地質学雑誌
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124 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
125周年記念特集:付加体地質中に残る深海堆積相の研究:進展と展望
前文・表紙説明
総説
  • 放散虫およびコノドント研究の現状と将来の展望
    上松 佐知子, 鎌田 祥仁
    2018 年 124 巻 12 号 p. 951-965
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    本論文では放散虫とコノドント化石に関する過去25年間の研究成果を振り返る.放散虫生層序学分野では,中期古生代から中生代までの多くのデータが蓄積されると共に,化石帯の分解能が大きく向上した.コノドント化石は90年代以降,特にペルム系と三畳系の各階境界を定義する国際的な示準化石として重要性が増している.今後は放散虫とコノドント生層序の相互較正,更に生層序と年代測定学的尺度との対比を積極的に行っていく必要がある.生物学的研究については,放散虫の系統解析や生体飼育に関して我が国から多くの研究が発信され,知見が蓄積された.また付加体地域からは三畳紀コノドントの良質な標本が多数報告され,コノドントの古生物学的研究に貢献している.今後はこれらの研究を更に発展させると共に,微化石研究の一般への普及および次世代を担う若手研究者を育成していくことが重要である.

  • 宇野 康司
    2018 年 124 巻 12 号 p. 967-981
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    西南日本に分布する三畳紀・ジュラ紀層状チャートのこれまでに蓄積された古地磁気データについて,その微弱な初生磁化からどの程度の精度で過去のプレート運動や堆積場の古緯度が読み解かれるかを議論し,また,チャートが記録する二次磁化についての情報を整理した.これまでに報告されているチャートの初生磁化方向の極性判断を行い古緯度を求めた結果,三畳紀中期には赤道付近で堆積していたことが示された.チャートはその後,南中国ブロックの東縁に付加した可能性が高い.西南日本のチャートは複数の二次磁化成分を記録しており,磁化の獲得機構による分類では粘性残留磁化,熱粘性残留磁化,および化学残留磁化の三種類が存在している.このうち熱粘性残留磁化と化学残留磁化はそれぞれ,西南日本の600km離れた二つの地域間における類似性がみられ,広域的な二次磁化であることが示唆される.

  • 佐藤 峰南
    2018 年 124 巻 12 号 p. 983-993
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    地球科学の最も重要な発見のひとつである白亜紀/古第三紀(K/Pg)境界の白金族元素の異常濃集が報告されてから30年以上が経過した.それ以降,世界中のK/Pg境界層から白金族元素の異常濃集が検出されている.日本の付加体である三畳紀-ジュラ紀の層状チャートは,非常に遅い堆積速度(1000年で数mm以下)をもつ遠洋性深海堆積物であり,大陸起源物質の混入が少ないという特徴を持つ.層状チャートは,堆積速度が遅く,連続的な堆積物であることから,層状チャート中には地質時代を超えた地球外起源物質付加の記録が残されている.本稿では,日本の遠洋性堆積物中に保存された後期三畳紀の巨大隕石衝突による地球外起源物質の流入履歴について,地球化学データを用いてレビューした.層状チャート中の白金族元素およびオスミウム同位体の地球化学データは,隕石のタイプや種類を推定する上で非常に有用な情報を提供する.

  • 野崎 達生, 藤永 公一郎, 加藤 泰浩
    2018 年 124 巻 12 号 p. 995-1020
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    日本列島は主に過去4億年以降の付加体から構成されており,付加体中には古海洋底で生成した様々な鉱床が胚胎している.本論文では,別子型硫化物鉱床,層状鉄マンガン・マンガン鉱床に関する成因論の進展と未解明の課題をレビューする.三波川帯に分布する別子型鉱床は遠洋域の中央海嶺で生成し,ジュラ紀後期海洋無酸素事変によって保存された.現地性緑色岩を伴う四万十帯北帯の別子型鉱床は,白亜紀後期の海嶺沈み込み現象に付随して生成した.他のメランジュ中に胚胎する別子型鉱床については未解明の点が多い.層状鉄マンガン鉱床は,中央海嶺近傍の熱水性堆積物を起源とし,緑色岩を伴う層状マンガン鉱床は海山近傍の熱水性堆積物に由来する.チャート中に胚胎し緑色岩を伴わない層状マンガン鉱床は,貧酸素・高マンガンの深層水に高酸素・貧シリカの表層水流入によって形成したと考えられるが,マンガンの究極的な起源についてはいまだ不明である.

  • 尾上 哲治
    2018 年 124 巻 12 号 p. 1021-1032
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    日本列島のジュラ紀付加体中には,パンサラサ海の遠洋域で堆積した三畳系〜ジュラ系層状チャートが広く分布する.層状チャートは,一般に泥質部と珪質部の互層から構成され,主に大陸起源の風成塵からなる泥質部の堆積と,生物源(放散虫)シリカの深海底へのフラックス増加による珪質部の堆積が,ある一定周期で繰り返し起こり有律互層が形成されたと考えられている.しかしながら珪質部において生物起源シリカフラックスがなぜ増加するのかといった,堆積環境の変動要因については明らかにされていない.本論では,未解決である層状チャート珪質部・泥質部互層の堆積機構を理解するために,(1)珪質部・泥質部の堆積速度,(2)珪質部・泥質部堆積時の古環境,(3)珪質部層厚変動の要因という3つの問題について総括した.

  • 池田 昌之
    2018 年 124 巻 12 号 p. 1033-1048
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー

    地球軌道要素変化のミランコビッチ・サイクルは地球環境変化のペースメーカーである.この周期性を万年オーダーの時間目盛とする天文年代学により,新生代の年代学や古環境学は飛躍的に発展し,さらに古い時代へと展開している.中古生代の層状チャートはチャートと頁岩のリズミカルな互層からなり,この堆積リズムがミランコビッチ・サイクルに起因した可能性が古くから指摘されてきた.近年,ペルム-白亜系層状チャートの化石層序と古環境指標の周期解析により,ミランコビッチ・サイクルの認定基準である堆積リズムの周期と階層性が確認された.さらに,天文学的年代モデルを用いて堆積速度や物質収支を推定した結果,チャートを構成する生物源シリカは海洋溶存シリカの主要シンクであり,主要ソースである珪酸塩風化速度の変化を反映した可能性が示された.ミランコビッチ・サイクルに伴い超大陸パンゲアのメガモンスーン強度が変化するため,この生物地球化学的シリカ循環を介して層状チャートの堆積リズムが形成されたと考えられる.

通常号
報告
  • compilation of domestic article
    Satoru Haraguchi, Kenta Ueki, Kenta Yoshida, Tatsu Kuwatani, Mika Moha ...
    2018 年 124 巻 12 号 p. 1049-1054
    発行日: 2018/12/15
    公開日: 2019/03/15
    ジャーナル フリー
    電子付録

    A geochemical database for the basement rocks of the Japanese islands has been constructed. These data were previously published in Japanese domestic journals and bulletins not readily accessible to the international community. The database includes 5818 samples from 224 articles, and provides major and trace element concentrations, isotopic ratios, geographical coordinates (latitude, longitude, and altitude) of sampling points, and geological and lithological information. These data are provided in a unified and consistent format as an Excel spreadsheet, which can be efficiently utilized for statistical analyses and data-driven approaches in geochemistry, geology, and petrology.

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