北大助教授佐々保雄學士は釧路炭田で採集された夥しく多くの蜆科化石を筆者の研究に惠與された。大部分が同學士の舌辛層産で, 又少數ではあるが大曲層基底からも産出してゐる。保存は必ずしも良好とは謂へないが, 蝶番板に就ては左右兩殻共齒科醫々療機を使用して檢出々來た。釧路炭田からは鈴木好一學士に依りCorbicula sitakaraensis SUZUKI が知られてゐる。同標本は唯1個で, 外形の保存は良好であるが, 内面は餘り良く分らない。筆者の手元の標本は全部同1種と見做される。又鈴木學士のsitakaraensis と區別出來ない。蝶番の樣子から觀ると掲載本種はBatissaの範疇に入る。即ち齒は普通のCorbiculaと同樣に3個の主齒と, 前後の鑪状側齒とを具備してゐるが, 前側齒は後側齒の長さの約2/3で, 後者は前者より遙かに短い。又靭帶溝は比較的大きく, nymphは稍突出してゐるので靭帶は恐らく後方にとび出して居るだらうと推測する。筆者は最近樺太の内淵統からsitakaraensis型のBatissa 2種を記載したが, 其の中の1種は本種に屬してゐる。此の事實は釧路炭田の含炭第三系と樺太の内淵統との對比上からも, 又兩層に南方型蜆科化石要素を含む點からも重要な意義を有してゐる。尚ほ本種は最近記載された石狩炭川産のBatissa muratai NAGAO and OTATUME 及び留萌炭田小平蘂産のBatissa nisikawai OTATUME とは大に外形を異にしてゐる。
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