地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
120 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論説
  • 山元 孝広, 長谷部 忠夫
    2014 年 120 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/06/24
    ジャーナル フリー
    福島県南会津郡只見町叶津の只見川支流叶津川,標高367 m地点で,直立した化石樹幹を含む砂-シルト互層からなる湖成堆積物が露出した.化石樹幹はいずれも,生木に近い状態を保っていた.樹幹の外側の年輪5年分の試料からは,48,180 ± 580 yBPの補正放射性炭素年代値が得られた.この年代は約35 km下流の沼沢火山で起きた約5万年前の火砕流噴出(水沼噴火)による堰止湖の形成を示すものと解釈される.水沼火砕物の直上には広域テフラである大山倉吉テフラが位置しており,その堆積年代を考慮すると,水沼噴火の実年代は約53 kaと推定されよう.
  • 北村 真奈美, 向吉 秀樹, 廣瀬 丈洋
    2014 年 120 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/06/24
    ジャーナル フリー
    断層帯の変位量と幅の相関関係は,断層の成長と地震の発生過程を理解する上で重要なパラメータである.本研究では,高知県安芸市八流地域に位置する後期白亜系四万十帯について,断層帯の幅を測定し,ビトリナイト反射率(Ro)測定から古地温勾配および断層傾斜を仮定することで断層の累積変位量を推定した.その結果,付加体における断層帯の累積変位量と幅の比は10−5~10−3と,グローバルな傾向から2~3桁低いことが明らかとなった.さらに,断層帯の透水率測定の結果,有効応力100 MPaにおいて,断層帯の上・下盤では10−21 m2であるのに対し,断層帯では10−17 m2とそれより4桁高い値を示した.付加体中の断層で,変位の割に非常に薄い断層帯が形成されるのは,このような透水性構造によって断層帯内部に高間隙水圧が保持され,有効垂直応力が低下し,断層運動時に破砕物質の生成(断層帯の成長)をほとんど伴わずに断層すべりが進行したためであろう.
  • 金井 拓人, 山路 敦, 高木 秀雄
    2014 年 120 巻 1 号 p. 23-35
    発行日: 2014/01/15
    公開日: 2014/06/24
    ジャーナル フリー
    中央構造線(MTL)に沿って分布する領家帯花崗岩の天竜峡花崗岩と新城トーナル岩を対象に,石英粒子中に発達するヒールドマイクロクラック(HC)の三次元方向分布から,花崗岩体冷却時の応力状態を推定した.この方向分布を推定するため,ユニバーサルステージを使ってHCを測定する際の観測バイアスを補正する方法を考案した.岩体の各所でHCの方向分布を求め,得られた方向分布に混合ビンガム分布をフィッティングすることで,各試料で複数の応力状態を検出した.両岩体とも卓越する応力状態のσ3軸はMTLの走向にほぼ直交で低角度を示した.多くの試料から同じ方向のσ3軸が推定されているため,この応力状態はHC形成時(約65 Ma)の広域応力状態を示している可能性がある.σ1軸およびσ2軸の方向は両岩体,または試料により異なり,それらはより局所的な条件に依存したと考えられる.
口絵
feedback
Top