地質学雑誌
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126 巻, 12 号
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論説
  • 於保 幸正, 平山 恭之, 河本 直美, 石川 千穂
    2020 年 126 巻 12 号 p. 663-678
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/03/26
    ジャーナル フリー

    岡山県真庭市久世町から苫田郡鏡野町を経て津山市に分布するジュラ系智頭コンプレックスについて小構造を調べた結果,このコンプレックスにはテクトニック・メランジュに由来する岩石が含まれていることが明らかとなった.変形構造の解析から4つのステージの変形が識別できた.ステージ(1)では層に平行な伸びと展張割れ目が形成され,ステージ(2)では層にほぼ平行な単純剪断による非対称な構造とblock-in-matrix構造の形成およびそれに伴う細粒化が起きている.砂岩のクラストの中で細粒化した箇所では,粒界すべりに伴って変形が進んでいる可能性がある.ステージ(3)では層に垂直に働く純粋剪断によってスレートへき開が形成され,板状鉱物の再結晶による平行配列,放散虫の扁平化および黄鉄鉱の周辺で対称的なプレッシャーシャドウが形成されている.ステージ(4)ではスレートへき開を曲げるような圧縮場でちりめんじわへき開が形成されている.ステージ(2)で形成されたY-P複合面構造から,日本海の形成に伴う西南日本の回転を考慮して,上盤が北北東に移動する剪断センスが得られた.

  • 村岡 やよい, 大和田 正明, 今岡 照喜, 亀井 淳志, 宮崎 一博
    2020 年 126 巻 12 号 p. 679-695
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/03/26
    ジャーナル フリー

    北部九州に産する花崗岩類は小倉-田川構造線付近を境に特徴が異なる.特にSr含有量は顕著に異なり,東側のものは低く,西側のものは高い.本研究では構造線の東側に産する平尾花崗閃緑岩のマグマ過程を考察するとともに,近傍に産する高Sr岩体である牛斬山花崗閃緑岩との比較を行い,低Sr花崗岩類の成因について考察する.

    Sr含有量の変化の要因には,Sr含有量の異なるマグマの混合,起源物質の組成の差,マグマ貫入時の基盤物質との同化,結晶分化作用および部分溶融時の条件の差の5つの可能性が考えられる.結晶分化作用による組成変化やSr-Nd同位体初生値などを比較検討した結果,部分溶融時の条件の差がSr含有量に影響している可能性が示された.また,部分溶融実験の結果や斜長石の組成から,低Sr花崗岩類は部分溶融時の圧力が高Sr花崗岩類と比べて低かったことが推察される.

  • 古川 邦之, 西本 昌司, 金丸 龍夫, 和田 穣隆, 新正 裕尚
    2020 年 126 巻 12 号 p. 697-712
    発行日: 2020/12/15
    公開日: 2021/03/26
    ジャーナル フリー

    岐阜県可児盆地に分布する中新統の瑞浪層群中村層には,幅20cm以内の脈状岩石が局所的に複数形成されている.脈状岩石は,中心の砕屑部と両側の緻密部から構成される.これらの地質調査と化学分析,XRD分析を行ったところ,熱水流体による水圧破砕で形成されたと考えられる脈状砕屑部に,主にオパールCTの極微細な結晶で構成された淡褐色(Lm)と濃褐色(Dm)を呈する2種類の物質が沈殿したものであることが示された.Lmは軽石片の化学成分が溶出した流体を起源とし,Dmは氾濫原の還元的環境で形成された火山岩由来の成分を溶解した酸性流体が起源であると考えられる.Lmを沈殿させた流体は,砕屑部と接する母岩である凝灰質砂岩および泥岩の粒子間にも浸透,沈殿した.それにより砕屑部の両側に緻密部が形成された.緻密部は顕著な変質を受けていないため,砕屑部に流体が定置した後,母岩との間で水-岩石反応が進行する前に沈殿が起き固化したと考えられる.

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