地質学雑誌
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127 巻, 6 号
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巡検案内書:第128年学術大会(2021名古屋大会)
  • 榎並 正樹, 纐纈 佑衣, 加藤 丈典, 壷井 基裕, 丹羽 健文
    2021 年 127 巻 6 号 p. 313-331
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    岐阜県西部には,チャート,泥岩や石灰岩などの堆積岩類や塩基性火山岩類などからなるジュラ紀の付加体が広く分布する.白亜紀に貫入した貝月山(かいづきやま)花崗岩体は,周囲の岩石に接触変成作用をあたえており,特に岩体の南部や東部では幅3-4kmにおよぶ広範囲にわたって再結晶が進行している.そして,方解石-ドロマイト地質温度計とラマン炭質物温度計によって温度構造が定量的に論じられており,典型的な接触変成帯を連続的に観察するのに適した地域である.さらに,接触変成帯中には再結晶石灰岩が広く分布しており,累進的な変成流体の組成変化が論じられている.また,接触部近傍は花崗岩固結時に放出された熱水によって交代作用を受けており,その程度に応じて発達するさまざまなスカルンや交代脈を観察できる.今回の巡検では,接触変成帯高温部を中心にスカルン,ホルンフェルスや交代作用を受けた塩基性岩とあわせて,貝月山花崗岩本体や接触変成帯中に貫入しているランプロファイア岩脈を見学する予定である.

  • 松岡 敬二, 井上 恵介, 川瀬 基弘
    2021 年 127 巻 6 号 p. 333-344
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    鮮新-更新統古琵琶湖層群は,三重県から滋賀県にかけて分布する湖沼および河川堆積物からなる.古琵琶湖層群からの哺乳類や貝類化石は,江戸時代の弄石(ろうせき)仲間では広く知られる存在であった.今回の巡検地である伊賀盆地(上野盆地)東方の大山田地域は,古琵琶湖層群の下部が分布し,日本の鮮新世を代表する化石を産出している.その熱帯~亜熱帯要素を含む淡水生動物化石は,伊賀非海生動物群としてまとめられている.この巡検では,それらが産出した地層を案内し,露頭の現地保全とその重要性について論議するものである.

  • 葉田野 希, 吉田 孝紀, 笹尾 英嗣
    2021 年 127 巻 6 号 p. 345-362
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    愛知県名古屋市東方から岐阜県南東部に分布する中新統~更新統の瀬戸層群は,窯業原料となる粘土(陶土)を産する陸成層として知られ,これまでに粘土鉱物学,無機化学,堆積学,構造地質学,層序学といった様々な視点から,数多くの研究が行われてきた.それらの結果から,陶土の成因には,母岩である花崗岩の風化,細粒砕屑物が堆積盆地に集まるまでの侵食・運搬・堆積プロセス,堆積後の風化や初期続成作用といった複雑なプロセスが関与していることが明らかにされている.また,最近では,本層群に産する古土壌から,堆積当時の気候・風化条件に関する新たな知見が得られている.この地域で稼行されている露天掘りの粘土鉱山は,側方への連続性に乏しい陸成堆積相と地形・堆積環境の変化に伴って多様化する古土壌を観察するために適したフィールドでもある.

    本巡検では,愛知県と岐阜県の粘土鉱山に赴き,陸成層と強風化した花崗岩の観察を通して,陶土の成因,古土壌や古風化プロセス,瀬戸層群の地域ごとの堆積環境・古土壌の違いについて理解する.

論説
  • 前浜 悠太, 鹿野 和彦, 大木 公彦, 入月 俊明, 林 広樹
    2021 年 127 巻 6 号 p. 363-376
    発行日: 2021/06/15
    公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー
    電子付録

    鹿児島湾奥の新島に露出する姶良カルデラ底下の堆積物から底生有孔虫と浮遊性有孔虫,貝形虫の化石が産出することを見出し,それらの群集を分析した結果,以下の点が明らかになった.姶良カルデラは,当初,淡水に満たされていたが,1万3千年前以前に暖流が流入して深さ100 mを超える還元的で閉鎖的な海域となった.しかし,その後,微化石の種数と産出頻度は著しく低下する.その原因の1つとして姶良カルデラ北東部の若尊カルデラから放出された火山ガスが海水に溶け込んで酸性の水が底層に広がった可能性が考えられる.8千年前を過ぎる頃になると活発に暖流が入り込むようになり,カルデラ底は現在の水深140 mに達した.

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