日本公衆衛生雑誌
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60 巻, 3 号
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研究ノート
  • 舟橋 博子, 西田 友子, 岡村 雪子, 榊原 久孝
    2013 年 60 巻 3 号 p. 119-127
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 国民健康保険による特定健康診査の受診率向上を目指し,健診受診率の最も低い40–50歳代の特定健康診査対象者を対象に,受診者と未受診者の背景を調査し,未受診者の特徴を明らかにすることを目的とした。
    方法 愛知県 A 市の国保被保険者のうち,40–50歳代の特定健康診査対象者2,624人全員を対象とし,郵送による質問紙調査を行った。調査項目は対象者の基礎情報(性別,年齢,学歴,就労,家族構成)と生活習慣,医療機関への通院,かかりつけ病院の有無,ソーシャルサポート等である。
    結果 回答が得られたのは,健診受診者から263人(回収率36.0%),未受診者から397人(回収率21.0%),全体で660人(回収率25.2%)であった。国保特定健診未受診者の中には,個人または職場で健診•人間ドックを受けている者が31.2%いた。また,健診は受診していないが医療機関へ定期通院している者も28.5%おり,健診も医療機関も受診していない者は,健診未受診者のうち40.3%であった。同じ健診未受診者でも,医療機関への通院の有無で特徴が異なった。医療機関へ通院している者は,自分を「健康でない」と感じているものが多かったが,健診も医療機関も受診していない者では,自分を健康と感じているものが 8 割を超えていた。男性のうち,健診も医療機関も受診していない者は,健診を受診している男性と比べ,配偶者がいない者が多く,自営業や正社員として働いている者が少なく,世帯収入も少なかった。また,困ったときにそばにいてくれる存在がいないと答える割合が高かった。この特徴は,女性ではみられなかった。かかりつけ病院については,男女ともに,健診も医療機関も受診していない者で,持っていない割合が高く,男性72.3%,女性62.0%がかかりつけ病院を持っていなかった。
    結論 健診未受診者の中には,他で健診を受けている者や医療ケアを受けている者も多く存在し,積極的に健診受診を勧奨するべき「健診も医療機関も受診していない者」は,未受診のうち 4 割であった。未受診者のうち,医療機関の受診もない男性は,周囲の人や社会とのつながりが薄く,周りからの支援を受け難いことが考えられた。この特徴は女性ではみられず,男性特有の傾向であった。
  • 大須賀 惠子
    2013 年 60 巻 3 号 p. 128-137
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 児童の肥満や痩身を引き起こしている生活習慣要因を検討した。
    方法 A 県 B 小学校全校児童516人のうち同意が得られた499人。平成19年度定期健康診断結果および生活習慣質問紙留め置き調査。体型の分析には,性別,年齢別,身長別標準体重による肥満度の判定基準を用い,肥満度(過体重度)を計算して,これが+20%以上であれば肥満傾向,−20%以下であれば痩身傾向とした。体型と生活習慣との関連では,体型(「普通群」,「痩身•肥満傾向児群」)を従属変数,生活習慣を独立変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。また,痩身傾向児群と肥満傾向児群に共通する生活習慣と相違する生活習慣について検討した。
    結果 対象校の痩身•肥満傾向児出現率と,同年度の学校保健統計調査全国平均値とを比較したところ,男子では全体的に肥満傾向児の出現率が高かった。その生活習慣要因として,咀嚼の不十分さ,TV の視聴時間が長いこと等の影響が示唆された。
      4•5 年生男子,5 年生女子では,痩身傾向児,肥満傾向児ともに出現率が高率であった。二項ロジスティック回帰分析を行った結果,痩身•肥満傾向児群の出現率と関連のあった不健全な生活習慣項目は,「良く噛んで食べない」者は良く噛んで食べる者と比較して2.1倍(P=0.016),「毎日 TV を 2 時間以上見る」者は見ない者と比較し1.9倍(P=0.071)高率であった。
      そこで,体型を「痩身傾向児群」,「普通群」,「肥満傾向児群」の 3 群に分類して生活習慣との関連をみたところ,普通群と比較し,痩身•肥満傾向群でともに高率であった不健全な生活習慣は,「よく噛んで食べない」であり,肥満傾向児群で高率であったのが「毎日 TV を 2 時間以上見る」であった。
    結論 一般に,痩身と肥満の生活習慣に関する問題は,その外見から対極的であると思われがちである。しかし,本研究において,肥満傾向児出現率の高い学年は,痩身傾向児出現率も高い傾向にあり,「よく噛んで食べない」など痩身•肥満傾向児群に共通する生活習慣が存在することが示唆された。
  • 村山 陽, 竹内 瑠美, 大場 宏美, 安永 正史, 倉岡 正高, 野中 久美子, 藤原 佳典
    2013 年 60 巻 3 号 p. 138-145
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 新聞記事の内容分析から世代間交流事業に対する社会的な関心の変遷を把握したうえで,質問紙調査から世代間交流事業の現状と課題について明らかにする。
    方法 全国紙 3 紙(朝日新聞,読売新聞,毎日新聞)を対象に「世代間交流事業」に関する339記事を抽出し,記事量と内容の変化を調べた。さらに,新聞記事で見出された56事例の世代間交流事業主催者を対象に世代間交流事業の現状と課題ついて郵送調査を行った。交流事業の課題については,クラスター分析により分類をした。
    結果 新聞の内容分析からは,社会政策に応じて,90年代末から今日まで世代間交流事業の記事が増加している傾向が示された。質問紙調査の結果からは,交流事業の多くが単発で不定期的なものであることが示された。また,世代間交流事業の 4 つの課題(①世代間ギャップの問題,②運営の課題,③交流プログラムの問題,④参加者確保の問題),がそれぞれ見いだされた。
    結論 世代間交流事業に対する社会的関心の高まりが認められる一方で,これまでの交流事業は単発で不定期的なものが多く世代間事業の課題を抱えていることが示された。これらの課題について,縦割り行政を解消するとともに,地域のコーディネーターを配置することが必要になろう。
  • 鈴木 智之, 神谷 信行, 八幡 裕一郎, 尾関 由姫恵, 岸本 剛, 灘岡 陽子, 中西 好子, 吉村 健清, 島田 智恵, 多田 有希, ...
    2013 年 60 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/02/26
    ジャーナル フリー
    目的 地方感染症情報センター(LIDSC)業務の担当者(LIDSC 担当者)に対する研修プログラムの設置や研修テーマに対する需要を把握し,研修プログラムの必要性について検討した。
    方法 LIDSC 担当者が多く参加する公衆衛生情報研究協議会(2011年 1 月)の関連会議として実施した研修会の参加者に対して質問票調査を行った。調査項目は,1)基本情報(所属と主な業務等),2)LIDSC 担当者に対する研修プログラムの必要性,3)希望する研修テーマ等を質問した。主な業務を LIDSC 業務と回答した者を対象として,「記述疫学」,「解析疫学」,「統計解析ソフト」と「実地疫学調査」についての知識の保有と実践能力に対する自己評価,および2007–10年の研修受講歴と教育実施歴について回答を求めた。
    結果 研修会に参加した自治体職員55人より回答を得た(回収率100%)。52人(95%)は研修プログラムの設置が必要と回答した。研修のテーマとして,疫学全般については「基本的な統計解析方法(85%)」,「記述疫学(65%)」と「疫学概論(60%)」を,感染症サーベイランスについては「データの解釈方法(65%)」,「感染症発生動向調査の背景や目的(60%)」,「積極的疫学調査の方法(60%)」と「データの解析方法(51%)」を半数以上が選択回答した。「知識」に対する自己評価は,すべての項目に対して「少し理解している(まだ勉強が必要)」と「理解していない」が多く,「業務実践能力」に対する自己評価は,「指導者がいれば実践(利用)できる」,および「実践(利用)できない」が多かった。また,これらの教育実施歴をもつ者と研修会受講歴がある者は少なかった。
    結論 LIDSC 担当者向けの研修プログラムの設置に対しては高い需要があった。また,疫学や感染症サーベイランスに係る知識の保有や業務実践能力に対する自己評価結果を加味すると,早急に研修プログラムを設置するべきである。
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