The Japanese Journal of Antibiotics
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45 巻, 10 号
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  • 副島 林造
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1239-1252
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefdinir (FK482, CFDN) は藤沢薬品工業株式会社でCefixime (CFIX) に次いで開発された経口用セフェム系抗生物質で, 7-アミノセファロスポラン酸骨格の7位側鎖にアミノチアゾール基, ヒドロキシイミノ基, 3位側鎖にビニル基を有する (Fig. 1).
    近年, 細菌感染症の主要起炎菌の変遷に伴って, 注射用セフェム系抗生物質 (第3世代) が相次いで開発され, 主に従来の抗生物質に感受性の低かったβ-Lactamase産生菌などを含むグラム陰性菌に対して優れた治療効果を発揮している. しかし, これらの薬剤の多くはグラム陽性菌, 特にStaphylococcus属に対する抗菌力は第1世代セフェム剤に劣るものであつた. このたあ, 注射用第3世代セフェム剤が繁用されるに伴い, これらStaphylococcus属を中心とするグラム陽性菌の分離頻度が増加しつつあり, 特にStaphylococcus属についてはMethicillin (DMPPC) 耐性菌が問題になつている.
    一方, 経口用抗生物質が適用される各科感染症においてもStaphylococcus aureus, Staphylococcus epidermidis及びCoagulase陰性StaphylococcusあるいはStreptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniaeなどのグラム陽性菌の分離頻度は高く, 臨床的にも重要な位置付けにある. 経口用セフェム系抗生物質としては, 注射用第3世代セフェム剤に匹敵する抗菌力を有するCFIX及びCefteram pivoxil (CFTM-PI) 等がすでに市販されているが, これら薬剤のStaphylococcus属に対する抗菌力は優れたものではない. このため, 注射用第3世代セフェム剤に匹敵する抗菌スペクトル, 抗菌力及び殺菌力を有し, Staphylococcus属に対する抗菌力を増強した新しい経口用抗生物質の開発が待たれていた.
    CFDNはグラム陽性菌及びグラム陰性菌に広範な抗菌スペクトルを有すると共に, CFIXと同様, 各種β-Lactamase産生菌及びCefaclor (CCL) 又はAmoxicillin (AMPC) 耐性菌に対しても強い抗菌力を有し, その抗菌作用は殺菌的である1-8). CFDNはCFIX及びCFTM-PIの抗菌力が劣るStaphylococcus属を含む各種グラム陽性菌及びCCLが弱い抗菌力しか示さない淋菌, Branhamella catarrhalis, Providencia属 (インドール陽性Proteus) を含む各種グラム陰性菌による感染症に対しても効果が期待された.
    本剤の基礎及び臨床試験成績 (成人) は, 第27回及び第28回インターサイエンス抗菌薬・化学療法会議 (1987年10月, ニューヨーク, 1988年10月, ロスアンゼルス), 第36回日本化学療法学会西日本支部総会 (1988年12月, 高知) において発表された1) が, その他検討された基礎的, 臨床的試験成績とも合せて, 本剤の特徴について概説する. なお, 小児での検討成績は藤井らによつて報告されている9).
  • セファゾリン単剤又はセファゾリン及びセファマイシン系薬剤併用時の抗菌力(MIC) とディスク阻止円直径の評価
    松尾 清光, 植手 鉄男
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1253-1266
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 1989~1990年に北野病院において分離された各種臨床分離菌株222菌株のセファゾリン (CEZ) の感受性を, 最小発育阻止濃度 (MIC) と昭和30μgディスク及び自家製10μgディスクを用い測定した結果, 両者に良好な負の相関関係が認められた.
    ディスク感受性を昭和ディスク4分類法で判定するとFalse positiveは7.7%, False negativeは6.8%であるのに対し, NCCLSの3分類法で判定すると, それぞれ3.2%, 及び5.4%となった. 10μgディスクについても同様の結果を得た.
    2. Staphylococcus aureusを除く各種臨床分離菌株のCEZに対する感受性は15~20年前に報告された感受性と比較して, ほとんど変化していないことを確認した. しかし今回分離されたS. aureusの多くにメチシリン耐性が認あられ, これらの菌株にCEZは耐性であった.
    3. メチシリン耐性S. aureus (MRSA) 10株に対するCEZとセブメタゾール (CMZ), 又はフロモキセブ (FMOX) との併用効果をCheckerboard法で検討した結果, これら両組合せは共に相乗作用を示すことが確認された. その程度はほぼ同等であった.
    4. MRSAに対するCEZとCMZ又はFMOXの併用効果をディスク拡散法を用いて検討した. CEZとCMZあるいはFMOX単剤ディスクの問には相乗的相互作用を示す阻止円融合がみられた.
    5. ディスク拡散法を用い2剤含有ディスクによる阻止円直径の拡大とMIC値の変動を含めた併用効果の推定について検討した. CEZ/CMZ及びCEZ/FMOXの2剤含有ディスクの阻止円直径はそれぞれの薬剤量及び両薬剤の合計量を含むそれぞれの単剤ディスク阻止円直径よりも大であった. ディスク拡散法によるCEZ/CMZ及びCEZ/FMOXの2剤含有ディスクの阻止円直径とCheckerboard法で得られたこれら薬剤併用時のそれぞれの薬剤のMICは良好な負の相関関係を示した. CEZとCMZ又はFMOX2剤含有ディスクを用いた拡散法は, これら薬剤併用時の抗菌力推定のために簡便で有意義と考えられる.
  • NAOKI KATO, KUNITOMO WATANABE, KAZUE UENO
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1267-1269
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The in vitro antimicrobial activity of AO-128, an inhibitor of α-D-glucosidase, was evaluated against anaerobic bacteria of 45 reference strains (12 genera, 44 species). AO-128inhibited no strains tested at a concentration of1, 600μg/ml. The results strongly suggested that this compound would not have any influence on the human intestinal microflora, a majority of which is composed of anaerobic bacteria.
  • 吉田 哲憲, 本間 賢一, 大浦 武彦, 菅野 弘之, 沖本 雄一郎
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1270-1274
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) 1gをOne shotで静注し, 皮膚内濃度と血清中濃度を経時的に測定した. 皮膚内濃度, 血清中濃度とも, 高いCPM濃度が長時間持続していた. 皮膚内濃度のピーク値は投与2時間後にみられ, 23.05μg/gであつた. これらの結果から, CPMの静脈内投与は皮膚感染症に対して十分な治療効果を期待し得ると考えられた.
  • 宗本 滋, 野村 素弘, 石黒 修三, 黒田 英一, 中島 良夫
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1275-1281
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    多剤耐性菌による化膿性髄膜炎に対してCeftazidime (CAZ) を使用し, 良好な結果を得たので報告した。投与中のCAZの血中濃度, 髄液中濃度を2時間ごとに測定した。その結果CAZ は髄液移行の良い薬剤であり, 1g×4回/日の投与方法, 2g×2回/日の後1g×4回/日の投与を行う方法が良いと考えられた。
  • 山木 健市, 鈴木 隆二郎, 滝 文男, 高木 健三, 佐竹 辰夫, 水野 勝之, 馬場 研二, 相原 博, 森 雅典, 山田 健司, 石川 ...
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1282-1294
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は以前の検討で, 難治性呼吸器感染症に対してCeftazidime (CAZ) を単剤で投与し有効率70%と良い成績を得た。更に今回は, 難治性呼吸器感染症患者55例を対象に, 抗菌スペクトルの特徴が異なるAspoxicillin (ASPC) とCAZの併用療法を行い臨床効果と安全性を検討した。
    臨床効果として著効11例, 有効33例, やや有効7例, 無効4例で有効率 (著効+有効) は 8O.0%. と高い臨床効果が得られた。疾患別有効率では, 肺炎 (21例) 100%, 肺癌による閉塞性肺炎 (5例), 40.0%, 肺化膿症 (1例) 0%, 気管支拡張症 (11例) 81.896, 肺気腫 (5例) 80.0%, 肺線維症 (3例) 66.7%, 陳旧性肺結核 (3例) 100%, 慢性気管支炎 (3例) 33.3%であつた。細菌学的効果は単独感染で陰性化14例, 減少3例, 菌交代2例, 不変2例で消失率 (陰性化+菌交代) は76.2%であった。
    副作用として下痢が55例中1例 (1.8%) に認められた。臨床検査値の異常は55例中4例 (7.3%) に認められた。共に軽度であり, 継続して投与可能であった。安全性は高いと思われた。
    以上から, ASPC・CAZの併用療法は難治性呼吸器感染症に対して有用であると考えられる。
  • 手島 博文, 正岡 徹, 平岡 諦, 堀内 篤, 長谷川 廣文, 木谷 照夫, 田川 進一, 米沢 毅, 金山 良男, 武 弘典, 杉山 治 ...
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1295-1304
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血液疾患に合併した重症感染症138例に対してCefodizime (CDZM) を投与し, 有効性及び安全性を検討した.
    1. 臨床効果判定可能例121例における有効率は55.4%であった.
    2. 起炎菌同定不能例においても56.4%の高い有効率が得られた.
    3. 起炎菌別臨床効果は, グラム陰性菌66.7%, グラム陽性菌28.6%で, グラム陰性菌で有効率が高かった.
    4. 投与前好中球数が100/μl未満, 100-499/μl, 500/μl以上の有効率は56.3%, 75.0%, 50.0%で, 好中球減少時にも高い有効率が得られた.
    5. 副作用, 臨床検査値異常の発現率は1.5%, 6.6%で, いずれも軽微であった.
    以上から, CDZMは血液疾患に合併した重症感染症に対して有用性の高い薬剤であると考えられる.
  • III. Cefotiam及びCefuzonamとの併用効果
    出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 鈴木 香苗, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1305-1311
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するCefotiam (CTM) +Arbekacin (ABK), 及びCefuzonam (CZON) +ABKの抗菌併用効果を検討し, 以下の結論を得た。
    1. MRSAに対するCTM+ABK, CZON+ABK各々の組み合せにおける抗菌併用効果は, 共通してABKの臨床的に期待し得る血中濃度としての1MIC濃度存在下においては強い併用効果が認められたが, ABKのsub MIC濃度存在下におけるそれには差がありCTM+ABKは強く, CZON+ABKはやや弱い結果だった。
    2. いずれの組み合せによる濃度依存在性もCTM及びCZONには弱く, ABKには強い結果だった。これにより, そこで生じる抗菌併用効果は, ABKの抗菌活性と濃度に依存する度合いが高いことが, すでに報告した他薬剤の組み合せと同様に示唆された。
    3. MRSAに対するCTM+ABKの併用は, MRSA単独感染時における有用性が, CZON+ABKの併用は, MRSAにグラム陰性菌の重感染を伴う症例に対する有用性が考えられる。
  • IV. Cefmetazole及びFlomoxefとの併用効果
    出口 浩一, 横出 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 鈴木 香苗, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1312-1318
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) に対するCefmetazole (CMZ) +Arbekacin (ABK), 及びFlomoxef (FMOX) +ABKの抗菌併用効果を検討し, 以下の結論を得た。
    1. MRSAに対するCMZ+ABK, FMOX+ABK各々の組み合せにおける抗菌併用効果は, 共通してABKの臨床的に期待し得る血中濃度としての1MIC濃度存在下においては強い併用効果が認められたが, ABKのsub MIC濃度存在下におけるそれには差があり, CMZ+ABKは FMOX+ABKにやや劣る結果だつた。
    2. いずれの組み合せによる濃度依存性もCMZ及びFMOXには弱く, ABKには強い結果だった。これにより, そこで生じる抗菌併用効果は, ABKの抗菌活性と濃度に依存する度合いが高いことが, すでに報告した他薬剤の組み合せと同様に示唆された。
    3. MRSAに対するABK+β-Lactamsの抗菌併用効果における強弱は, ABKのsub MIC濃度存在下における効果が重要なポイントであると考えられた。
  • 家兎急性副鼻腔炎に対する薬効薬理試験
    小林 武弘, 馬場 駿吉
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1319-1331
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (FOM) 鼻科用剤の上顎洞穿刺注入療法による効果を実験的家兎副鼻腔炎モデルを用いて検討し, 以下の結果を得た。
    1. 0.5, 1, 3, 5%FOM鼻科用剤の上顎洞注入を行い, 上顎洞粘膜の病態を観察した単回投与試験では, 396以上の濃度で光顕的観察, 走査電顕的観察で若干の病像の改善が認められた。連続投与試験では, 肉眼的観察で196以上の濃度で改善が認められたが, 特に3, 5%の濃度では光顕的観察走査電顕的観察で明らかな改善が認あられた。
    2. 3%FOM鼻科用剤を週2回の割合で上顎洞注入し経時的に副鼻腔の病態を観察した。第1週目では肉眼的観察, 光顕的観察, 走査電顕的観察で上顎粘膜の炎症所見の改善が認められ, 又, 上顎貯留液の菌の定量培養でも菌は検出されなかつた。2週問目では粘膜病変は正常化し副鼻腔炎は治癒した。
    以上の結果から, FOM鼻科用剤の上顎洞注入療法の副鼻腔炎に対する有用性が明らかになった。
  • 稲垣 好雄, 千田 俊雄, 中谷 林太郎, 橋本 新二郎
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1332-1341
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新セファロスポリン系抗菌剤DQ-2556を健康成人男子4名に1回29, 1日2回, 5日間連続静脈内に注射し, 各被験者の糞便内菌叢の変動と, その糞便中薬剤濃度との関係について検討した。更に糞便中のClostridium difficileの存在とその毒素の有無, 下痢等の副作用などについても合せて検討した。
    1. 各被験者とも総菌数は多少の増減は認められるもののほぼ一定であった。但し, 1名に投薬終了後一時的に著しい減少が認められた。
    2. Bacteroidaceaeを除く嫌気性菌群は一部を除いて投薬期間中大きく減少した。一方, 投薬終了後に少数菌であるレシチナーゼ陽性のClostridiaの著しい増加も2例において観察された。
    3. 好気性菌群においても, 多くの菌群は減少したが, BacilliやYeastの増加, 更には被験者によつてはEnterococciの増加などが認あられた。
    4. 実験期間中, 糞便中にはDQ-2556は検出されなかった。
    5. 実験期間中, C. difficile及びその毒素は検出されなかった。
    6. 実験期間中, 下痢等の副作用は認あられなかった。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 鈴木 由美子, 鈴木 香苗, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1342-1355
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1988年2月~1989年10月に実施されたOfloxacin (OFLX) 耳用液の早期第2相臨床試験, 同用量比較試験, 第3相二重盲検比較試験, そして一般臨床試験において, 全国の耳鼻咽喉科施設で患者から採取し輸送されてきた主として慢性中耳炎, 及び慢性中耳炎急性増悪患者採取の中耳分泌物, 更に外耳道炎の外耳分泌物から分離・同定した菌種と, それらの検出株を対象にした OFLXなどの抗菌活性に関する成績をまとめて, 以下の結論を得た。
    1. 中耳炎439症例, 外耳炎80症例 (合計519症例) からは746株が検出されたが, 推定起炎菌の内訳は好気性グラム陽性菌66.9%, 好気性グラム陰性菌32.4%, 嫌気性菌0.7%であり, 好気性グラム陽性菌が高い割合だった。そして, 好気性グラム陽性菌ではStaphylococcus aureus, 好気性グラム陰性菌ではPseudomonas aeruginosaが高い割合に認められた。
    2. MICを測定し得たすべての菌種746株に対するOFLXのMIC90は6.25μg/mlであったが, このMIC90値はCefmenoxime (CMX) には3管差 (8倍), Fosfomycin (FOM) 及び Fradiomycin (FRM) には5管差 (32倍) 勝る結果だつた。そして, OFLXが示したMIC90は, 0.3%OFLX使用時2時間後におけるOFLXの活性残存力価が越えることが示唆された。これにより, OFLX耳用液はAbove the MIC, Time above MICを満たしていた。
    3. いわゆるブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌 ((G) NF-GNR) は, P. aeruginosaを含めると対象とした519症例中の32.6%の症例に認められたが,(G) NF-GNRに対するOFLXのMIC90はCMX, FOM, FRMのそれに勝っており, バランスのとれた抗菌活性がOFLX耳用液の持っ特徴の一つである。
    4. OFLXの抗菌作用にはPost antibiotic effect (PAE) が報告されているが, OFLXの示す PAEはOFLX耳用液の持つもう一つの特徴と考えられた。
    上記によりOFLX耳用液は, 既存の耳用液に無い特徴が示されたことから, 臨床的に有用な耳用液であるとの結論を得た。
  • 本廣 孝, 沖 眞一郎, 津村 直幹, 佐々木 宏和, 織田 慶子, 古賀 達彦, 阪田 保隆, 山下 文雄, 高城 信彦, 間 克麿, 金 ...
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1356-1384
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいCarbapenem系注射用抗生物質Meropenem (MEPM) について小児科12施設と新生児科1施設による共同研究で, 次のような結果を得たので報告する。
    1. 抗菌力
    保存株のStreptococcus agalactiae31株, Listeria monocytogenes14株, Bordetella pertussis 4株, Neisseria meningitidis 3株に対する本剤の抗菌力はMIC90で0.025~0.10μg/mlを示し, 対照薬のImipenem, Cefazolin, Cefotiam, Cefotaxime, Ceftazidime, LatamoxefのMIC90と比較すると同じかほぼ同等あるいは優れていた。
    臨床分離株ではグラム陽性菌中Staphylococcus aureus3株に対する本剤のMICは0.20μg/ml か6.25μg/ml, Streptococcus pneumoniae4株に対するMICはすべて≤0.025μg/ml, グラム陰性桿菌のHaemophilus influenzae3株に対するMICは0.10μg/mlか0.20μg/ml, Enterobacter cloacae, Morganella morganii, Pseudomonas aeruginosa各1株に対するMICは各々0.78μg/ml, 0.10μg/ml, 0.78μg/ml, 嫌気性菌のPeptococcus saccharolyticus 1株に対するMICは≤0.025μg/mlであった。
    2. 薬物動態学的検討
    小児9例中各3例に本剤10, 20, 40mg/kgを30分かけて点滴静注した時のBioassay法による最高血漿中濃度はいずれのCaseも投与終了直後にあり各投与群の平均は各々36.3μg/ml, 69.5μg/ml, 129.8μg/mlで明らかなDose responseが観察され, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法でも類似した。β相の血漿中半減期は平均でそれぞれ0.94, 0.86, 0.94時間で, 投与量による変化はなく, HPLC法でも類似した。本剤10, 20, 40 mg/kg投与群の投与開始後6時間までの尿中排泄では, Bioassay法で平均各々67.3%, 65.6%, 68.4%回収され, HPLC法でも類似した。MEPMの主な代謝体であるH-4295の投与開始後6時間までの平均回収率はそれぞれ 10.5%, 7.8%, 8.7%で, HPLC法によるMEPMの平均回収率を加えると各々77.8%, 73.8%, 78.3%であった。
    本剤の髄液中濃度は化膿性髄膜炎2例で測定でき, 6, 8, 15病日に500mg (5.9mg/kg) を30 分間かけて点滴静注したCaseでは投与終了各々3時間10分, 1時間, 1時間40分後の濃度はそれぞれ0.13, 0.10μg/ml, 検出限界以下で, 8病日だけ髄液・血漿比が算出でき2.8%で, 経過と共に移行濃度は低下した。6, 7, 10病日に250mg (38.5mg/kg) を30分間かけて点滴静注した Caseでは, 投与終了1時間後の濃度は各々検出限界以下, 2.04μg/ml, 2.62μg/mlであった。
    3. 臨床成績
    臨床効果は49症例に評価が可能で, 有効率は93.9%であり, 咽頭炎及び扁桃炎3例, 急性気管支炎4例, 肺炎25例, 化膿性髄膜炎2例, 腹膜炎1例, 尿路感染症6例, 蜂窩織炎1例, に対しては全例有効以上で, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群3例中1例と化膿性リンパ節炎4例中2 例がやや有効か無効であった。
    細菌学的効果はグラム陽性菌ではS. aureus7株, S. agalactiae1株, S. pneumoniae5株, Enterococcus faecalisEnterococcus sp. 1株, グラム陰性桿菌ではH. influenzae4株, Escherichia coli2株, Klebsiella pneumoniae, E. cloacae, Proteus mirabilis, M. morganii, P. aeruginosa各1株, 嫌気性菌ではP. saccharolyticus1株計27株について判定でき, S. aureusの7株中1株, E. faecalisの1株, P. saccharolyticusの1株は減少か不変で, その他の24株はすべて陰性化し, 消失率は88.9%であった。
    4. 副作用及び異常検査値
    49例中副作用は認あられなかった。
    臨床検査値の異常は末梢血の検査で好酸球増多が5例13.2%に出現, GOTとGPTの単独異常上昇例がいずれも各1例2.7%, GOT, GPTの同時異常上昇は3例10.7%にみられたが, いずれも軽度であった。
    以上の成績から, 本剤は起炎菌にもよるが, 化膿性髄膜炎をはじめとする重・中等症の種々の細菌感染症に対し有用な抗生物質であると言える。
  • 岩田 敏, 川原 和彦, 磯畑 栄一, 金 慶彰, 横田 隆夫, 楠本 裕, 佐藤 吉壮, 秋田 博伸, 老川 忠雄, 砂川 慶介, 市橋 ...
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1385-1402
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しい注射用Carbapenem系抗生剤であるMeropenem (MEPM, SM-7338) について, 小児臨床例の腸内細菌叢に及ぼす影響を検討した.
    対象は感染症で入院した小児7例 (男児3例, 女児4例, 年齢4カ月~8歳9ヵ月, 体重7.3~23.0kg) で, これらの小児に対して, MEPM 1回10.3~40.5mg/kgを1日3-4回, 6~12日間, 各回30分間で点滴静脈内投与し, 投与前, 中, 後の糞便を採取して, 糞便1g中に含まれる各種細菌の同定及び菌数測定を行つた. 同時に糞便中のβ-Lactamase活性, Clostridium difficile D-1抗原の測定も行った.
    MEPM投与中の糞便中細菌叢の変動は症例により若干のばらっきが認められたが, 好気性菌のうちEnterobacteriaceaeでは, 7例全例でEscherichia coliの中等度もしくは著明な減少が認められ, 一部の症例ではKlebsiella oxytocaEnterobacter cloacae, Citrobacter freundiiなどが増加する傾向がみられた. 投与中に減少したE. coliは7例中5例で投与終了後速やかに増加し, もとの菌数に回復する傾向が認められた. 又, Enterococciについては, 菌属内での菌種の変動はみられたが本菌属全体の菌数としては薬剤投与中に変化を認めない場合が多く, その結果 Enterococcusの菌数がやや減少した1例を除き好気性菌総数は各症例とも大きな変動は認ぬられなかった. 嫌気性菌ではBacteroides, Bifidobacterium, Eubacterium, Peptococcaceaeなどの主要な嫌気性菌の減少する症例が認められ, 乳児2例と1歳6ヵ月の幼児1例で嫌気性菌総数の著明な減少が認められた. これらの主要な嫌気性菌の変動は, 多くの場合一過性かもしくは投与終了後速やかにもとの菌数に回復する傾向が認ぬられた.
    又, ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌や真菌が優勢菌種となる症例は認ぬられず, C. difficile D-1抗原は4例で検出されたが, その消長と便性に関連性はなかった. C. difficileはいずれの症例からも検出されなかった.
    糞便中のMEPMは4例で投与中の検体から検出され, その濃度は0.35~66.0μg/gであったが, 糞便中のB-Lactamase活性が陰性を示した1例以外では極ぬて低値であった.
    以上の成績から, MEPMの小児腸内細菌叢に及ぼす影響は, 新しいβ-Lactam剤の中では比較的少ないと考えられるが, 症例によっては腸内細菌叢が大きく変動する可能性もあるため, 長期間投与を続けるような場合には下痢や菌交代に対する注意が必要である.
  • 岩井 直一, 中村 はるひ, 宮津 光伸, 渡辺 祐美, 種田 陽一
    1992 年 45 巻 10 号 p. 1403-1419
    発行日: 1992/10/25
    公開日: 2013/05/17
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    Carbapenem系β-Lactam剤であるMeropenem (SM-7338, MEPM) について, 小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行った。
    1. 小児5例 (5~9歳) にMEPM10mg/kgを30分かけて点滴静注した際の血漿中濃度と尿中排泄について検討した。
    血漿中濃度は点滴静注開始後30分 (点滴静注終了時) 18.8±4-7μg/ml, 1時間6.97±1.93μg/ ml, 1.5時間3.62±1.44μg/ml, 2.5時間1.14±0.51μg/ml, 3.5時間0.43±0.25μg/ml, 5.5時間 0.12±0.08μg/mlであり, 血中半減期は0.96±0.24時間であった。一方, 尿中濃度については点滴静注開始後0~2時間985±759μg/ml, 2~4時間128±113μg/ml, 4~6時間16.2±9.1μg/ml で, 0~6時間の尿中回収率は70.4±14.4%であつた。
    2. 小児期感染症38例にMEPMを投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。なお, 1回の投与量は9.5~30.6mg/kg, 1日の投与回数は3~4回, 投与日数は21/ 3~10日, 総投与量は0.8625~9.45gであった。
    臨床経過及び検査所見から細菌の関与がないと判断されたマイコプラズマ肺炎1例とクラミジア肺炎1例を除いた急性化膿性扁桃腺炎3例, 急性扁桃周囲膿瘍1例, 急性化膿性中耳炎1例, 急性肺炎25例, 急性尿路感染症3例, 急性腸炎3例, 計36例における臨床効果は, 著効24例, 有効11例, やや有効1例で, 著効と有効を含めた有効率は97.2%と極めて優れていた。又, 原因菌と考えられたStreptococcus pyogenes1株, Streptococcus pneumoniae4株, Haemophilus influenzae11株, Haemophilus parainfluenzae2株, Escherichia coli1株, Salmonella enteritidis1 株に対する細菌学的効果は, H. influenzae1株が減少, S. enteritidis1株が再排菌であった以外は消失と判定され, グラム陽性菌, グラム陰性菌における菌消失率はそれぞれ100%, 93.3%で, グラム陽性菌, グラム陰性菌ともに優れていた。
    副作用の認められた症例はなかった。又, 臨床検査値異常については, GOT及びGPTの上昇が2例, GPTだけの上昇が1例に認あられたが, GOT, GPT上昇の1例では本剤との因果関係は明らかではなく, 又, 他の2例では投与後の追跡により正常化が確認された。
    以上の成績から, 本剤は小児期の各種感染症に対し高い有効性が期待でき, 又, 安全に使用できる薬剤であると考えられた。
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