関東山地の木呂子角閃岩は,白亜系跡倉ナップと御荷鉾緑色岩類の境界に挟まれている小さいブロックで,角閃石K-Ar年代が約400Ma(竹内・牧本, 1995)という古生代前期を示すことで知られている.
この角閃岩は,主にmagnesiohornblendeと曹長石からなり,他に高変成度を示す指標鉱物は含まない.また,角閃岩の全岩化学組成は,周囲のMORB組成を持つ御荷鉾緑色岩類とは異なっている.
この角閃岩のジルコンU-Pb年代は約480Maを示し,これは火成年代を示していると考えられる.また,変成作用の時期を示す角閃石の40Ar/39Arプラトー年代は,約430Maが得られた.これらの年代値は,木呂子角閃岩が日本列島のカンブリア紀-オルドビス紀の火成岩-変成岩複合岩体に属することを示している.
静岡県焼津平野の沖積低地で掘削したボーリング試料から得た海成層の上限高度とその年代と測地学データから,調査地域に隆起をもたらした安政東海地震と同様な地震の発生間隔を求めるため2つのモデルを作成した.地震間の沈降速度を一定としたモデルでは,1回の地震性隆起量を1.0,1.3,1.5,1.8mとすると,地震の平均発生間隔はそれぞれ143-174,188-226,215-261,261-324年と算出された.一方,地震間の沈降速度は一定ではないと仮定したモデルでは,隆起量1.0mに対する発生間隔は150-178年と算出された.
沼沢火山の先カルデラ期とカルデラ形成期の噴出物の岩石記載,斑晶鉱物組成,全岩主・微量成分組成および同位体組成から,沼沢火山では,噴火期ごとに流紋岩~デイサイト質マグマで満たされた珪長質マグマ溜りが再生されたことが明らかとなった.マグマ蓄積率を求めると,カルデラ形成噴火では他の噴火期に比べ2~40倍の早さでマグマが蓄積されたと考えられる.また,4.3万年前の惣山噴火以降,珪長質マグマとともに安山岩質マグマが噴出している.先カルデラ期で噴出した安山岩質マグマは,噴火の主体となった珪長質マグマと同じ同位体組成をもち,起源物質は同じであると考えられる.一方で,カルデラ形成噴火で噴出した3種類のマグマは異なる同位体組成をもつことから,地下の多様な場でマグマが発生し,それが地殻中の浅所マグマ溜りに集積したことが示唆され,このことが大規模なカルデラ形成噴火を発生させた原因の一つになった可能性が高い.