地質学雑誌
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105 巻, 9 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 河合 小百合, 三宅 康幸
    1999 年 105 巻 9 号 p. 597-608
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    最終氷期の指標としての重要性が指摘されている姶良Tnテフラの粒度・鉱物・斜方輝石の化学組成を調べ, それらの地域差をまとめ, 本テフラの運搬・堆積過程を考察した.本テフラのうち最も広域にわたって追跡されるAT 3層・4層は, 噴出源から遠い地点ほど, 粗粒物質の割合・最大頻度粒径・重鉱物含有量・全重鉱物に対する不透明鉱物の割合が, テフラ運搬過程で働く重力淘汰に従って小さくなる.ただし, 大山などの他火山起源のテフラの混入の重鉱物組成への影響があること, 細粒な火山灰ほど, ある距離より遠方では重力淘汰の影響が小さいことなどが指摘される.火山豆石などとして凝集して落下することは, ATの運搬・降下プロセスに大きな影響を与えているとは考えられない.AT 3層と4層は同じ気象条件のもとで問隙をおかず短期間に堆積したと考えられる.
  • 林 成多
    1999 年 105 巻 9 号 p. 609-624
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    新潟県三島郡和島村の大武遺跡において, 泥炭質堆積物からなる完新統から8種のネクイハムシ類を含む多様な甲虫化石群集が得られた.ネクイハムシ類について化石群集の産状を7つに区分した層相を基に検討した結果, 種構成と層相には対応関係があることがわかった.さらに, 新潟県を中心に東日本でのネクイハムシ類の現生調査から生息環境をまとめた結果, ネクイハムシ類が示す古環境と層相などから推定される古環境はよく一致し, ネクイハムシ類の化石群を解析することにより詳細な水辺~湿地環境を推定できること明らかにした.ネクイハムシ化石群の解析結果や他の化石, 産出層準の層相から, 大武遺跡の埋没谷は流水の影響下で砂質堆積物がまず堆積し, その後に浮葉植物群落を伴う止水域が出現した.止水域はやがて湿性植物が繁茂する湿地となった.この湿地は層準により止水域を伴う場合や, スゲ類やヨシが優占するなど環境が変化したという, 古環境変遷が推定される.
  • 山下 智士, 周藤 賢治, 垣原 康之, 加々美 寛雄
    1999 年 105 巻 9 号 p. 625-642
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    北部北海道オホーツク海側の遠軽地域には, 7-9 Maの火山活動によって形成された大量の玄武岩(留岡(TM)玄武岩, 千代田-隠沢(CK)玄武岩)と流紋岩(岩松(WK)流紋岩)および少量の安山岩(栄野(SK)安山岩)を産する.玄武岩類はBABBに似た地球化学的特徴をもつ.TM玄武岩以外の火山岩は主要・微量元素組成の特徴から2つのタイプに区分される.高いSrIと低いNdIをもつWK-I流紋岩は, 地殻物質の部分溶解によって, SK-I安山岩は, CK-I玄武岩質マグマとWK-I流紋岩質マグマを含む複数の流紋岩質マグマとの混合によって形成された可能性がある.一方, SK-II安山岩とWK-II流紋岩は, CK-II玄武岩質マグマからの結晶分化作用によって形成された.千島海盆の拡大に伴って上昇したアセノスフェアから生じた玄武岩質マグマの添加により, 地殻が部分溶解して流紋岩質マグマが生成され, さらに両マグマの混合によって安山岩が形成されたことを議論した.
  • 小松 俊文
    1999 年 105 巻 9 号 p. 643-650
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    堆積相解析により, 海進期の下部白亜系有田層は4つの堆積相, 上部~中部外浜, 下部外浜, 内側陸棚, 外側陸棚相に分けられる.一方, 豊富に産出する二枚貝化石は3つの化石群, Pterotrigonia pocilliformis, Nanonavis yokoyamai, Periploma (?) monobensis化石群で構成され, それぞれ下部外浜, 内側陸棚, 外側陸棚の堆積相と対応する.これらの二枚貝化石群を, 自生的な産状や合弁個体に注目して堆積相と比較することによって, 二枚貝化石の生息環境が推定される.
  • 亀高 正男
    1999 年 105 巻 9 号 p. 651-667
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    秋吉帯を被覆する上部三畳系美祢層群の後背地解析を行った.砂岩は岩石片に富むアレナイトで, 岩石片は平原層では堆積岩類が, 桃木・麻生層では火成岩類が卓越する.砕屑性ザクロ石は, パイロープに富むアルマンディンからアルマンディンの組成の粒子が多く, 桃木層のみグランダイトが含まれる.砕屑性クロムスピネルはMg#=0.40~0.65,Cr#=0.40~0.60の粒子が多い.供給源となった岩体の候補として, 堆積岩は秋吉帯の砕屑岩が, 蛇紋岩・クロムスピネルは大江山オフィオライト帯の超苦鉄質岩や長門構造帯の蛇紋岩があげられる.美祢層群の砕屑物は上部三畳系の成羽層群と類似している.美祢層群の後背地は, 秋吉帯の砕屑岩類から, 東アジアの大陸縁辺部に発達した火成弧の岩石へと変化した.現在美祢地域近辺に火成弧の岩石は分布しておらず, これらの岩石が削剥されていないならば, 三畳紀後期以降に秋吉帯が水平的に大きく移動したことが推定される.
  • 中嶋 健, 檀原 徹
    1999 年 105 巻 9 号 p. 668-671
    発行日: 1999/09/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Results of fission-track datings of tuffs and a lava from sedimentary units in the Yuda Basin, Iwate Prefecture range from 14 to 3.5 Ma.Therefore, the Kotsunagizawa, Kurosawa and Hanayama Formations distributed in the Yuda Basin are Middle Miocene to Pliocene in Age.
  • 重田 康成, 前田 晴良, 棚部 一成, Yuri D. Zakharov, Alexander M. Popov, Vladimir V. ...
    1999 年 105 巻 9 号 p. XVII-XVIII
    発行日: 1999年
    公開日: 2010/11/26
    ジャーナル フリー
    カムチャッカ半島の北部には, 動物化石を豊富に含む海成白亜系が広く分布する. 全層厚は10,000mに達し, 泥岩やタービダイトの砂岩泥岩互層を主体とする下部白亜系と, 砂岩・礫岩などの粗粒岩を主体とし岩相の側方変化が著しい上部白亜系より成る. ペンジナ湾東海岸には大規模な海蝕崖が続き, ほぼ白亜紀全体にわたる層序が見事に露出する. 下部白亜系は化石の産出に乏しいが, 上部白亜系の泥質部からはアンモナイトやイノセラムスが多産する. タロフカ川下流域からはアラレ石を保存し真珠光沢を示す化石も産出する. アルビアン階やセノマニアン階下部の化石群の中には, アラスカや北米内陸部の化石と深い類縁関係を持つものが含まれる. セノマニァン階中部以降の化石群はサハリンや北海道と高い共通性を示すが, 多様性は幾分低い傾向にある.
    筆者らによるペンジナ湾東岸地域(1998年)とタロフカ川流域(1999年)の地質調査(基盤研究A-2, 国11041109, 代表:棚部一成)から白亜紀アンモナイトを紹介する.
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