地質学雑誌
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117 巻, 12 号
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特集 高分解能火山地質学における層序・年代学と噴火現象
総説
  • 奥野 充
    2011 年117 巻12 号 p. 654-662
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル フリー
    地質調査によるテフラ層序と14C年代測定から,高分解能なテフラ年代学を構築できる.テフラ層は,休止期の堆積物で区分されるが,その堆積物の種類によって固有のバックグラウンドがある.それらのなかで,年縞堆積物が最も信頼できる記録装置といえる.テフラ層の認定には,誤認防止や後の検証のため,複数の露頭で確認されるべきである.テフラ層の名称は,二重命名法がよいが,数字をつける場合には,地表を起点として下方へつけるべきである.14C年代は,測定技術の進展により高精度な年代値が得られるようになったが,正確度の高い年代決定にはより厳密な地質学的な解釈が必要である.14Cウイグルマッチングは,最も正確に噴火年代を決定できる方法である.降下テフラの噴出量の見積もりには,面積-重量線図の傾きの異なる区間ごとの積分法が正確であろうが,前提となる正確な分布図を得ることが難しい.簡便法であるV=12.2TAが実用的であり,有珠火山2000年噴火でも綿密に得られたコンターを利用した積分法とほぼ一致している.その際,もっとも精度のよいコンターを使うべきである.
  • 星野 安治, 及川 輝樹
    2011 年117 巻12 号 p. 663-670
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル フリー
    本論では,年輪年代学の概要を解説するとともに,年輪年代学的手法による火山活動の年代決定について現在までの研究の到達点と問題点を整理し,年輪から火山活動の情報をいかに引き出すかについて議論する.これまでに,火山活動に伴い埋没・枯死した樹木の年代決定法や大規模噴火による半球・全球規模の気候変動に伴う年輪変動を利用した方法はほぼ完成している.一方,噴火の影響を受けながらも生き残った樹木の年輪変動を利用した年代決定法には改良の余地がある.年輪年代学的手法は,高い時間分解での火山活動史の解明に強力なツールとなるが,さらなる手法的な改良を加えつつ研究事例を増やす必要がある.またそれとあわせて,樹種的にも地域的にも標準年輪曲線の整備・充実を図ることが,当該研究の発展を促すことにつながると考えられる.
論説
  • 浅間火山2004年9月1日噴火を例に
    阪上 雅之, 佐々木 寿, 三宅 康幸, 向山 栄
    2011 年117 巻12 号 p. 671-685
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル フリー
    浅間火山2004年9月1日噴火(以下,9/1噴火と略す)について未解明であった火口西側地域を中心に現地踏査を行った.さらに,高分解能衛星画像の判読結果や室内分析および火山監視画像の解析から9/1噴火による本質物(パン皮状火山弾)を特定し,それらの分布を明らかにした.地層を形成しにくいブルカノ式噴火噴出物の分布を現地で把握するために,高分解能衛星画像が有効であった.現地踏査単独ではブルカノ式噴火噴出物の把握は難しいため,平常時より高分解能衛星画像や空中写真の整備など,噴火前後の微地形変化を比較できる準備が必要である.特定した本質物(パン皮状火山弾)を用いて,9/1噴火をもたらしたマグマの実態を推定した.含水量測定の結果より算出されたマグマ深度の差から,マグマ柱は鉛直方向に少なくとも180 m程度の高さであったと考えられる.
  • 高分解能テフラ層序に基づく対比と編年
    長谷川 健, 中川 光弘, 伊藤 順一, 山元 孝広
    2011 年117 巻12 号 p. 686-699
    発行日: 2011/12/15
    公開日: 2012/03/26
    ジャーナル フリー
    テフラを用いて北海道東部の釧路地域に分布する第四系の編年を試みた.釧路地域の海成層(上位から,大楽毛層,釧路層)の各模式地において複数のテフラを記載・採取し,火山ガラスの主成分化学組成などの岩石学的特徴や層位関係から,阿寒・屈斜路火山地域のテフラと対比を行った(阿寒および屈斜路テフラはそれぞれ上位から,Ak1~17およびKpI~VIII).大楽毛層の上位にはKpVIが見いだされ,また大楽毛層上部と下部に挟まる2層の火山灰層は,それぞれAk5および給源不明の広域テフラ(LowK-1)に対比される.一方,釧路層中に含まれる軽石礫・溶結凝灰岩岩塊は,すべてAk13~Ak17由来である.以上の対比結果と既報のテフラ年代から,大楽毛層の堆積は,少なくとも,0.8 Maに開始し0.1 Maより前に終了したと推測できる.釧路層の堆積時期は,1.5 Ma以降,1.0 Maより前と考えられる.
口絵
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