新しいCarbapenem系注射用抗生物質Meropenem (MEPM) について小児科12施設と新生児科1施設による共同研究で, 次のような結果を得たので報告する。
1. 抗菌力
保存株の
Streptococcus agalactiae31株,
Listeria monocytogenes14株,
Bordetella pertussis 4株,
Neisseria meningitidis 3株に対する本剤の抗菌力はMIC
90で0.025~0.10μg/mlを示し, 対照薬のImipenem, Cefazolin, Cefotiam, Cefotaxime, Ceftazidime, LatamoxefのMIC
90と比較すると同じかほぼ同等あるいは優れていた。
臨床分離株ではグラム陽性菌中Staphylococcus aureus3株に対する本剤のMICは0.20μg/ml か6.25μg/ml,
Streptococcus pneumoniae4株に対するMICはすべて≤0.025μg/ml, グラム陰性桿菌の
Haemophilus influenzae3株に対するMICは0.10μg/mlか0.20μg/ml,
Enterobacter cloacae, Morganella morganii, Pseudomonas aeruginosa各1株に対するMICは各々0.78μg/ml, 0.10μg/ml, 0.78μg/ml, 嫌気性菌の
Peptococcus saccharolyticus 1株に対するMICは≤0.025μg/mlであった。
2. 薬物動態学的検討
小児9例中各3例に本剤10, 20, 40mg/kgを30分かけて点滴静注した時のBioassay法による最高血漿中濃度はいずれのCaseも投与終了直後にあり各投与群の平均は各々36.3μg/ml, 69.5μg/ml, 129.8μg/mlで明らかなDose responseが観察され, 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) 法でも類似した。β相の血漿中半減期は平均でそれぞれ0.94, 0.86, 0.94時間で, 投与量による変化はなく, HPLC法でも類似した。本剤10, 20, 40 mg/kg投与群の投与開始後6時間までの尿中排泄では, Bioassay法で平均各々67.3%, 65.6%, 68.4%回収され, HPLC法でも類似した。MEPMの主な代謝体であるH-4295の投与開始後6時間までの平均回収率はそれぞれ 10.5%, 7.8%, 8.7%で, HPLC法によるMEPMの平均回収率を加えると各々77.8%, 73.8%, 78.3%であった。
本剤の髄液中濃度は化膿性髄膜炎2例で測定でき, 6, 8, 15病日に500mg (5.9mg/kg) を30 分間かけて点滴静注したCaseでは投与終了各々3時間10分, 1時間, 1時間40分後の濃度はそれぞれ0.13, 0.10μg/ml, 検出限界以下で, 8病日だけ髄液・血漿比が算出でき2.8%で, 経過と共に移行濃度は低下した。6, 7, 10病日に250mg (38.5mg/kg) を30分間かけて点滴静注した Caseでは, 投与終了1時間後の濃度は各々検出限界以下, 2.04μg/ml, 2.62μg/mlであった。
3. 臨床成績
臨床効果は49症例に評価が可能で, 有効率は93.9%であり, 咽頭炎及び扁桃炎3例, 急性気管支炎4例, 肺炎25例, 化膿性髄膜炎2例, 腹膜炎1例, 尿路感染症6例, 蜂窩織炎1例, に対しては全例有効以上で, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群3例中1例と化膿性リンパ節炎4例中2 例がやや有効か無効であった。
細菌学的効果はグラム陽性菌では
S. aureus7株,
S. agalactiae1株,
S. pneumoniae5株,
Enterococcus faecalisと
Enterococcus sp. 1株, グラム陰性桿菌では
H. influenzae4株, Escherichia coli2株,
Klebsiella pneumoniae, E. cloacae, Proteus mirabilis, M. morganii, P. aeruginosa各1株, 嫌気性菌では
P. saccharolyticus1株計27株について判定でき,
S. aureusの7株中1株,
E. faecalisの1株,
P. saccharolyticusの1株は減少か不変で, その他の24株はすべて陰性化し, 消失率は88.9%であった。
4. 副作用及び異常検査値
49例中副作用は認あられなかった。
臨床検査値の異常は末梢血の検査で好酸球増多が5例13.2%に出現, GOTとGPTの単独異常上昇例がいずれも各1例2.7%, GOT, GPTの同時異常上昇は3例10.7%にみられたが, いずれも軽度であった。
以上の成績から, 本剤は起炎菌にもよるが, 化膿性髄膜炎をはじめとする重・中等症の種々の細菌感染症に対し有用な抗生物質であると言える。
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