地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
108 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 植田 勇人, 川村 信人, 吉田 孝紀
    2002 年 108 巻 3 号 p. 133-152
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    神居古潭帯南部三石川地域では,白亜紀の前弧海盆堆積体(ニタラチ-蝦夷層序)が低温高圧型変成作用を被った付加体(岩清水コンプレックス)の上位に分布する.中部蝦夷層群歌笛層(アルビアン)は岩清水コンプレックスを不整合に覆う.歌笛層の基底部は,低温高圧型変成鉱物を伴う緑色岩礫やニタラチ-蝦夷層序起源の下部白亜系泥岩礫を含む河川成の堆積物である.河川成礫岩の存在は,最高部で20km以上の変成深度を示す岩清水コンプレックスが変成後20Maの短期間に上昇し,アルビアン期に陸上に露出したことを示す.岩清水コンプレックスの上昇は,蛇紋岩ダイアピルとして起ったのではなく,コンプレックス全体が一体となって上昇した.この上昇・陸化は,前期白亜紀における海山体の多量のアンダープレーティングや,沈み込み海洋地殻の若齢化がもたらす浮力が原因と推定される.
  • 末岡 正嗣, 狩野 彰宏, 古城 智子, 松岡 淳, 井原 拓二
    2002 年 108 巻 3 号 p. 153-163
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    鹿児島県徳之島南西部の小原海岸のトゥファ堆積物は日本の温帯地域のトゥファとはいくつかの点で異なる特徴を示す.ここでは,温暖な気候を反映し,琉球層群を通過した地下水のCa濃度と平衡二酸化炭素分圧が高く,さらに水温も高いため,沢での方解石の沈殿に適した水質条件になっている.水質から計算した方解石の無機沈殿速度(PWP-rate)は従来日本の温帯地域から報告されたトゥファ堆積場に比べて2倍近くのレベルであり,実際のトゥファの堆積速度もかなり大きくなっている.沢水がプール状に溜まっている場所では,二酸化炭素の脱ガスが進行し,無機沈殿速度は最も高く,シラブ状の形態を持つ堆積物の発達が認められた.小原海岸のトゥファ堆積物中には縞状組織が認められたが,それが年縞であるとは言えず,気候の季節変化以外の何らかの要因が縞状組織の形成に働いていると考えられる.
  • 石原 与四郎, 徳橋 秀一
    2002 年 108 巻 3 号 p. 164-175
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    新潟堆積盆に分布する鮮新統川口層は,西部の半深海相と東部の浅海相が同時異相で堆積するタービダイトサクセッションである.半深海域で4セクション,浅海域で3セクションの連続柱状図を作成し,それぞれについてタービダイト堆積の時系列の検討を行った.その結果,半深海域では,タービダイトの堆積が起こる時期と起きない時期のコントラストが著しいこと,半深海域に見られるタービダイトの集中堆積は,数10年以内に数10枚のオーダーで形成され,これは通常時の1,000倍の頻度であること,タービダイト堆積量の増減が約10万年周期を示し,異なる堆積体でも同じ時期に多くのタービダイトが堆積する傾向があること,半深海と浅海では違った周期を持つことなどがわかった.これらのことから,半深海域につながるフィーダーチャネルは,海水準低下期には陸上の河川と連結した可能性が高く,浅海域とは独立のシステムで砕屑物をもたらしていたと考えられる.
  • 三宅 明, 大西 由夏, 與語 節生
    2002 年 108 巻 3 号 p. 176-185
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    光学的一軸性結晶のc軸方位をコノスコープ像を用いて測定する新しい方法を提案する.この方法は,コノスコープ視野上に設定した2つの検査点が消光するよう,それぞれステージを回転させ,それらのときのステージ目盛の値(ステージ角)からc軸方位を測定するものである.2つの検査点は十字線のE-W線上にそって視野中心から両側に等距離の位置に設定した.検査点での異常光の振動方向がE-W線に垂直になるようなステージ回転位置で,その検査点は消光する.その消光条件を,c軸方位,視野中心から検査点までの距離,結晶の主屈折率,およびそれぞれの検査点の消光時のステージ角を用いて定式化した.得られた式からc軸方位は計算される.このコノスコープによる方法は,伝統的なUステージによる方法より,高い精度でc軸方位を測定できる点で優れている(石英の場合,測定誤差を0.2°以下にすることができる).
  • 川上 源太郎, 塩野 正道, 川村 信人, ト部 暁子, 小泉 格
    2002 年 108 巻 3 号 p. 186-200
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北海道中央部夕張山地に分布する川端層の,岩相層序と堆積年代を検討した.川端層は泥岩優勢の砂岩泥岩互層を主体とする下位の雨霧砂岩泥岩部層と,厚層の砂岩・礫岩を主体とし,砂岩優勢の砂岩泥岩互層を伴う上位の東山砂岩礫岩部層に区分される.5枚の凝灰岩鍵層(K1~K5)が広域に追跡され,両部層の境界は北から南へ若くなる.K5のフィッショントラック年代値として13.2±0.9Maを得た.またK5の150m下位の層準からCrucidenticula nicobarica Zone~Denticulopsis praedimorpha Zone(13.1 Ma~11.5 Ma)を,K5の400m上位の層準からDenticulopsis dimorpha Zone(10.0Ma~9.2Ma)を示す珪藻化石群集がそれぞれ得られ,川端層上限の堆積年代は少なくとも後期中新世まで達する.凝灰岩鍵層により示される同時間面と部層境界との関係から,堆積盆の埋積は北から南へ向かって進行したと考えられ,夕張山地においては礫質粗粒砕屑物の供給が後期中新世まで継続したことが明らかとなった.
  • 平中 宏典, 松原 成圭, 黒川 勝己
    2002 年 108 巻 3 号 p. 201-204
    発行日: 2002/03/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Correlation of late Miocene volcanic ash beds in the Uchisugawa and Nomura Formations composed of hemipelagic mudstone in Niigata Prefecture was attempted. Because glass shards in these ash beds are preserved from chemical alteration, their shape and chemical composition by EPMA analyses give useful criteria of tephra identification. Four volcanic ash beds distributed in each formation were well correlated ; namely (1) Kdg (in the Uchisugawa Formation) -Sng (in the Nomura Formation) beds, (2) Gtm-Stm beds, (3) Skhq-Tmhq beds, and (4) Jng-Snsg beds in ascending order.
  • 中島 礼, 天野 和孝, Vladimir D. Khudik
    2002 年 108 巻 3 号 p. V-VI
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    ロシアのサハリン島には新生界が広く分布し, サハリンと日本の地質の対比は北西太平洋における古環境変遷や北方系生物の系統解析などに重要な意味を持つ. しかし, サハリンへのアクセスの問題や両国の研究者の分類学的見解の食い違いなどから, 両地域の対比は十分とはいえない. ペレストロイカ以降地質調査でサハリン行きが可能となり, 今後の活発な研究交流が期待される.
    調査は Makarov 地域に分布する中部中新統 Ausi 層, Kurasi層, 下部鮮新統 Maruyama 層中部 とTaranay 地域の下部鮮新統 Maruyama 層中部で行った. 各層から貝類化石が多産し, 特に Makarov 地域の Maruyama 層中部は本邦新生代の代表化石である Fortipecten taka-hashii(Yokoyama)の模式地として知られる. ロシアではこの種を前期鮮新世の示準化石として扱っているが, この種は中新世末から前期更新世まで生息していた可能性が高く, Maruyama層の地質年代の再検討が必要である.
  • 小嶋 智, 郷津 知太郎, 板谷 徹丸, Talat Ahmad, Rafique Islam
    2002 年 108 巻 3 号 p. VII-VIII
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    我々は, 2001年7月末から8月中旬にかけて北西インド, ラダックヒマラヤのインダス縫合帯沿いの地域で予察的な地質調査を行った. 現地は標高4,000-5,000mの乾燥地域で, 岩石の露出も良く, 高度障害にさえ気をつければ地質調査には都合のよい地域である. 調査地域には, 北東から南西へ(1)カラコルムブロックを構成する深成岩類, (2)シュヨク縫合帯構成岩類, (3)ラダック深成岩類, (4)インダス縫合帯構成岩類, (5)ソモラリ変成岩類, (6)ザンスカール堆積岩類が分布する. (3)はパキスタンのコヒスタンアークを構成する岩石の東方延長と考えられており, 110-22Maの様々な種類の火成岩からなる. (4)はカルギル層, インダス層, ニダールオフィオライト, ジルダットオフィオライトメランジュからなる. ニダールオフィオライトは, 超塩基性岩・はんれい岩・玄武岩・チャートなどからなり, 典型的なオフィオライト層序を示す. ジルダットオフィオライトメランジュは, 玄武岩・チャート・石灰岩などのブロックを含むメランジュである. (5)はインド亜大陸の上の陸棚相堆積物が変成作用を被って形成された変成岩や花岩類であり, (6)おかはその非変成相である. 今回の予備調査では, (3)-(5)の分布域を概査することができたので, そこに見られる地質の特徴を速報する. なお, 第2~5図の写真撮影地点は第1図に示されている.
feedback
Top