地質学雑誌
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125 巻, 12 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
論説
  • 中西 諒, 岡村 聡
    2019 年 125 巻 12 号 p. 835-851
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

    北海道太平洋沿岸西部は,17世紀の地震・津波の規模や波源を明らかにする上で重要な地域である.そこで歴史記録に残っている1640年の駒ヶ岳噴火にともなう山体崩壊津波の規模を推定するために,内浦湾から胆振海岸西部にかけて17世紀のイベント堆積物の分布を明らかにした.イベント堆積物の粒度・鉱物組成は海浜周辺の砂とよく類似しており,内陸に向け薄層化・細粒化・軽量化を示す.本砂層は,内浦湾から登別にかけて1640年の駒ヶ岳噴火テフラ(Ko-d)によって覆われていることから,1640年の駒ヶ岳山体崩壊にともなう津波堆積物であると判断される.現世の津波堆積物調査結果を基に各調査地点の津波堆積物分布における浸水深1mが妥当かを評価し,数値シミュレーションを用いて1.20km3を超える山体崩壊物流入量を再現し遡上高を求めたところ,内浦湾沿岸から白老周辺までは,両者の推定遡上高が調和的な結果となった.この津波規模は約Mt 7.9-8.2と見積もられる.

  • 角和 善隆, Zhang Naizhong, 松本 良, 戸丸 仁, 石田 直人, 茂手木 竜也
    2019 年 125 巻 12 号 p. 853-865
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

    低温で安定な炭酸塩鉱物であるイカアイトが,日本海東縁部で採取した堆積物コアから発見された.イカアイトを伴う堆積物は,シルトか砂の葉理を伴う暗色の泥からなり,生痕があるか無構造である.粒状の集合体が脈となっている場合と,最大10cmを越える長さの大型の結晶をなす場合がある.イカアイトは現在の海底面下10mより浅い部分で発見されているが,間隙水の分析から,硫酸塩・メタン漸移帯(SMT)の内部,多分2mから5m程度の深さで形成されたと考えるのが妥当である.イカアイトの炭素同位体比の分析値からは,微生物によるメタン酸化に起源をもつ軽い炭素の影響が,今回発見されたイカアイトにあったことを示唆し,SMT内で形成されたことと矛盾しない.イカアイトの最新の形成年代は9,700年前以降である.大型結晶のイカアイトは,メタン流量が増大するか,70m程度埋没することで地温が上昇して不安定となり,方解石に交代され,玄能石になるだろう.

  • 羽地 俊樹, 山路 敦, 仁木 創太, 平田 岳史
    2019 年 125 巻 12 号 p. 867-785
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

    近畿のグリーンタフ地域に分布する下・中部中新統の八鹿層と豊岡層の年代は八鹿層最下部が21.5Ma頃,豊岡層の上部が17~16.5Ma頃としかわかっていない.その間に500万年もの堆積年代が不明な期間あった.しかしその期間には,古地磁気回転と大規模な海進が起こったとされており,この堆積年代の欠如を埋めることがテクトニクスを論ずる上で重要な課題であった.そこで我々は,但馬妙見山東方の八鹿層中部から新たに見出した凝灰岩でジルコンU-Pb年代測定を行った.25粒子の測定結果のうち,統計的に除外された1粒子を除く24粒子から,19.38±0.23Maの加重平均値を得た.この結果,八鹿層の堆積と安山岩質火山活動は,19.4Ma以降まで続いたことが明らかとなった.また,本地域の古地磁気回転と海進の時期は19.4~16.5Ma頃に制約され,他のグリーンタフ地域と大差ない時期に起こったことになる.

報告
  • 中川 登美雄, 佐野 弘好, 上松 佐知子, 指田 勝男, 渡辺 幸雄
    2019 年 125 巻 12 号 p. 877-884
    発行日: 2019/12/15
    公開日: 2020/03/26
    ジャーナル フリー

    This paper describes Upper Triassic limestone clasts of the polymictic limestone conglomerate (Imogadaira Limestone) of the Mino Belt in the Nanjo Mountains, Fukui Prefecture, central Japan. The Imogadaira Limestone occurs as an isolated block in the Middle Jurassic mélange unit in the upper reaches of the Imogadaira River, Nanjo Mountains. The formation exhibits a prevailing conglomerate fabric, characterized by dense packing of limestone clasts within a sparse matrix. The Imogadaira Limestone has a polymictic clast association, dominated by Permian limestones with lime mudstone and limestone clasts containing thin-shelled bivalves. Neither terrigenous clastic grains nor rock fragments occur in the Imogadaira Limestone. Late Triassic conodonts and Late Triassic and Early Jurassic radiolarians were extracted from whole-rock samples of the Imogadaira Limestone. Further examination revealed that the Late Triassic conodonts and radiolarians occurred within limestone clasts containing thin-shelled bivalves.

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