地質学雑誌
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118 巻, 8 号
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論説
  • 間中 光雄, 福士 圭介, 宮下 由香里, 伊藤 順一, 渡部 芳夫, 小林 健太, 亀井 淳志
    2012 年118 巻8 号 p. 459-475
    発行日: 2012/08/15
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,低活動性断層の活動性を評価する手法開発のために,2000年鳥取県西部地震の余震域と非余震域(日南湖リニアメント)から採取した断層ガウジに対して鉱物学的・化学的手法を用いて,両断層ガウジを比較した.粉末X線回折分析と逐次選択抽出試験の結果,余震域断層ガウジはイライトと緑泥石を主とし,非余震域断層ガウジはハロイサイトを主とする.余震域ガウジの含有鉄は主にイライトに,非余震域ガウジの鉄は主に非晶質と結晶性鉄鉱物に存在する.Lab表色系の色調測定の結果,L値の差はイライトとハロイサイトの違いを表し,余震域ガウジの負値のaは緑泥石の存在を,非余震域ガウジの正値のaは結晶性鉄鉱物の存在を示す.これら鉱物学的・化学的特徴にて,2000年鳥取県西部地震の余震域と非余震域の断層ガウジを明確に判別でき,その見極めには現場露頭でも簡便に実施できる色調測定が有効であることが示唆された.
  • 石田 桂, 吉田 和弘, 松岡 篤
    2012 年118 巻8 号 p. 476-492
    発行日: 2012/08/15
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    中期更新世の日本海における環境変遷を明らかにするため,新潟県佐渡島に分布する沢根層上部の貝形虫化石を氷期−間氷期スケールで検討し,中期更新世に日本海表層〜浅海域が低塩分化した証拠を浅海層で初めて確認した.沢根層上部の堆積場は水深150〜200 m前後で変化し,低海水準期により浅く寒冷・低塩分な環境を示した.また,高海水準期でも暖流の影響が認められないことから,沢根層上部は亜間氷期から氷期に至る氷河性海水準変動を記録していると推察される.氷期の低塩分を示唆する貝形虫化石群集は,単位gあたりの個体数が少なく,後期鮮新世〜現在の地域的な低塩分環境を示唆する群集と異なること,低塩分環境に優占する2種は亜間氷期には全く産出せず,日本海の低塩分環境を生き延びた種の生息環境と類似する環境に現生していることから,沢根層上部には中期更新世以降に日本海で起こった氷期の表層水低塩分化が記録されていると考えられる.
  • 細井 淳, 天野 一男
    2012 年118 巻8 号 p. 493-498
    発行日: 2012/08/15
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    海底噴火に伴う巨大軽石の種類は,海底火山活動の種類や形成環境に左右される.そのため巨大軽石の解析は過去の海底火山活動や噴火環境の推定に役立つ.今回,奥羽脊梁山脈に分布するグリーンタフ中から発見した巨大軽石は気泡が伸長した跡が残されており,グリーンタフ中で初めて材木状軽石と認定できた.材木状軽石は水深約1000 m以深で形成される気泡がパイプ状に伸長した巨大軽石である.本発見は本研究地域のグリーンタフを噴出した古海底火山活動の場を制約する重要な鍵になる.材木状軽石は琉球弧や伊豆・小笠原弧の背弧リフト帯から発見されている.現在の背弧リフト帯における材木状軽石と海底熱水鉱床の存在は,本研究地域の材木状軽石と黒鉱鉱床の存在という点で類似する.この事実は本研究地域が背弧リフト帯と同様のテクトニクスや火山活動下にあった可能性を示唆している.
  • 西来 邦章, 高橋 康
    2012 年118 巻8 号 p. 499-515
    発行日: 2012/08/15
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    八柱火山群において地質調査および全岩化学組成分析を行い,これまでに報告された年代値を踏まえて,噴出量およびその時間変化,岩石学的特徴を明らかにし,八柱火山群全体の詳細な火山形成史を復元した.八柱火山群は5つの火山体で構成され,総噴出量は約172 km3である.この火山群は約120万年前に活動を開始し,玄武岩質の扁平な火山体を形成した.約110万年前には玄武岩質火山活動の活動場が拡大し,西北西−東南東方向に配列する主要な火山群を形成した.また,デイサイト〜安山岩質火山活動も発生し,厚い溶岩流が流出した.約95万年前になると,火山活動が低調になりはじめ,約80万年前にはすべての活動が終了した.八柱火山群に卓越する玄武岩質マグマは,単一のマグマからの単純な結晶分化作用で生成されたマグマではなく,部分溶融度の異なる,あるいは同化結晶分別作用を経るなど様々なプロセスを経たマグマであると考えられる.
  • 永広 昌之, 西川 治, 西川 功
    2012 年118 巻8 号 p. 516-520
    発行日: 2012/08/15
    公開日: 2012/12/19
    ジャーナル フリー
    広島県東部の府中市川井に白亜系の内座層として分布する川井石灰岩からアンモノイドDiaboloceras sp. 2個体とPseudoparalegoceratidae gen. et sp. indet. 1個体を記載した.前者のレンジは後期石炭紀(後期Bashkirian〜Moscovian)に限られる.これらは秋吉帯中央部からの石炭紀アンモノイドの初産出報告である.アンモノイド産地近傍からは前期ペルム紀の腕足類や小型有孔虫・フズリナも知られており,また,川井石灰岩からは後期石炭紀〜中期ペルム紀の小型有孔虫・フズリナが報告されているので,川井石灰岩の年代は後期石炭紀から中期ペルム紀に及ぶ.化石データに基づけば,川井石灰岩は上部石炭系−中部ペルム系からなる層序の3回の繰り返しからなっていると見なされる.また,川井石灰岩とその近辺の秋吉帯南縁部に内座層として点在する石灰岩主体の岩体群は大きな海山−礁複合岩体をなしている可能性がある.
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