地質学雑誌
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116 巻, 3 号
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論説
  • 田沢 純一, 三宅 幸雄, 新川 公
    2010 年 116 巻 3 号 p. 127-133
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    飛騨外縁帯福地の一の谷層下部(Bashkirian)から腕足類Purdonella tschernyschewiformis(Ozaki)の産出が確認された.本論文では,P. tschernyschewiformisを含めたPurdonella属のすべての種について,層位的(時代的)・地理的分布をまとめ,古生物地理学的検討を行った.その結果Purdonellaが後期石炭紀~前期ペルム紀のボレアル型あるいは両極型(非熱帯型)腕足類であり,P. tschernyschewiformisは中国東北部・北西部の上部石炭系からの産出記録があることが判明した.以上のデータをもとに,後期石炭紀の頃,福地を含む飛騨外縁帯は,北中国(中朝地塊)東縁の大陸棚であったと推定される.
  • 松原 典孝, 天野 一男
    2010 年 116 巻 3 号 p. 134-150
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    南部フォッサマグナ東部を構成する丹沢地塊には,古伊豆-小笠原弧所属の海洋性島弧を形成していた中新世の水中溶岩類や水中火山砕屑岩類が広く分布している.この島弧火山活動に伴って形成されたペペライトが随所で認められる.ペペライトの存在は堆積作用と火成活動が同時に起こっていた証拠として極めて重要である.本論文では丹沢地塊の4箇所において,4つの岩相のペペライトを記載し,古火山体中での位置づけと,その形成メカニズムを推定した.ペペライトは火山岩片の形状から流体状のペペライト(fluidal peperite)とブロック状のペペライト(blocky peperite)に分けられる.従来,ペペライトのタイプは未固結堆積物の粒径に左右されるとされてきたが,丹沢地塊においては必ずしも堆積物の粒径に左右されてはいないことが分かった.これらのペペライトは,丹沢地塊がかつて所属した古海洋性島弧の火山体中核部附近において,水中火山活動に伴って形成されたものと考えられる.
  • 大槻 憲四郎
    2010 年 116 巻 3 号 p. 151-158
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    2008年6月14日,岩手・宮城内陸地震(MJ7.2)が起こった.これは岩手県と宮城県の境界地域での北北東-南南西方向の逆断層運動によるもので,甚大な被害をもたらした.地震の後,震源地域やその周辺にある温泉について,地震前後の変化を聞き取り調査した.地震直後の湯量や色の変化は,震源断層下盤より上盤地域での方が顕著であった.注目すべき事は,震源の真上やその近傍にある祭畤温泉,真湯温泉,および湯浜温泉においては,地震に先立って~5℃の湯温上昇があったこと,同様に余震域南端に位置する川渡温泉と鳴子温泉の一部では,湯量が顕著に増加したことである.地震に先立つこれらの変化は明瞭であったにもかかわらず,震源直上近傍に設置されていた傾斜計とGPSでさえ,地震の前兆を検出できなかった.この事実は,本震に先立つ地殻の変形と地震直前予知の戦略に対し,重要な示唆を与えよう.
  • 桑原 希世子, 佐野 弘好, 江崎 洋一, 八尾 昭
    2010 年 116 巻 3 号 p. 159-173
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    岐阜県舟伏山地域美濃帯のペルム系深海珪質岩相,初鹿谷層(下部~上部ペルム系上部)から下部三畳系(Spathian)のチャート・珪質粘土岩を見出した.中部ペルム系上部(Follicucullus scholasticus-Follicucullus ventricosus帯)~ペルム系最上部(Neoalbaillella optima帯)は,灰色チャートを主とし,上部に黒色チャート,緑灰~黒色珪質粘土岩を含む.下部三畳系上部は灰~暗灰色チャートが優勢で,黒色チャートと灰,黒~灰緑色珪質粘土岩を含む.ペルム系から三畳系にかけての連続層序はまだ得ていないが,今回見出した下部三畳系上部の珪質岩は,中部ペルム系上部から連続する深海珪質岩の一部を構成していたと考えられる.本研究の結果は,パンサラッサ海の海山を基盤とする深海珪質岩の堆積がペルム紀古世後期から三畳紀古世後期まで連続していた可能性を示している.
短報
  • 二宮 崇, 谷口 翔, 下山 正一, 宮田 雄一郎, 松田 博貴, 山中 寿朗, 市原 季彦
    2010 年 116 巻 3 号 p. 174-177
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/13
    ジャーナル フリー
    We re-examined the age and depositional environment of the Ebishima Limestone in the northernmost Tsushima Islands, which had previously been interpreted as Pliocene shallow-marine deposits. Limestone that overlies Miocene siliciclastics consists mainly of well-sorted marine bioclasts and calcite cement. The occurrence of high-angle planar cross-stratification and fossil land snails indicates deposition in a coastal sand-dune environment. The cement was meteoric, as indicated by the low values of carbon and oxygen isotopes (-5.7 and -4.5 per mil PDB, respectively) and the absence of sulfides. Radiocarbon analyses of bulk inorganic carbon yield an age of 41,497±574 cal. BP., which is possibly influenced by the meteoric calcite cement. Therefore, the carbonate dunes were deposited prior to 40 ka. Considering the environment of subsidence at the Tsushima Islands, the coastal dunes represented by the Ebishima Limestone were probably deposited during a period of high sea level in the Middle-Late Pleistocene.
口絵
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