地質学雑誌
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108 巻, 11 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 平野 直人, 奥澤 康一
    2002 年 108 巻 11 号 p. 691-700
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    嶺岡帯,鴨川市峠においてアルカリ玄武岩溶岩中に噴出時に取り込まれたと考えられる砂岩を発見した.この砂岩はおもに,斜長石・ダトー石・石英・および珪長質火山岩片から構成され,ダトー石を除けば嶺岡層群神塚層または愛宕山層の砂岩の構成粒子の鉱物組み合わせに似ている.アルカリ玄武岩の活動場は,このような陸源性砂岩が供給されるような場であった事が明らかとなった.アルカリ玄武岩は,その産状と化学組成から,海山を構成していたと考えられるが,アルカリ玄武岩の噴出場と含まれている陸源性砂岩の堆積場は,おそらく海洋プレートと島弧もしくは大陸が会合する収束境界付近であった見込みが高い.アルカリ玄武岩の放射年代は,嶺岡帯のオフィオリティック岩体が本州弧側へ定置したとされる時代の直前であり,本論の結果と調和的である.本研究において嶺岡帯の形成過程を論じるにおいて新たな見地が得られた.
  • 小柳津 篤, 三浦 健一郎, 田中 利治, 林 久晃, 君波 和雄
    2002 年 108 巻 11 号 p. 701-720
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    多くの四万十累層群分布域では北帯と南帯の間でマーストリヒチアン~暁新統が欠如しているが,四国西部の中村市-伊の岬地域にはこの年代の四万十累層群がよく露出している.本研究では,この地域の四万十累層群の地質と放散虫化石年代を検討した.岩相的特徴や堆積年代から,調査地域の四万十累層群は12の地層に区分される.調査域に分布する地層は,一部を除き南に向かって大局的に若くなる年代極性を示す.含礫頁岩中の頁岩礫の年代は,地層の堆積年代と比較的近接している.そして,地層の年代が若くなるのに従い頁岩礫の年代も大局的に若くなる.また,緑色岩と共存する岩相の放散虫化石年代は,後期カンパニアン~前・中期始新世に若い海洋プレートが沈み込んでいた可能性を示唆する.
  • 高橋 孝三, 小林 扶美子, 小野 逸郎
    2002 年 108 巻 11 号 p. 721-732
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    西部太平洋赤道海域において,1999年の1月から約1年間係留されたセディメントトラップより回収された試料から珪藻フラックス変動を明らかにした.本海域は西部のWPWPと東部のEURの2つの水塊に大きく分けられた.珪藻の種組成は2つの水塊間で明らかに異なり,WPWPでは羽状目の割合が高くNitzschia bicapitataが優占種であったが,EURでは円心目の割合が増加しRhizosolenia bergoniiが優占種であった.この東西の種組成の差は,水塊の違い,とくに栄養塩環境の違いを顕著に反映したものと考えられる.また,本海域において全珪藻フラックスに季節変動が認められたが,その種組成には大きな季節変動が認められなかった.このことは,季節的な栄養塩供給の増減に関わらず,その栄養塩の供給源が変化しなければ珪藻の種組成に大きな変化が現れないことを示唆するものと考えられる.
  • 小野 晃
    2002 年 108 巻 11 号 p. 733-745
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    長野県市野瀬地域の鹿塩構造帯はマイロナイトと粟沢変成岩から構成されている.地質図を作成し,鉱物組み合わせ,鉱物組成,石英の粒径などを検討して,鹿塩構造帯の内部構造を解明した.これを基に,周辺地帯のテクトニクスも考慮しながら,鹿塩構造帯のテクトニクスを考察した.マイロナイトは石英集合体の石英粒径に基づいて,ゾーンF,M,Cに区分される.ゾーンFからゾーンMに向って温度が上昇することが岩石学的研究から判断された.市野瀬断層より南方の粟沢地域では,片理面,褶曲軸面,層理面およびゾーン境界の走向はすべてN30°Eで,MTLとは斜交している.面構造の走向も石英の粒径もMTLとの距離に関係しておらず,白亜紀のマイロナイト形成運動とMTLの活動は無関係である.MTLの活動と関係するのは変質作用と破砕帯や断層の形成で,その時期に鹿塩構造帯は複雑に変形された.この変形とMTLの活動・形成は赤石山地の地質体が中新世初期の末期に回転・移動したテクトニクスに関連していたと推定される.
  • 須藤 斎, 高橋 雅紀, 柳沢 幸夫
    2002 年 108 巻 11 号 p. 746-760
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    群馬県富岡地域の東端に位置する藤岡市鮎川ルートの原市層上部から板鼻層下部について珪藻化石分析を行った.その結果,分析した区間はDenticulopsis praedimorpha帯(NPD 5B)とThalassiosira yabei帯(NPD 5C)に対比され,両化石帯の境界を規定するD. praedimorphaの終多産出層準(D55)は,原市層上部に挟在する馬場凝灰岩単層の直上1~3mに限定された.原市層の平均堆積速度(35~39cm/1,000yr.)を考慮すると,生層準D55の年代は馬場凝灰岩単層の40Ar-39Ar年代11.28±0.08Ma(2σ)に誤差範囲で一致する.この結果,珪藻化石年代層序に確かな放射年代値を与えることができた.
  • 長橋 良隆, 片岡 香子, 吉川 周作, 佐藤 時幸
    2002 年 108 巻 11 号 p. 761-764
    発行日: 2002/11/15
    公開日: 2008/04/11
    ジャーナル フリー
    Stratigraphic horizon of the Km3 tephra layer intercalated in the lower part of the Kitaura Formation, Akita Prefecture, Japan, is located above the calcareous nannofossil datum plane 11 (1.65Ma). The Km3 tephra layer, approximately 1m thick, is mainly composed of volcanic glass shards with minor amounts of plagioclase, quartz and biotite. On the basis of the stratigraphic position, lithofacies, petrographic characteristics and chemical composition of glass shards, the Km3 tephra layer is correlated to the Om-SK110 Tephra (1.65Ma). By this result, it is clarified that the Km3 tephra layer was transported more than 450km away from its probable volcanic center situated in the Hida Mountain Ranges, central Honshu Island.
  • 清水 以知子, 大西 セリア智恵美, 松田 ニーロ茂彦, 田崎 和, 荻原 茂騎, 遠藤 一佳, 松本 良
    2002 年 108 巻 11 号 p. XIX-XX
    発行日: 2002年
    公開日: 2010/12/14
    ジャーナル フリー
    走査型レーザー顕微鏡 (laser scanning microscope, LSM)では, 岩石鉱物の透過および反射像を定量的に解析することができる(澤口・清水, 2002)ほか, レーザー照射で励起される蛍光を分光フィルターを通して検出することにより, 走査型の蛍光顕微鏡として用いることもできる(第1図). ここでは, レーザー顕微鏡 FLUOVIEW (オリンパス光学工業(株))を用いた蛍光観察の例を紹介する. 岩石では堆積物に含まれる有機物に自家蛍光が見られるほか, 火山ガラスや斑晶, 鉱物脈などに含まれる微量の不純物も蛍光中心となる. 蛍光試薬によって生体物質を標識することにより, さらに生体鉱物化作用や続成過程についての情報を得ることができる. また, 蛍光樹脂を岩石に浸透させることにより, 間隙構造を可視化することができる.
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