地質学雑誌
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105 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 吉村 浄治, 高木 秀雄
    1999 年105 巻11 号 p. 739-756
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    四国西部三波川帯北縁部に分布する唐崎マイロナイトの構造解析とK-Ar年代測定が行われた.本岩体は三波川変成岩類の構造的上位に位置し, ナップを構成するものと考えられる.また, 唐崎マイロナイトは上盤東ずれ優勢の剪断センスを示すが, 周囲の三波川結晶片岩は上盤西ずれのセンスを示す.唐崎マイロナイトの大半を占める角閃岩質マイロナイトの角閃石ポーフィロクラストや, 泥質マイロナイトのざくろ石などのEPMA分析から, 唐崎マイロナイトの原岩をなす変成相は, 中~高程度の角閃岩相を示し, 三波川変成作用とは異なる.また, 角閃岩質マイロナイトの角閃石K-Ar年代は, 104±5 Ma, 119±6 Maおよび122±6 Maである.この結果と産状より, 唐崎マイロナイトは, 白亜紀前期110 Ma前後の肥後, 大島, 寄居, 竹貫-西堂平変成岩と対比され, 領家帯と三波川帯の間に挟まれて分布する古領家帯を構成していた可能性がある.
  • 中村 羊大, 亀尾 浩司, 浅原 良浩, 小澤 智生
    1999 年105 巻11 号 p. 757-770
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    琉球列島久米島に分布する島尻層群真謝層に, 不整合関係にある2つの堆積ユニットを認め, それぞれ下位より, 真謝層, 阿嘉層として再定義した.石灰質ナンノ化石の群集構成に基づくと, 真謝層上部はOkada and Bukry(1980)のCN9帯, 上部中新統に対比され, 阿嘉層上部はCN 12 b亜帯, 上部鮮新統に対比される.また, 軟体動物化石を用いたSr同位体層序の検討より, 真謝層上部から約7.8~7.2 Ma(後期中新世), 一方, 阿嘉層からは約3.2~3.1 Ma(後期鮮新世初期)にそれぞれ収束するSr同位体年代値を得た.さらに, ここで明らかにした層序と地質年代に照らして, 真謝層および阿嘉層を琉球列島に分布するほかの島尻層群相当層と対比し, 両累層の層序的意義を考察した.
  • 赤塚 貴史, 小畑 正明, 横瀬 久芳
    1999 年105 巻11 号 p. 771-788
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    高知県室戸岬に産する室戸岬斑れい岩体はカンラン石斑れい岩, 粗粒斑れい岩, ドレライトからなるシル状火成岩体である.本岩体の層状構造の成因を検討するため, 全岩化学組成・鉱物化学組成の分析と物質収支の計算を行い, 特に本岩体上部と下部の急冷周縁部の内側に発達するかんらん石結晶に富んだ"ピクライト質斑れい岩"について詳細に検討した.まず貫入時のマグマ中のメルトの化学組成の推定を行った.下部ピクライト質斑れい岩ではマグマの貫入後早期にカンラン石(Fo83)が約20 vol%上方からの重力沈降により集積濃集し, 間隙充填メルトは最大74 vol%に達した.希土類元素の存在度データもこのモデルで説明できる.一方, 上部ピクライト質斑れい岩はやや鉄に富んだカンラン石と斜長石が集積し, 集積時の間隙充填メルトは約68vol%と推定できた.
  • 高橋 俊郎, 周藤 賢治
    1999 年105 巻11 号 p. 789-809
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    富山県南部に分布する中新統岩稲累層の安山岩類は, 8タイプの安山岩~デイサイトに分けられ, それらはFeO*/MgO-SiO2図中で, ソレアイト系列の領域を占めるもの(グループ-I)と, カルクアルカリ系列~高マグネシア安山岩の領域を占めるもの(グループ-II)とに区分される.グループ-IIの安山岩はカルクアルカリ系列の安山岩, アダカイト質の安山岩, 高マグネシア安山岩からなる.これらの安山岩類の成因は以下のように考えられる.グループ-Iの安山岩;低アルカリソレアイト質の玄武岩質マグマの分別結晶作用, グループ-IIのカルクアルカリ系列の安山岩;安山岩質マグマと玄武岩質マグマとの混合, アダカイト質の安山岩;沈み込んだ海洋地殻に由来するアダカイト質マグマと, マントルカンラン岩との反応あるいは玄武岩質マグマとの混合, 高マグネシア安山岩;成因的にアダカイト質の安山岩と関連する.また, 本地域は岩稲累層の火山活動域の火山フロントに相当する可能性があることを議論した.
  • 伊藤 純一, 白木 敬一
    1999 年105 巻11 号 p. 810-813
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Picrite basalts containing MgO up to 16 wt.% were found in the lowest part of the Pliocene Uegusukudake Formation on the north coast of Kumejima island ; in the close proximity northwest of the island lies an active back-arc basin, Okinawa Trough. The high Fo (92.2) of olivine and Cr2O3 (56.5%) of spinel in the picrite basalts indicate the existence of a magma with >13% MgO and >0.15% Cr2O3. The Kumejima picrite basalts are tholeiitic arc picrites having relatively high SiO2 and low incompatible element abundances.They may have formed accompanying the opening of the Okinawa Trough.
  • 榎並 正樹
    1999 年105 巻11 号 p. 814-815
    発行日: 1999/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    科学研究費・基盤研究(B)「高圧変成岩-岩石学・変形学・地球化学的研究のリンク」が平成8~10年度に実施されました.それをきっかけとして, 変成作用・変成岩関係の文献データベースの作成を開始し, 1999年3月時点で, 主だった岩石学・地質学・地球化学関係雑誌の文献検索が終了しました.そこで, この個人文献データベースに登録されている欧文文献(約7,600件)のリスト"MEREF"を公開します.
  • 佃 栄吉, 粟田 泰夫, 吉岡 敏和, Ömer Emre, Tamer Yigit Duman, Ismail Kuscu
    1999 年105 巻11 号 p. XXI-XXII
    発行日: 1999年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    1999年8月17日の未明に発生したマグニチュード 7.4(米国地質調査所による)のイズミット(Ismit)地震は, トルコ北西部一帯に大きな被害をもたらし, 死者は1万7千人以上(10月14日現在, トルコ危機管理センターによる)に達した. この地震は北アナトリア断層の活動により引き起こされたもので, 被害の分布もおおよそそれに沿って東西に広がっている. 筆者らは9月14日より現地に入り, 地震後のトルコ鉱物資源調査開発総局(MTA)の調査結果をもとに, 陸域に出現した地震断層(約100km)の約60地点で, 断層運動による変位量を正確に計測した. 調査にあたっては最新の2万5千分の1の地形図と地震後に撮影された約1万分の1の航空写真を使用した. その結果, 今回の地震では走向, 変位量分布, 長さがそれぞれ異なる大小7つの断層が活動したこと(Fig. 2), 右ずれ変位が卓越し, その最大変位量は4. 9mであることなどが明らかになった. イズミット湾やサパンジャ(Sapanca)湖域の地震断層については今のところ情報がないが, 今後の陸域の詳細調査と併せて水域の調査を実施し, 地震断層の全体像を明らかにしたいと考えている. 結果は大縮尺の地震断層図として公表することにしている. この地震断層の詳細な記録は断層のセグメント構造に関する研究においてきわめて重要な情報となる. また, トルコにおいては将来の土地利用計画のための基礎資料として利活用されるものと期待している. ここでは今回の緊急現地調査で観察した地表地震断層の一部について紹介する.
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