地質学雑誌
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122 巻, 5 号
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論説
  • 三宅 明, 蛭川 孝信, 佐藤 真希, 田口 知樹, 鈴木 和博, 仲井 豊
    2016 年122 巻5 号 p. 173-191
    発行日: 2016/05/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    愛知県足助南東部地域には領家変成岩類に巨大な伊奈川花崗閃緑岩体が貫入している.貫入部付近の伊奈川花崗閃緑岩のCHIMEモナズ石年代測定を実施したところ,以前に測定されていた別の地点の年代にほぼ一致し(83.3±1.3Ma),巨大な岩体はほぼ同時に固結したという解釈を支持する結果になった.伊奈川花崗閃緑岩体の南東側に分布する変成岩類を地質学的・岩石学的に調査した結果,(1)変成分帯の配列,(2)泥質岩中の紅柱石仮像中の柱状珪線石の出現分布,(3)ミグマタイトの分布,はいずれも伊奈川花崗閃緑岩に近いほど高温の変成作用を経験したことを示した.接触変成帯の水平幅は約8kmに達し,花崗岩からの垂直距離は約5kmに及ぶ.このような広大な接触変成帯が形成されたのは,伊奈川花崗閃緑岩体の熱容量が大きかったことに加えて,新期花崗岩類に関係するマグマ活動によって,中部地方領家帯における地温勾配が高くなっていたことが重要な要因であったと解釈した.
  • 富山県小矢部市田川周辺の大桑層産軟体動物群の検討を通じて
    金子 敦志, 天野 和孝, 佐藤 時幸, 葉室 麻吹, 葉室 俊和
    2016 年122 巻5 号 p. 193-206
    発行日: 2016/05/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    前期更新世の環境変動が軟体動物群にどのような変化を与えているのかを検討すべく,本州中部の富山県小矢部市周辺の大桑層産軟体動物群を検討した.石灰質ナンノ化石に基づくと,大桑層は前期更新世の約2.02Maから約0.99Maまでに堆積したことが判明した.大桑層の12産地より169種の軟体動物化石が識別された.また,大桑層下部および上部の下部ではほぼ下部浅海域であり,上部の中部~上部ではほぼ上部浅海域に堆積したことも明らかとなった.大桑・万願寺動物群特徴的絶滅種の時空分布を検討したところ,約1.2Maの寒冷化によりMizuhopecten yessoensisLirabuccinum japonicumTachyrhynchus asatoiが,約1.0Maの温暖化によりPecten albicansが出現した.また,こうした寒冷化や温暖化に伴い,大桑・万願寺動物群の種多様性が増加したことが明らかとなった.
  • 内野 隆之, 鈴木 紀毅
    2016 年122 巻5 号 p. 207-222
    発行日: 2016/05/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    志摩半島の黒瀬川帯に分布する珪長質凝灰岩および凝灰質泥岩からAlbaillella cavitataA. protolevisFollicucullus scholasticusTriplanospongos musashiensisなどの後期ペルム紀(ウーチァーピンジアン期~チャンシンジアン期前半)放散虫化石を見出した.両岩石を含む地層は,分布幅が約30mで,非変形の整然相を示す.この地層はこれまで前期白亜紀前弧海盆堆積物からなる松尾層群の一部と考えられていたが,後期ペルム紀の整然層であることが判明した.志摩半島を含めた紀伊半島におけるペルム紀整然層の認定は初であり,その分布は九州から四国を経由して志摩半島まで延長することが明らかになった.志摩半島の後期ペルム紀整然層は,四国の土居層群,市ノ瀬層群の一部,九州の球磨層の一部,小崎層の一部と年代対比できる.
  • 里口 保文
    2016 年122 巻5 号 p. 223-229
    発行日: 2016/05/15
    公開日: 2016/08/01
    ジャーナル フリー
    九州地方の北部には,極狭い範囲に分布する陸水成層の津房川層がある.この地層は,ゾウ類をはじめとする多くの重要な脊椎動物化石を有するが,詳細な堆積年代は明らかになっていない.本研究では,同層およびその堆積時期が重なるとされる宮崎層群それぞれのテフラ層について,その層相および性質を明らかにし,広域対比の検討を行った.その結果,津房川層の森1火山灰層と田ノ口テフラ層が,宮崎層群のNKT-2とNKT-13テフラ層にそれぞれ対比された.宮崎層群の堆積年代と対比されたテフラ層から,津房川層最下部の年代は約3.5Maと推定される.
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