目的 児童の肥満や痩身を引き起こしている生活習慣要因を検討した。
方法 A 県 B 小学校全校児童516人のうち同意が得られた499人。平成19年度定期健康診断結果および生活習慣質問紙留め置き調査。体型の分析には,性別,年齢別,身長別標準体重による肥満度の判定基準を用い,肥満度(過体重度)を計算して,これが+20%以上であれば肥満傾向,−20%以下であれば痩身傾向とした。体型と生活習慣との関連では,体型(「普通群」,「痩身•肥満傾向児群」)を従属変数,生活習慣を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。また,痩身傾向児群と肥満傾向児群に共通する生活習慣と相違する生活習慣について検討した。
結果 対象校の痩身•肥満傾向児出現率と,同年度の学校保健統計調査全国平均値とを比較したところ,男子では全体的に肥満傾向児の出現率が高かった。その生活習慣要因として,咀嚼の不十分さ,TV の視聴時間が長いこと等の影響が示唆された。
4•5 年生男子,5 年生女子では,痩身傾向児,肥満傾向児ともに出現率が高率であった。二項ロジスティック回帰分析を行った結果,痩身•肥満傾向児群の出現率と関連のあった不健全な生活習慣項目は,「良く噛んで食べない」者は良く噛んで食べる者と比較して2.1倍(
P=0.016),「毎日 TV を 2 時間以上見る」者は見ない者と比較し1.9倍(
P=0.071)高率であった。
そこで,体型を「痩身傾向児群」,「普通群」,「肥満傾向児群」の 3 群に分類して生活習慣との関連をみたところ,普通群と比較し,痩身•肥満傾向群でともに高率であった不健全な生活習慣は,「よく噛んで食べない」であり,肥満傾向児群で高率であったのが「毎日 TV を 2 時間以上見る」であった。
結論 一般に,痩身と肥満の生活習慣に関する問題は,その外見から対極的であると思われがちである。しかし,本研究において,肥満傾向児出現率の高い学年は,痩身傾向児出現率も高い傾向にあり,「よく噛んで食べない」など痩身•肥満傾向児群に共通する生活習慣が存在することが示唆された。
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