日本大腸肛門病学会雑誌
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47 巻, 4 号
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  • 片岡 孝, 小西 文雄
    1994 年 47 巻 4 号 p. 295-307
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌の術前に放射線照射療法や温熱療法が施行されているが,これらの術前治療が腸管吻合部あるいは皮膚縫合部の創傷治癒に与える影響を実験的に検討した.ラットの小腸あるいは皮膚に放射線照射(15Gy 1回照射),温熱処置(44℃,30分加温),または放射線照射と温熱処置を併用して施行した後,腸管吻合,皮膚の切開縫合を行った.それぞれのコントロール群においても同様の腸管吻合,皮膚の切開縫合を行った.耐圧力,抗張力,hydroxyproline濃度,組織学所見によって創傷治癒の評価を行った。放射線照射群では,ラットの小腸吻合部および皮膚縫合部の創傷治癒の悪化が認められた.一方,温熱処置群では明らかな創傷治癒の悪化は認められなかった.放射線照射と温熱処置併用群では,創傷治癒の悪化が認められたが,放射線照射単独の場合と比べて,さらに創傷治癒を悪化させることはなかった.この実験モデルにおける条件では,温熱処置においては腸管吻合部や皮膚縫合部の創傷治癒に対する悪影響は認められなかった.
  • 剖検例でのprospectiveな病理・細菌学的検討
    望月 眞, 小池 盛雄, 佐久 一枝
    1994 年 47 巻 4 号 p. 308-314
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    45の剖検例において,prospectiveに,Clostridium difficileの細菌的・形態的な検討を行った.17例(37.8%)のS状結腸内容から,C.difficileが検出された.死亡直前に水様便が認められたのは17例中3例.17例中10例の大腸に,抗生物質投与後の偽膜性腸炎といわれてきたものと同じ特徴的な「偽膜性病変」が認められた.C.difficile陰性の症例では「偽膜性病変」は認めなかった.「偽膜性病変」の他に,サイトメガロウィルス感染や真菌感染など,他の病変を伴うこともあった.大腸に全く病変がないものが17例中4例あった.今回のこのようなデータは,本邦では今までなく,C.difficile腸炎について興味ある知見が得られた.
  • 津田 倫樹
    1994 年 47 巻 4 号 p. 315-323
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎からの発癌におけるras系遺伝子点突然変異の関与を検討するとともに,遺伝子産物の発現との関連を検討した.潰瘍性大腸炎に癌を合併した13例を対象とし,このうち12例に癌の周辺部にdysplasia病変を認めた,ras系遺伝子点突然変異の検出にはPCR法,dot blot hybridization法を用い,ras遺伝子産物の発現にはp21蛋白質に対する単クローン抗体を用いたStreptABC法により検討した.その結果,ras系遺伝子点突然変異が認められたのは1例のみで,c-Ki-rascodon12にGGTよりGATへの変異が検出された.p21蛋白質の過剰発現は,11例にみられた.以上の点より,潰瘍性大腸炎からの発癌におけるras系遺伝子点突然変異の関与は少なく,ras遺伝子産物の過剰発現が必ずしも点突然変異を伴っているものではないことが示唆された,
  • 豊田 和広, 岡島 正純, 浅原 利正, 正岡 良之, 小林 理一郎, 小島 康知, 伊藤 敬, 藤高 嗣生, 川堀 勝史, 土肥 雪彦, ...
    1994 年 47 巻 4 号 p. 324-330
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    大腸癌では粘液癌は比較的少なく,予後は不良とされている,最近13年間に当科で経験した大腸粘液癌21例について,非粘液癌431例(対照)と比較し検討した.平均年齢は60.0で対照と差はなかった.男女比は9.5:1で男性に多く認められた.腫瘍の占居部位は直腸,S状結腸に多かったが,対照と比べると右側結腸に多く認めた,組織学的壁深達度は全例pm以上であり,si(ai)が多い傾向にあった,リンパ節転移は61.9%に認め,対照に比べると有意に多く,肝転移,腹膜播種性転移も多い傾向にあった.このため治癒切除率は61.9%にとどまり,また治癒切除症例の生存率を対照と比較しても有意に不良であった,stage別に生存率を比較すると,stage II,III症例で対照と比較して粘液癌の予後が不良であった.また直腸癌で予後を比較すると,粘液癌の方が不良であった.治療成績の向上のためには,早期診断,適切な手術,補助療法などが重要と思われた.
  • 杉平 宣仁, 松本 好市, 多田 豊治, 藤野 一平, 奥田 明子, 北川 達士, 山本 純二, 鈴木 宏志
    1994 年 47 巻 4 号 p. 331-335
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    過去19年間に教室で切除した右側結腸癌86例について,郭清リンパ節の転移度と予後から,現行の郭清術式の妥当性を評価した.86例のうち治癒切除と判定されたものは70例で,そのうちR2郭清症例は17例,R3郭清症例は53例だった.両群に臨床病理学的事項,および進行度に統計学的な有意差は認あられなかった.再発症例11例では,リンパ節転移の遺残によると思われるリンパ節再発は認めなかった.リンパ節転移を部位別に比較したが,治癒切除症例で223番,214番リンパ節に転移を認めた症例はなく,R2症例とR3症例の生存率に差を認めなかった.すなわち右側結腸癌に対して,現行のR2以上の郭清を伴う結腸右半切除術は十分な根治性を有するものと考えられた.
  • 菊池 隆一, 高野 正博, 高木 幸一, 藤好 建史, 藤本 直幸, 野崎 良一, 江藤 公則, 大湾 朝尚, 紀伊 文隆, 田中 聡也
    1994 年 47 巻 4 号 p. 336-342
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病は,再発,再燃を繰り返す難治性の炎症性腸疾患であり,外来でのフォローアップは極めて重要である.しかし,その検査として大腸内視鏡,注腸などは侵襲が大きく頻回に繰り返すことが困難である.そこでわれわれは,クローン病64例に侵襲のない腹部超音波(US)を応用した.異常所見として,(1)大腸壁の肥厚30例,(2)小腸壁の肥厚16例,(3)小腸拡張4例,(4)瘻孔形成4例,(5)膿瘍2例,(6)塊状小腸1例,(7)腹腔内出血1例,が確認された.腸管壁の肥厚は,US上全層の低エコーとして描出され大腸壁は7.5±2.lmm,小腸壁は6.6±1.9mmであった.この肥厚の程度はCRPと有意な相関を示した.また活動期において開腹手術施行群は,内科的治療軽快群に比し高度の壁肥厚を認め,内科的治療軽快群は治療により有意の壁肥厚の減少がみられた.USは,壁肥厚を指標にすることによりクローン病のフォローアップおよび緩解の判定に極めて有用な検査法であると思われた.
  • 滝口 伸浩, 更科 広実, 斉藤 典男, 布村 正夫, 幸田 圭史, 中島 伸之
    1994 年 47 巻 4 号 p. 343-349
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    直腸癌術前照射43症例(42.6Gy)の,照射前後の生検組織像と切除標本の組織像を検討し,経時的内視鏡下生検の意義について評価した.内視鏡下に腫瘍周堤,潰瘍底,近接粘膜より2個ずつ生検組織を採取した.生検では,癌細胞の変性程度を評価し,核や核小体の高度変性,核の消失や細胞質の崩壊を示す症例を高度変性群とした.切除標本の照射効果はGrade(Gr)1b以下(1群):24例,Gr2以上(II群)二19例であった.照射後生検の癌細胞採取率は1群91.7%,IIX47.4%であり(p<0.01),そのうち高度変性群が1群54.5%,II100%であった(p<0.05).また近接粘膜の傷害は軽度であった.内視鏡による形態変化が大きい症例ほど癌細胞採取率は低かった.以上より,照射効果が大きいほど癌細胞採取率が低下し,高度変性細胞が採取されたが,効果の低い症例においても高度変性細胞が採取される比率が高く,組織学的効果を生検組織像のみから判定することは困難であることが示唆された.
  • 菅谷 義範, 松本 好市, 多田 豊治, 藤野 一平, 浦田 久志, 鈴木 宏志
    1994 年 47 巻 4 号 p. 350-355
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    クローン病発症後に結婚・妊娠した1例を経験したので考察を加え報告する.患者は30歳の女性で,18歳の時,某病院で痔瘻の手術を受けたが,術後肛門狭窄が高度となり肛門拡張術などの保存的治療を受けていたが軽快せず,21歳の時右下腹部痛を伴い当科外来を受診した.精査の結果,直腸狭窄を伴う大腸型クローン病と診断され,経過中回盲部膿瘍から回腸皮膚瘻が形成されたが,栄養療法,サラゾピリン,ステロイドなどによる保存的治療が継続された.結婚に際して,婚約者,両家の両親を交えてクローン病の特徴,妊娠・出産への影響などについて説明した後,28歳時結婚した,1992年6月1日(30歳)妊娠第5週と診断された.妊娠の判明した時点ではCRP陽性,赤沈は軽度亢進していたが,下痢,腹痛は無く,CDAIも緩解期を示していたので,再び夫を交え話し合いを持ち,夫婦共に妊娠継続の意志の固いことから妊娠を継続することとした.妊娠第36週で帝王切開にて正常男児を出産した.妊娠経過中にクローン病の増悪はなく,母児ともに元気で退院した,順調な経過をとった1例であった.
  • 1994 年 47 巻 4 号 p. 356-372
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 47 巻 4 号 p. 373-379
    発行日: 1994年
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
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