クローン病発症後に結婚・妊娠した1例を経験したので考察を加え報告する.患者は30歳の女性で,18歳の時,某病院で痔瘻の手術を受けたが,術後肛門狭窄が高度となり肛門拡張術などの保存的治療を受けていたが軽快せず,21歳の時右下腹部痛を伴い当科外来を受診した.精査の結果,直腸狭窄を伴う大腸型クローン病と診断され,経過中回盲部膿瘍から回腸皮膚瘻が形成されたが,栄養療法,サラゾピリン,ステロイドなどによる保存的治療が継続された.結婚に際して,婚約者,両家の両親を交えてクローン病の特徴,妊娠・出産への影響などについて説明した後,28歳時結婚した,1992年6月1日(30歳)妊娠第5週と診断された.妊娠の判明した時点ではCRP陽性,赤沈は軽度亢進していたが,下痢,腹痛は無く,CDAIも緩解期を示していたので,再び夫を交え話し合いを持ち,夫婦共に妊娠継続の意志の固いことから妊娠を継続することとした.妊娠第36週で帝王切開にて正常男児を出産した.妊娠経過中にクローン病の増悪はなく,母児ともに元気で退院した,順調な経過をとった1例であった.
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