する中新統について,既報の資料および新たに得られた珪藻化石・K-Ar年代および古地磁気極性をもとに年代層序を総括し,従来の夫婦ヶ鼻層を夫婦ヶ鼻層(再定義)および千人塚層(新称)として二分した.夫婦ヶ鼻層の海成シルト岩は,産出した珪藻化石により,Crucidenticula kanayae帯(NPD3A)下部の,珪藻生層準D30(16.9Ma)とD33(16.5Ma)の間に位置づけられる.一方,千人塚層の凝灰質砂岩に挟在する古銅輝石安山岩溶岩について20.3±0.5MaのK-Ar年代を得た.また,同安山岩溶岩の古地磁気極性は正帯磁であることから,千人塚層の安山岩溶岩はChron C6A付近の正磁極節に対比される.両層には400万年程度の年代差が存在することから,両者の関係は不整合と考えられる.
  • 内田 悦生
    2003 年109 巻6 号 p. XI-XII
    発行日: 2003年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    カンボジアのアンコール遺跡は9世紀から13世紀にかけて建造されたヒンドゥ教・仏教寺院であり, 主たる建築材料として砂岩およびラテライトが用いられている. 建造以来, 樹木の成長(第1図)や地盤の不同沈下等により遺跡の崩壊が引き起こされているが(内田・小河, 1997), それと同時に砂岩材には種々の要因による興味深い劣化現象が見られる(Uchida et al.,2000). アンコール遺跡で多用されている砂岩は, 灰色~黄褐色砂岩(長石質アレナイト, 構成鉱物 : 石英,斜長石, カリ長石, 黒雲母, 白雲母, 岩石片)であり, 全ての時代にわたって岩石学的には同種の砂岩が使用されているが, その帯磁率には系統的な違いが認められ, 帯磁率に基づき石切り場の変遷が明らかにされている. この灰色~黄褐色砂岩には, 主として次のような劣化が認められる : (1) コウモリの排泄物に起因する劣化, (第2図, 第3図), (2) 方解石析出による劣化(第4図), (3)タフォニ(第5図~第7図), (4) 日射による膨張・収縮に起因する劣化, (5) 荷重による層理面に沿った亀裂, (6) 除荷による内部応力開放に起因する亀裂(シーティング). タフォニに関しては, その原因が必ずしも明らかではなく, 今後の解明が期待される. このような自然現象に伴う劣化・破壊ばかりでなく, 盗掘, 破仏や内戦による人為的な遺跡破壊も見られる.
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