断層帯の変位量と幅の相関関係は,断層の成長と地震の発生過程を理解する上で重要なパラメータである.本研究では,高知県安芸市八流地域に位置する後期白亜系四万十帯について,断層帯の幅を測定し,ビトリナイト反射率(R
o)測定から古地温勾配および断層傾斜を仮定することで断層の累積変位量を推定した.その結果,付加体における断層帯の累積変位量と幅の比は10
−5~10
−3と,グローバルな傾向から2~3桁低いことが明らかとなった.さらに,断層帯の透水率測定の結果,有効応力100 MPaにおいて,断層帯の上・下盤では10
−21 m
2であるのに対し,断層帯では10
−17 m
2とそれより4桁高い値を示した.付加体中の断層で,変位の割に非常に薄い断層帯が形成されるのは,このような透水性構造によって断層帯内部に高間隙水圧が保持され,有効垂直応力が低下し,断層運動時に破砕物質の生成(断層帯の成長)をほとんど伴わずに断層すべりが進行したためであろう.
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