地質学雑誌
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最新号
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論説
  • 相山 光太郎, 金折 裕司
    2024 年 130 巻 1 号 p. 119-138
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/17
    ジャーナル フリー

    近年,断層破砕帯を用いた断層活動性評価手法を開発するため,後期更新世以降活動している活断層と,少なくとも後期更新世以降活動していない非活断層で,それぞれ調査・研究が実施されてきている.本研究では,山口市阿東生雲東分渡川に分布する活断層と非活断層を構成する断層ガウジと滑り面の微細構造と,熱水粘土脈の構成鉱物を偏光顕微鏡,XRD,SEM,およびSTEMを用いて解析・比較した.なお,本研究で解析した活断層は,既往研究で長門峡断層と呼ばれている.偏光顕微鏡解析の結果,ガウジ破片(Reworked fault gouge)が活断層の断層ガウジに見つかったが,非活断層の断層ガウジには見られなかった.SEMおよびSTEM解析の結果,非活断層の最新滑り面はランダム配列したイライトに覆われ,重晶石群に横断されていた.このことは,非活断層がこれらの鉱物の生成後に活動していないことを示している.一方,活断層の最新滑り面には鉱物のランダム配列や横断は見られなかった.

レター
論説
  • 酒井 亨, 亀高 正男, 青木 和弘, 島田 耕史, 高木 秀雄
    2024 年 130 巻 1 号 p. 89-109
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/04/17
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data
    断層破砕帯には多様な姿勢の剪断面が形成されている.それらの周囲に発達した複合面構造から各剪断面の剪断センスを推定できるが,それらが同じ活動ステージ(応力)で形成されたものか否かは識別ができない.本研究ではこの課題を解決するために,複合面構造の観察と応力逆解析を組み合わせて,塩ノ平断層と車断層の運動と応力の履歴の解明を試みた.結果として,塩ノ平断層において5つ,車断層において2つの活動ステージを復元した.活動ステージの時期を特定する年代指標が少ないものの,先行研究で示された断層周辺の古応力場や造構運動と矛盾しない結果が得られた.断層スリップデータの取得領域の粗密によって一部の応力は復元できない可能性はあるが,包括的な破砕帯形成史の解明を目的とした研究において,本手法は一定の有効性が示されたと言える.
フォト
総説
  • 小菅 正裕
    2024 年 130 巻 1 号 p. 63-85
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー
    低周波地震とは,地震の規模から期待されるよりも有意に低周波の震動が卓越する地震で,通常の地震が発生しない深度で発生することから,その発生メカニズムに関心が持たれてきた.本論では,世界各地で観測された低周波地震の特徴をまとめ,発生メカニズムに関係する観測と解釈を概観する.日本列島の低周波地震は活火山周辺で多く発生するが,非火山地域での発生も少なくない.低周波地震の発震機構解は,ダブルカップルのほか体積変化成分やCLVD 成分を含む場合もあって多様である.低周波地震発生域の地震波速度構造から,発生には流体が寄与すると考えられてきた.最近,日本での低周波地震は地殻浅部においても発生していることと,通常地震に近接して発生する場合があることが明らかになった.これらの観測事実と発震機構解の多様性はせん断開口クラックモデルによって説明が可能で,低周波地震の発生には間隙流体圧が重要な役割を果たすと考えられる.
レター
論説
  • 別所 孝範, 鈴木 博之, 山本 俊哉, 檀原 徹, 岩野 英樹, 平田 岳史
    2024 年 130 巻 1 号 p. 35-54
    発行日: 2024/03/16
    公開日: 2024/03/16
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data
    紀伊半島南部海岸にはさまざまな大きさの砂岩角礫を含む泥岩(田子含角礫泥岩層,通称「サラシ首層」)が分布する.この地層の形成については泥火山説と海底土石流堆積物説がある.本層は下位より「大ザラシ」,「富山礫岩」,「小ザラシ」の三つのユニットに分けられる.「大ザラシ」中の砂岩角礫は長石質ワッケ~アレナイトで牟婁付加シークェンス(AS)の砂岩組成に一致する.砂岩角礫のU–Pb年代値は32~62 Maを示し,これらは牟婁AS起源と推定される.「大ザラシ」中の異地性ブロックである成層礫質砂岩は27 Ma(後期漸新世)で,牟婁AS(前期漸新世)よりも若く.この事実はダイアピル説とは相容れない.「大ザラシ」は地層としての特徴を持ち,海底土石流堆積物と考えられる.「サラシ首層」は前弧海盆内の一部でスラストにより持ち上げられた付加体の隆起帯から,陸側の浅海域に堆積した付加体崩壊堆積物ならびに浅海堆積物であると推定される.
  • 中澤 努, 長 郁夫, 小松原 純子, 坂田 健太郎
    2024 年 130 巻 1 号 p. 17-33
    発行日: 2024/01/24
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data
    東京都区部の武蔵野台地を刻む神田川(善福寺川)および古川(渋谷川)沿いにおいて常時微動観測を実施した.下流部の谷底低地では軟弱な沖積層が厚く,平均S波速度は低い値を示した.H/V スペクトルのピークが低周波数帯域(1.5~1.6 Hz 付近)にみられた地域は,1923年関東地震で被害が著しかった地域にほぼ一致した.一方で中・上流部では,谷底低地よりも,むしろその周辺の関東ローム層や東京層の軟らかい泥層が分布する台地のほうが軟らかい地盤特性を示した.つまり下流部と中・上流部で,台地と低地の地盤特性の相対的関係は逆転する.
  • 加瀬 善洋, 渡辺 真人, 林 圭一, 廣瀬 亘, 檀原 徹, 岩野 英樹, 平田 岳史
    2024 年 130 巻 1 号 p. 1-15
    発行日: 2024/01/24
    公開日: 2024/01/24
    ジャーナル フリー
    J-STAGE Data
    北海道東部,女満別(めまんべつ)およびその周辺地域に分布する下部中新統常呂(ところ)層,中部中新統美都(みと)層下部,鮮新統美岬(みさき)層を構成する凝灰岩・凝灰質砂岩から抽出したジルコンのFT・U–Pb 年代を測定した.常呂層および美岬層から,それぞれ10.8 ± 0.9 Ma(FT)・11.9 ± 0.2 Ma(U–Pb),8.2 ± 0.4Ma(FT)・8.7 ± 0.1 Ma(U–Pb)の後期中新世を示す年代値が得られた.構成岩相や地質分布を考え合わせると,前者は登以加(といか)層,後者は網走(あばしり)層に帰属される地層である.美都層下部からは中期中新世(FT:13.4 ± 0.8 Ma, U–Pb:12.4 ± 0.2 Ma)の年代が得られ,本層が網走層に対比されるという従来の解釈を支持する.本論の結果により,岩相対比に基づき行われてきた中新統~鮮新統の層序は大きく見直 されることとなった.今後,本地域を含む北海道東部の広域的な層序の再検討が必要である.
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