地質学雑誌
Online ISSN : 1349-9963
Print ISSN : 0016-7630
ISSN-L : 0016-7630
107 巻, 7 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 野澤 暁史
    2001 年107 巻7 号 p. 413-431
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    沖浦カルデラは, 東北日本八甲田地熱地域に位置する15×10 kmのカルデラである.およそ50 km3のカルデラ埋積堆積物は大規模~小規模な火砕流堆積物, 土石流堆積物, そしてデイサイト溶岩からなり, 少なくとも18ユニットに分けられる.カルデラ埋積堆積物には, 上位と下位の火砕流堆積物にいくつかのアバット不整合の関係が認められる.これらのアバット面は火砕流噴出によってほぼ同時に形成された断層崖に相当すると推定される.大規模な火砕流ユニットの流下方向を検討した結果, カルデラ中央部または西部にあるカルデラ内部断層付近で噴火が生じたと推定される.重力測定および試錐調査のデータ, そして火砕流の噴出と同時に形成されたカルデラ内部断層の存在からカルデラ底が幾つかの区画に分離していることがわかる.このようなカルデラの地下構造はカルデラ内部の複数の火口よりいくつかの火砕流が噴出することによって形成された.
  • 長岡 信治, 奥野 充, 新井 房夫
    2001 年107 巻7 号 p. 432-450
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    100~30 kaにおいて姶良カルデラでは, 日木山降下スコリア堆積物(103~95 ka), 金剛寺火砕サージ堆積物, 福山降下軽石堆積物(95~86 ka), 岩戸テフラ(60 ka, )大塚降下軽石堆積物(32.5 ka), 深港テフラ(31 ka), 毛梨野テフラ(26.5 ka)の7層のテフラが認められる.これらの噴火口は, カルデラの東半部に集中している.これらのテフラの噴出と並行して敷根安山岩などの溶岩も流出しており, 平均噴火間隔は7500年に1回となる.27 kaの姶良火砕噴火直前の32.5~30 kaでは噴火間隔は約1000年と短くなるが, 噴出量は逆に減少する傾向にある.姶良カルデラ火山は100 ka以降は活動期にあたる.この100~30 kaの噴火活動は, 最新の活動期の前半にあたっている.
  • 加 三千宣, 吉川 周作, 里口 保文, 小倉 博之
    2001 年107 巻7 号 p. 451-459_1
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    岐阜県の深坂湿原で掘削された13 mのコア試料(最終氷期以降)を用いて珪藻分析を行った.珪藻化石群集解析から古環境変遷に関する以下の結果が得られた.最終氷期の3.0~1.2万年前, 水域は主に富栄養の中性~アルカリ性を呈するある程度の開水域をもった池沼を形成していた.その間の2.5~2.4万年前と1.6~1.5万年前には湿性植物が繁茂する高層湿原の池塘あるいは低層湿原を短期間形成していた.池沼を形成していた頃, 水域は比較的低水温であったことが示唆され, 湿原を形成していた時期は比較的高水温であったことが示唆される.これは最終氷期の気温変動と関連しているかもしれない.一方, 1.2~0.4万年前, 水域は湿性植物が繁茂する高層湿原の池塘あるいは低層湿原を形成していた.この時期, 水域は比較的高水温であったと推定され, これは完新世の温暖な気候を反映していると考えられる.本研究で, 気候変化と深坂湿原の形成との密接な関係が示唆された.
  • 山路 敦
    2001 年107 巻7 号 p. 461-479
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    地殻応力の評価は, テクトニクスを理解するうえで鍵になる.また, 応用地質的な価値も高い.ところが, その手法として普及している共役断層による小断層解析は, 間違った答えをだすことが多い.それにかわって, 3次元的応力歪みを許容する小断層解析法がここ30年間に幾つも開発されてきた.新手法の開発とともに適用可能な野外の対象も拡大するので, フィールド調査と方法論的な研究が両輪をなして進んできたわけである.代表的な方法がインバージョンによる応力推定である.しかし, それは複数の応力を記録しているデータセットからそれらの応力を分離する能力にとぼしいが, その能力のある方法の開発も試みられている.未解決の方法論的問題が少なからずあるので, 今後も手法の開発とフィールドへの適用という2面で研究が進展していくだろう.
  • 林 愛明, 李 錫堤, 廖 卿妃
    2001 年107 巻7 号 p. XV-XVI
    発行日: 2001年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    1999年台湾・集集地震(ML 7.3)の際, 車龍埔断層(Chelungpufault)に沿って総延長100Km以上の地表地震断層が現れた(林ほか, 2000; Lin et al. , 2001). この地震は, いわゆるフィリピン海プレートがユーラシアプレートと衝突するところで発生しており, 地震の規模や地震断層変位および地震被害範囲の大きさなどの点で世界中の地震・地質学研究者に注目され, 様々の角度から多くの研究が行われている. 地震直後, 地震断層の構造を調べるため, 台湾中央大学により, 断層沿いに深度50~100mの7本のボーリングが行われた(第1図). ここでは, 明瞭に地震断層を貫通した南部の50m孔(BH-7)の掘削コアに見られる第三系の弱固結の泥岩・砂岩と完新世の段丘砂礫層との境界をなす主断層の剪断帯の産状を紹介する. この剪断帯は, 面状構造(foliation)の発達した断層ガウジと断層角礫から構成される車龍埔断層の主なスリップゾーンであると推定されるので, 今回の地震および最近の地質時代の地震断層運動による変形組織構造が保存されていると考えられる. これらに関する研究を通して, プレート境界の地震断層運動の変形機構や断層運動メカニズムの解明に重要な情報を提供することができると期待される.
feedback
Top