目的 地域住民における推算糸球体濾過量(eGFR)を用いた腎機能,尿蛋白と心血管疾患リスク要因およびメタボリックシンドローム(以下「MetS」)の関連について断面的検討をした。
方法 小倉医師会健診センターで階層化(特定保健指導における積極的支援および動機付け支援あるいは情報提供)を取り扱った平成22年度北九州市国保特定健診受診者データ21,625人(男性8,637人 女性12,988人)をもとに検討した。
結果 受診者全体では加齢に伴い慢性腎臓病(CKD)ステージが上昇し,70–74歳の年齢階級ではステージ 3 以上が32%を占めた。CKD ステージ 3 での尿蛋白陽性率は全体の11%のみであった。腎機能低下群(eGFR 値 60 mL/min/1.73 m
2 未満)は腎機能正常群(eGFR 値 60 mL/min/1.73 m
2 以上)と比較して腹部肥満率,収縮期および拡張期血圧,空腹時血糖値,HbA1c 値,空腹時中性脂肪値が有意に高く,また HDL–C 値は低値を示し,メタボリックシンドローム(MetS)の合併率が高くなっていた。腎機能と脳卒中•心臓病既往歴の検討では,腎機能低下群にその既往率が高かった。
結論 CKD 対象者は腎機能正常群と比較して心血管疾患リスク要因である血圧高値•血糖高値•脂質異常症また MetS との関連性が高く,早期からの CKD 予防にはかかりつけ医による生活習慣の是正が重要と考えられた。北九州市では平成23年度より特定健診に準じた「北九州市 CKD 予防連携システム」を導入,今後システムが良好に稼働すれば,同市における末期腎不全への進行(血液透析導入率)とともに心血管疾患発症が抑制に向かう可能性も期待される。
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