地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
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120 巻, 12 号
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特集 地層処分と地質科学(その2)地質環境の長期挙動とサイト調査
総説
  • 大坪 誠, 宮川 歩夢, 塚本 斉, 山元 孝広, 渡部 芳夫
    2014 年120 巻12 号 p. 423-433
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    地層処分の安全評価で必要となる断層活動の長期予測において不確実性を持つ個別事象を抽出し,それらの発生メカニズムおよび時間スケールごとの不確実性を整理した.発生メカニズムについては,活断層の主断層の活動,主断層からの派生断層の形成,および地質断層の再活動の3つの事象に整理された.時間スケールについては,処分場の長期的な安全機能に影響を与える要因を評価する上で処分場の重要な安全機能が時間的に遷移することを踏まえて検討した結果,活動的な場である九州・琉球弧に関しては100年を超えない時間,数百年~数千年,数千年~100万年,100万年~200万年,および数百万年を超える時間の5つの時間スケールでの不確実性に整理された.
論説
  • 安江 健一, 高取 亮一, 谷川 晋一, 二ノ宮 淳, 棚瀬 充史, 古澤 明, 田力 正好
    2014 年120 巻12 号 p. 435-445
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,侵食速度の指標として,環流丘陵を伴う旧河道(以下,環流旧河谷)に着目した.環流旧河谷は,分布が乏しい流域があるものの,日本列島の各地に分布し,様々な比高を持つことから,侵食速度を算出する際の有効な指標になると考えられる.この環流旧河谷を用いた事例の研究を,熊野川(十津川)の中流域において行った結果,旧河床堆積物を覆う角礫層は,赤色化していることから最終間氷期以前の堆積物と考えられ,旧河床堆積物の離水年代は12.5万年前かそれより古いと考えられる.角礫層に含まれるK-Tz起源の粒子は,角礫層の堆積時に降下し,希釈されたものであり,角礫層を覆う表土に含まれるK-Tz起源の粒子は角礫層の離水後に斜面から再移動したものと解釈すれば,赤色化に基づく角礫層の年代観に矛盾はない.この離水年代と旧河床堆積物の現河床からの比高から算出した下刻速度は,約0.9 m/kyかそれより遅い可能性がある.このように,環流旧河谷は,河川の上流や西南日本などの内陸部における河川の下刻などの侵食速度の指標になるとともに,隆起速度を推定する際の有効な指標になる可能性がある.より確度の高い侵食速度の算出には,環流旧河谷に分布する旧河床堆積物や斜面堆積物などを対象とした年代測定が今後の課題である.
  • 近藤 浩文, 鈴木 浩一, 長谷川 琢磨, 濱田 崇臣, 吉村 公孝
    2014 年120 巻12 号 p. 447-471
    発行日: 2014/12/15
    公開日: 2015/05/19
    ジャーナル フリー
    電中研横須賀地区の実証研究では,高レベル放射性廃棄物等の地層処分地の選定調査において,深部地質環境を地表から調査するための主要な技術であるボーリング調査,地表物理探査に対し,地質環境の条件に応じた適用性を確認することを目的として,当該地点に分布し互いに地質・岩盤性状の異なる新第三紀の地層群(三浦層群と葉山層群)を対象に,2006年度以降段階的かつ体系的な調査を実施してきた.本論では,横須賀地区で2010年度までに実施した一連の調査結果を基に,沿岸域堆積軟岩地点を例として,調査範囲が狭小などの調査実施上の制約の中で,調査段階に応じた地質環境モデルの更新に伴い,調査・解析結果の整合性や不確実性の確認を実施することにより,適用した調査手法の有効性について検討を行った.その結果に基づき,地質環境の条件や調査段階に応じた調査手法選定の考え方,および地質環境モデルの信頼性向上のための課題と方策を提示する.
口絵
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