地質学雑誌
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111 巻, 4 号
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総説
  • 後藤 和久
    2005 年 111 巻 4 号 p. 193-205
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/01
    ジャーナル フリー
    今から約6500万年前の白亜紀/第三紀(K/T)境界に地球外天体が衝突したとする説は,その後のメキシコ・ユカタン半島における衝突クレーターの発見や衝撃変成石英などの衝突起源物質の発見により現在では広く認知されるようになり,この衝突こそがK/T境界の生物大量絶滅の原因だったのではないかと考えられている.ところが,この衝突はK/T境界より約30万年前に起き,K/T境界での生物大量絶滅とは無関係だったとする説が一部の研究グループから近年報告され,K/T境界での衝突を支持する研究者との間で論争となっている.そして,衝突がK/T境界より約30万年前に起きたとする説に対して数多くの矛盾点が指摘され,この衝突はやはりK/T境界で起きた可能性が高いことが再確認されつつある.本論では,地球外天体衝突とK/T境界の同時性をめぐる一連の論争を紹介し,この問題を検討する.
論説
  • 歌田 実, 澤田 臣啓
    2005 年 111 巻 4 号 p. 206-216
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/01
    ジャーナル フリー
    白亜紀前期の関門層群は本州西部から北九州の日本海沿いに分布している.関門層群は全層,非海成堆積物で砕屑岩,火山岩,火山砕屑岩などを含み,貫入岩体に貫入されている.関門層群中の変質作用は広域,ホルンフェルシック,熱水,および風化に分けられる.その中で,広域変質は石英―曹長石化斜長石―緑泥石―(イライト)―(鉄鉱物)の組み合わせで特徴付けられる.この組み合わせは全ての種類の岩石,全ての層準に広く出現するが,変質鉱物は続成過程で順次生成していった証拠を欠いている.ホルンフェルシック変質は広域変質の組み合わせに,角閃石,黒雲母かコーディエライトが加わっている.熱水変質は局所的に出現している.粘土鉱物,炭酸塩鉱物,ゼオライトなど,変質鉱物は後期に形成された裂か,フラクチャー,断層などに沿って上昇した熱水から生成したのであろう.風化変質はむしろ稀であり,他の変質帯,特に熱水変質帯に重複している.
  • 原 英俊, 久田 健一郎
    2005 年 111 巻 4 号 p. 217-223
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/01
    ジャーナル フリー
    関東山地三峰地域に分布する南部秩父帯・四万十帯付加コンプレックスの千枚岩より,イライトを分離・濃集しK-Ar年代を求めた.南部秩父帯日原層は約71・74・76 Maの,四万十帯大滝層群二瀬ユニットは約65・76Maの,川又ユニットは約49 MaのK-Ar年代を示す.また圧力溶解劈開が発達し剪断変形を受けた二瀬ユニットの1試料は,約50 Maの若いK-Ar年代を示す.K-Ar年代に基づくと,三峰地域の南部秩父帯・四万十帯付加コンプレックスは,共に白亜紀終わりのおおよそ65~76 Maに変成作用を受けたといえる.
  • 小田原 啓, 井龍 康文, 松田 博貴, 佐藤 時幸, 千代延 俊, 佐久間 大樹
    2005 年 111 巻 4 号 p. 224-233
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/01
    ジャーナル フリー
    知念層は,石灰質砂岩・砂質石灰岩よりなり,泥岩からなる上部中新統~鮮新統島尻層群と,礁性堆積物からなる更新統琉球層群との間の中間的な岩相を呈する.“赤色石灰岩”は,琉球層群最下部に位置し,溶解・浸食を受けて変質した砕屑性・石灰藻球石灰岩よりなる.本研究では,米須・慶座地域で掘削されたコアの石灰質ナンノ化石生層序を検討した.基準面13(1.97 Ma)は,米須コア試料では知念層上部中にあるが,慶座コア試料ではDiscoaster属の産出が散点的かつ頻度が低いため識別できない.基準面12(1.73 Ma)と11(1.65 Ma)は,両コア試料で“赤色石灰岩”の基底付近に引かれる.基準面10(1.45 Ma)は,米須では“赤色石灰岩”と那覇層の境界付近に,慶座では“赤色石灰岩”中に位置する.よって,知念層は1.73 Ma以前,“赤色石灰岩”は1.65~1.21 Maに堆積したと考えられる.
  • 藤崎 克博, 篠原 誠, 難波 謙二, 楡井 久
    2005 年 111 巻 4 号 p. 234-248
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/08/01
    ジャーナル フリー
    湖沼の再生のためには,湖沼を含む地域の地質環境を検討して,地下水をはじめとする自然の水循環を復元していくことが必要と考える.その一つの試みとして,北浦西岸地域の地下水流動系をあきらかにし,地下水を利用して北浦を湖として再生させるための事業計画立案を行った.それは,北浦西岸における親水公園・湖水浴場を企画するもので,その水源として自噴井を想定した.帯水層の係数を求めるため,これまで我が国にあまり紹介されてこなかった自噴井戸の湧出試験を北浦西岸地域で実施した.自噴井を用いた湧出試験は,揚水試験とは異なり揚水ポンプを必要とせず,単に湧出量を測るだけで帯水層係数が求められるという簡便性に特長がある.その解析結果を用いて,親水公園・湖水浴場に必要な水量を確保するには何本の自噴井が必要かを検討するため,これまで示されていなかった相互に影響する自噴井の湧出量の計算方法を考案した.それを用いて自噴井群の湧出量の検討を行った.
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