1999年台湾・集集地震(M
L 7.3)の際, 車龍埔断層(Chelungpufault)に沿って総延長100Km以上の地表地震断層が現れた(林ほか, 2000; Lin et al. , 2001). この地震は, いわゆるフィリピン海プレートがユーラシアプレートと衝突するところで発生しており, 地震の規模や地震断層変位および地震被害範囲の大きさなどの点で世界中の地震・地質学研究者に注目され, 様々の角度から多くの研究が行われている. 地震直後, 地震断層の構造を調べるため, 台湾中央大学により, 断層沿いに深度50~100mの7本のボーリングが行われた(第1図). ここでは, 明瞭に地震断層を貫通した南部の50m孔(BH-7)の掘削コアに見られる第三系の弱固結の泥岩・砂岩と完新世の段丘砂礫層との境界をなす主断層の剪断帯の産状を紹介する. この剪断帯は, 面状構造(foliation)の発達した断層ガウジと断層角礫から構成される車龍埔断層の主なスリップゾーンであると推定されるので, 今回の地震および最近の地質時代の地震断層運動による変形組織構造が保存されていると考えられる. これらに関する研究を通して, プレート境界の地震断層運動の変形機構や断層運動メカニズムの解明に重要な情報を提供することができると期待される.
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