日本大腸肛門病学会雑誌
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42 巻, 6 号
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  • 隅越 幸男
    1989 年 42 巻 6 号 p. 971-972
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    従来の便秘の状態とは異なる直腸に起因する排便障害があることがわかってきた. すなわちrectocele (直腸ヘルニア, 直腸腟中隔脆弱症), 直腸重積症 (不完全直腸脱), 会陰下垂症, 肛門挙筋緊張症候群そして孤立性直腸潰瘍症候群などといわれるものである.
    これらは今まで単に便秘症, 排便困難症, 肛門神経症, 排便愁訴などとあいまいに扱われていた類のものである. これらについては患者の訴えを十分に聞くことにより大体の見当がつき, 排便動態を直腸のX線造影検査 (defecography) で観察し, また直腸鏡検査, 組織検査を行い, さらには直腸内圧測定などによって, 直腸の病変, 機能異常を把握することが出きる. そして保存的, 外科的治療で排便状態を改善し得ることがわかってきた.
  • Yu De-hong, Lu Ren-hug
    1989 年 42 巻 6 号 p. 973-976
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    Defecography has greatly increased our knowledge of the functional outlet constipation. But it should be used in conjunction with manometry, electromyography and colonic transit time study to evaluate fully defecatory mechanism.
  • 鈴木 宏志, 松本 好市, 三浦 力
    1989 年 42 巻 6 号 p. 977-980
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸肛門内圧測定によって, 肛門括約作用の指標としての肛門管静止圧および随意収縮圧, 直腸の貯留能あるいは壁感受性の指標としての直腸内圧・容量曲線 (直腸コンプライアンス), 直腸肛門運動の協調性の指標としての直腸肛門反射などが評価される.直腸に起因すると考えられる排便障害 (便秘, 失禁) の治療にあたっては, これらの指標を参考に直腸肛門機能障害の原因となっている因子は何かを診断し, 治療方針を樹てる必要がある.直腸肛門機能の障害の程度によっては手術的治療も必要となるが, 肛門括約作用がある程度保たれており, 直腸壁感受性の異常も軽度のものではバイオフィードバックなども有力な治療手段となる.
  • 岩垂 純一, 隅越 幸男, 小野 力三郎, 黄田 正徳, 山本 清人, 東 光邦, 吉永 栄一, 小路 泰彦, 奥田 哲也
    1989 年 42 巻 6 号 p. 981-986
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸脱の病態と治療についてわれわれの治療経験を中心として述べた. 1960年より1988年末までに経験した直腸脱手術例は211例であり, うち会陰式に手術を行ったものは139例, 開腹して腹式に手術を行ったものは72例であり, 会陰式術式の主なものはGant-三輪法 (84例), 腹式は直腸剥離仙骨前固定法 (38例), Bacon変法 (26例) であった. 各術式の成績を再発率, アンケート調査による症状の改善度, 合併症の点から検討したところ, Gant-三輪+Thiersch法は腹式術式に根治性の点で劣るものの再発率は23.8%程度であり, 患者の手術への満足度も81.3%と良く, 合併症もThiersch法施行部の感染, 結紮糸の弛みなどの軽症のものであり良性疾患である直腸脱の第一選択の術式として適していると思われた.
  • 高野 正博, 藤好 建史, 高木 幸一, 河野 通孝, 野村 真一, 橋本 正也, 辻 順之, 桂 禎紀
    1989 年 42 巻 6 号 p. 987-993
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    rectoceleは直腸前壁の弛緩が腟壁の膨らみとして現れるものであり, そこに便が溜まることにより, とくに女性においてしばしば排便障害の原因となっている. しかしわが国では, 本疾患はあまり認識されることはなく, その訳語もない. 私自身はこれを直腸腟壁弛緩症と称し, 現在まで57例を経験した. 症例は全例女性で, 年齢的には20歳~80歳代まで分布しており, 50歳代にピークがある. 出産回数は0~5回までばらつき, とくに出産が本症の原因であるとは考えられない. 症状としては, 便秘・残便感などが多い. 診断は肛門内に指を入れて前方に軽く曲げてみると, その部分が袋状になっているのを触れ, 腟壁の膨らみとしてみることができる. 治療は, まず整腸剤・緩下剤・食事療法などの保存療法を行い, これで改善がみられなければ手術を勧めている. 手術法としては, 従来米国においては, ほとんどの論文で経直腸的手術が推奨されてきた. しかし私は感染の危険性等を考慮して経腟的に手術を行い, 良好な成績を得ているので報告する.
  • 武藤 徹一郎, 鈴木 公孝, 洲之内 広紀, 沢田 俊夫, 森岡 恭彦
    1989 年 42 巻 6 号 p. 994-999
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸孤立性潰瘍症候群は直腸孤立性潰瘍, 深在嚢胞性大腸炎, 直腸粘膜脱症候群と同一範疇に含まれる疾患で, 潰瘍型と隆起型に大別される.病変は直腸前壁に多く, 必ずしも孤立性ではなく複数のこともある.組織学的にfibromuscular obliterationと呼ばれる平滑筋線維の粘膜固有層内への侵入が特徴的で, この所見が生検診断の決め手になる.潰瘍型は癌と隆起型は腺腫と誤診しないことが肝要である.本症の多くに顕性, 不顕性の直腸脱, 粘膜脱が認められ, その基礎に肛門機能異常を伴う排便障害の存在することが明らかになってきた.排便習慣を正し, 緩下剤投与, 高線維食摂取による排便障害の是正によって症状は軽快するが, 隆起型および保存的治療によって軽快しない潰瘍型に対しては局所切除が有効である.顕性, 不顕性の直腸脱, 粘膜脱に対しては, Gant-Miwa粘膜縫縮術などの手術を追加する.
  • 高野 正博
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1000-1011
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    過去7年半における坐骨直腸窩痔瘻185例の術式とその成績について検討した. 手術術式としては実に18種類の手法が行われている. これらをI. 内外括約筋切開 (全開放術式), II. 内外括約筋部分的切開, III. 内括約筋切開または温存, 外括約筋温存の3グループに大別すると, 再発率はそれぞれ0%, 7%, 12.6%で, 明らかに括約筋を温存するほど再発率は高い. しかしIの全開放およびIIの内外括約筋切開術式は術後の括約不全と変形という点で望ましくない. そこでIIIの括約筋をほぼ完全に温存する術式の中で再発率の低い術式をみると, Parks術式に準じたくりぬき術式 (ただし内括約筋部分切除は行わない) で再発率が低い. これに原発口切除部閉鎖を加えるとさらに成績が良い. しかしこの術式は瘻管が単純な場合にしか応用できない. さらに広範囲に坐骨直腸窩に面状に拡がる痔瘻に対しては, われわれが深部痔瘻のために考案した瘻管括約筋外開放術式が成績が良い.
    原発口~原発膿瘍肛門内切除, 括約筋充填法は多少に関わらず括約筋の欠損や粘膜脱を招来しやすいので, その応用範囲は広くないと考えている.
  • 白水 和雄, 磯本 浩晴, 町 淳二, 藤吉 学, 黒肱 敏彦, 山下 裕一, 掛川 暉夫
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1012-1017
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌肝転移巣の術中超音波像を病理組織学的所見と対比した. 超音波像を内部エコー像と辺縁エコー像に大別し, 病理組織学的には転移巣の壊死の状態をI型~IV型に分類し, また腫瘍周囲の炎症細胞浸潤や結合織増生についても検討し, 以下の結論を得た. (1) 内部エコー像は壊死の状態で変化する. すなわち, 均一な内部エコー像は, 壊死を伴わないI型や, 中心部に壊死を伴うIII型の両者に出現しやすく, その壊死巣はviableな癌細胞をほとんど認めない比較的均質な組織像を呈した. (2) 不均一な内部エコーは, 2cm以上の大きな転移巣か, あるいは中心部に壊死を伴ったIII型に出現しやすく, その壊死巣はviableな癌細胞と壊死に陥った癌細胞が混在する不均一な組織像を呈した. (3) 腫瘍辺縁の低エコー像は, III型に出現しやすく, 腫瘍周囲の炎症細胞浸潤や結合織増生には関係がなく, 残存するviableな癌細胞に相当するものと考えられた.
  • -とくに切片標本の最適の厚さについての検討
    鈴木 公孝, 武藤 徹一郎, 正木 忠彦, 森岡 恭彦
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1018-1024
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    顕微螢光測光法での核DNA量の解析を切片法で行う際の切片の最適の厚さの評価を行った.対象は潰瘍性大腸炎25病変 (うち4病変は大腸癌合併) および一般の大腸癌10病変である.4, 7, 10μの各切片を同一標本からの細胞単離法の結果と比べた.核DNA量のモードは各切片法で細胞単離法との良好な一致をみた.しかし6c以上の細胞 (polyploid cells) の出現については一致をみなかった.細胞単離法でpolyploid cellsが出現し各切片法では出現しない場合 (false negative) は4, 7, 10μでそれぞれ8.6, 0, 5.7%, 逆にfalse positiveは14.3, 20, 25.7% (非活動性病変で6.3, 6.7, 18.8%) であった.いずれも有意差は認められなかったが, sensitivity, specificityとも良好な7μ切片法は顕微螢光測光法で核DNA量を解析する際の最良の方法と考えられた.
  • 東 光邦, 隅越 幸男, 岩垂 純一, 小野力 三郎, 黄田 正徳, 山本 清人, 吉永 栄一, 小路 泰彦, 内山 正一, 遠藤 剛
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1025-1030
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    慢性の排便障害を訴える患者に対しdefecography (排便造影) を行い, 診断および治療法の選択に有効な知見を得たので報告する. 外来において排便困難あるいは排便時の不定愁訴のある患者51例にたいし defecographyを施行した. 結果はrectocele (直腸腟壁弛緩症) 23例, 直腸粘膜脱11例, 恥骨直腸筋症候群4例, 会陰下垂症候群1例などの結果を得た. それぞれの症例に対して静止時と息んだ時のanorectal angle (ARA) およびperineal descent (D) を測定した. 正常群, rectocele群, その他の群に分けると, rectocele群は他の群に比較してARAは明らかに減少しており, またDは正常群に比べて増加していた. さらに, 同時にVTRに記録することによって排便状態をダイナミックに捕らえることができ, 直腸粘膜の一部が逸脱していく状態が観察され, 直腸粘膜脱の診断に有効であった. 排便障害の診断にdefecographyは簡便で有効な検査法と考えられる.
  • 渡辺 正, 豊田 美知子, 伊藤 勝基, 桐山 幸三, 村山 浩基, 山内 晶司, 秋山 清次, 近藤 建, 高木 弘
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1031-1038
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌の局所再発に対する治療は手術療法を第一選択とするが, 会陰部痛の発現, 血清CEA値の上昇した段階ではすでに手術の適応とならないことが多い.診断にあたっては骨盤部CT撮影がもっとも有効であるが, 再発腫瘍と術後の線維性変化との鑑別は困難である.そこで再発患者31例を検討した結果, 初回手術時壁深達度a2, s症例が17例/31例 (54.5%) でもっとも多く, pmであってもn (+) 症例に再発が認められた.また再発発現は2年以内が26例/31例 (83.9%) であった.以上より, 局所再発の早期発見には術後骨盤部CTをまず3カ月以内にbaseline CTとして撮影し, 以後6カ月ごとに経時的に撮影することがもっともよいと考えられた.現在13例の症例に行い, 2例に比較的早期に再発腫瘍を発見し, そのうち1例に仙骨合併骨盤内臓器全摘出術を施行しえた.また非再発症例であってもbaseline CTが鑑別診断上きわめて有用であった.
  • 出射 秀樹, 中本 光春, 裏川 公章, 山口 俊昌, 西尾 幸男, 田中 宏明, 磯 篤典, 植松 清, 五百蔵 昭夫, 瀬藤 晃一
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1039-1043
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    当科において経験した大腸重複癌に対し, とくにその治療成績と予後について臨床病理学的検討を加えた.対象は昭和47年から62年までの大腸癌手術症例374例で, 重複癌は29例 (7.8%) あり, その平均年齢は67.7歳男女比は2 : 1であった.重複癌症例において, 血族に悪性疾患の発生しやすい傾向を認め, 他臓器癌は胃癌が多かったが, 大腸癌の占居部位, 肉眼型にはとくに傾向を認めなかった.進行度をみると, stage III以上が66.7%を占め, 進行した状態の癌が多かった.治療成績は治癒切除例44.3%, 非治癒切除例37.3%, 非切除例18.4%であった.予後は不良で, 大腸癌手術後3年以上生存したのは6例, 5年以上生存したのは2例のみであった.複数の臓器に存在する癌を早期発見することの困難なことが考えられ, 重複癌の存在を念頭においた術前検索ならびに術後の経過観察がますます重要になってきていると思われた.
  • 寺島 秀樹
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1044-1050
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    2種の大腸癌培養樹立株 (HT-29, SW620) を用いて大腸癌に対するモノクローナル抗体を作成した.HT-29あるいはSW620によって免疫したマウス脾細胞とマウス骨髄腫細胞との細胞融合を4回行って, HT-29またはSW620と反応する clone 77個が得られた.このうち悪性黒色腫と交叉反応を示さなかった43個より cloning を行い, 最終的に8個の clone を得た.そのうち十分な抗体価をもっ clone 5個からT4, T14, T28, T30, H1の5種類のモノクローナル抗体にっいて以下の解析を行った.6種の大腸癌を含む40種の悪性腫瘍細胞および4種の正常組織培養細胞との反応性を検討したところ, T28は4種, T4, T30は3種の大腸癌と反応した.T14とH1は異なる株から得られたにもかかわらず, 大腸癌以外の腫瘍細胞との反応性は類似しており, 6種の大腸癌すべてに対して反応性を示した.
  • -免疫学的便潜血スライド3枚 (Reversed Passived Hemmagulutination Reaction混和法) + 問診法とその成績-
    熊西 康信, 藤田 昌英, 奥山 也寸志, 塚本 文音, 渡邉 太郎, 藤田 泰彦, 永田 貴子, 尾崎 尚志, 田中 利茂, 杉本 卓司, ...
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1051-1057
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    近年, 増加傾向にある大腸癌に対し, 便潜血反応をスクリーニングに用いた集団検診がさかんに行われるようになった.とくに最近では免疫学的便潜血試験の開発の進歩が目覚しく, 待望された大腸集検への実際応用の段階に入った.今回われわれは, RPHA法を集検に応用するに際し, 費用と労力の面からRPHA3回混和B法を考案し, 5,897名に対し集検を行った.またRPHA 3回混和B法陽性例には同一検体抽出液を用いて再検を行い, 混和法の精度を検討した.RPHA 3回混和B法による要精検率は3.2% (186名) と低率となった.その精検受診者103名 (55.4%) の中から10名の大腸癌が発見され, 9.7%の高い陽性反応適中度が示された.発見癌のうちDukes Cの進行癌は1名で, 早期癌が6名を占めていたが, 再検法によるその潜血の内訳をみると, 3日とも陽性であった症例は5例 (50%) のみであり, 免疫学的便潜血試験を用いても複数回の繰り返し検査の必要性が示唆された.
  • -BrdU標識リンパ球を用いた直腸周囲リンパ流の結果と対比して-
    石賀 信史, 山本 泰久, 岩藤 真治, 酒井 邦彦, 石原 清宏, 庄 達夫, 岩本 伸二, 岡島 邦雄, 富士原 彰, 原 彰倫, 豊田 ...
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1058-1066
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    直腸癌163例のリンパ節転移に関する臨床病理学的検討と, そのうち22例の直腸癌を対象としてBrdU標識リンパ球を用いた直腸周囲リンパ流の研究を行い以下の結果を得た.直腸癌は側方リンパ節転移に比し有意に上方リンパ節転移をきたしやすくその頻度は40.5%であった.側方リンパ節転移率は11.7%であり, 癌腫下縁が腹膜反転部以下に及ぶものに多く認めた.一方リンパ流では, 上方リンパ流は直腸全域において, また側方リンパ流は腹膜反転部以下において重要なリンパ路となり得た.リンパ節転移に有意な関連を有する臨床病理学的因子は壁深達度, 脈管侵襲, 組織型であった.ss (a1) 以内の癌とs (a2) 以上の癌では後者の癌が有意に上方および側方リンパ節転移率が高く, リンパ管侵襲高度群 (ly2, 3) は軽度群 (ly0, 1) に比し, また中分化腺癌は高分化腺癌に比し有意に上方リンパ節転移が高かった.
  • 緒方 裕, 磯本 浩晴, 白水 和雄, 諸富 立寿, 梶原 賢一郎, 荒木 靖三, 掛川 暉夫
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1067-1075
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    大腸癌190例を対象とし, 癌組織に浸潤するNK細胞および単核細胞の臨床的意義について, 臨床病理学的に検討した. NK細胞はLeu 7モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色 (ABC法) により検索した. 癌増殖先進部のLeu 7+細胞および単核細胞浸潤度は癌の進行にともない低下した. 癌増殖先進部のLeu 7+細胞および単核細胞浸潤度の高い症例は良好な予後を示した. さらに, 単核細胞では, 同一病期で浸潤度の高い症例の予後が低い例のそれに比べて良好であった. しかし, Leu 7+細胞では同一病期で浸潤度の違いによる予後の差は認められなかった. 以上より, 癌増殖先進部のLeu 7+細胞および単核細胞は癌の発育増殖に対して何らかの抑制作用を有していることが示唆された. また, 単核細胞浸潤度は予後判定の有用な指標の一つであると考えられたが, Leu 7+細胞単独ではその有用性は低いものと思われた.
  • 飯田 富雄, 芳賀 駿介, 清水 忠夫, 今村 洋, 蒔田 益次郎, 加藤 博之, 森 正樹, 松本 紀夫, 小豆畑 博, 梶原 哲郎
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1076-1079
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    進行直腸癌に伴い発見され, 癌化巣および肝転移巣切除で延命が得られた家族性大腸腺腫症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は44歳, 男性.家族歴で, 母親と長姉が直腸癌で死亡.次姉と妹が大腸腺腫症にて20歳代時に大腸切除術を受けていた.便秘を主訴として来院.注腸造影および下部消化管内視鏡検査により大腸腺腫症の癌化による直腸癌と診断し, Miles 術式の根治術と同時に全結腸切除術の予定で開腹したが, 膀胱壁への浸潤, 高度なリンパ節転移を認め, Miles 術+膀胱の部分切除術にとどめた.術後, 早期に肝両葉への転移巣を認めたが, 他臓器転移もないため, 外側区域切除術+後区域部分切除術を施行し, 術後3年11カ月間生存した.
  • 高橋 直樹, 芳賀 駿介, 加藤 博之, 森 正樹, 梅田 浩, 松本 紀夫, 小豆畑 博, 熊沢 健一, 成高 義彦, 菊池 友允, 梶原 ...
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1080-1083
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    早期大腸癌に併存した直腸小カルチノイドを2例経験した.症例1は肛門出血を主訴に来院した66歳女性で, 精査のため施行した大腸内視鏡検査にて直腸に3mmの粘膜下腫瘍と8mmの扁平隆起性病変を認めた.それぞれにstrip biopsyを施行し, 病理組織学的にそれぞれカルチノイド腫瘍, 腺癌と診断された.症例2は61歳男性で, CEA高値にて施行した大腸内視鏡検査にて直腸に8mmの粘膜下腫瘍, および横行結腸から直腸S状部に計5個のポリープを認めた.粘膜下腫瘍に対してstrip biopsy, また, すべてのポリープに対してポリペクトミーを施行し, 病理組織学的に粘膜下腫瘍はカルチノイド腫瘍, またポリープのうちふたつが腺腫内癌, 他は腺管腺腫, 腺管絨毛腺腫と診断された.直腸カルチノイドは比較的稀な疾患であるがその治療法から注目されている.また他の大腸病変との併存も多く, 見逃しのない十分な検索が必要である.
  • 小川 泰史, 今峰 聡, 田中 美和, 小野 彰範, 国近 啓三, 村上 善昭, 星加 博司, 本田 俊雄, 西蔭 三郎
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1084-1088
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.9年前より高血圧であった.突然の左側腹痛, 下痢, 下血で発病した.第3病日の大腸ファイバーで脾彎曲部から下行結腸に管腔の狭窄, 粘膜の壊死, 浮腫, 出血, 不整形潰瘍を認め, ガストログラフィン造影でもthumb printing 像を呈した.組織像は, 急性潰瘍肉芽組織部位に腺管のghost like appearance, 壊死, 好中球の浸潤, 滲出フィブリン析出を認め虚血性大腸炎と診断した.第17病日の大腸ファイバーでは軽度の管腔の狭窄と縦走潰瘍瘢痕を残すのみとなりMarston分類ではtransient ischemic colitisであった.また本例は胸部X-Pにて縦隔に接したやや不整形の腫瘤状陰影を認め, 胸部CT検査にて胸部大動脈瘤と診断した.大動脈瘤と虚血性大腸炎は動脈硬化症を基礎疾患とするが, 両者の合併は今までに報告がなく, 虚血性大腸炎の発生の機序を考える上で興味深い症例であるので報告した.
  • 佐道 三郎, 藤井 久男, 山本 克彦, 山本 雅敏, 仲川 昌之, 渡邉 巌, 安田 慎治, 中野 博重
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1089-1093
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤手術後に特異なcolon cast排泄をみた虚血性大腸炎の1例を報告する.症例は, 67歳, 男性.腹部大動脈瘤手術後19日目に排便とともに索状物を排泄したことを主訴に当科を紹介となった.受診時よりS状結腸内視鏡にて経過観察を行った結果, 腹部大動脈瘤手術後に起こったS状結腸の虚血による腸管上皮の全周性の脱落と診断した.腹部大動脈瘤手術後には結腸に強い虚血性変化が生じやすい.この変化はその予後の悪さから問題とされており, 予防法や治療法に検討が加えられてきている.この症例のように, 虚血が原因となり, 結腸上皮が全周性に脱落する病態はこれまで欧米で2例報告されており, この排泄物をcolon castと表現している.今回の報告例はcolon castの排泄という特異な臨床経過をたどった症例で, われわれが調べた範囲では本邦例の報告はない.
  • 板野 聡, 寺田 紀彦, 橋本 修, 淵本 定儀, 折田 薫三
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1094-1098
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    術前に確定診断し得た回腸末端部の有茎性に発育した脂肪腫症例を経験したので, 報告した.症例は43歳, 男性.主訴は右下腹部痛.近医で注腸レントゲン検査を受け大腸癌と診断され, 手術目的にて当院を紹介された.理学的検査では回盲部に軽度の圧痛を認めるほかには所見なく, 血清生化学的検査も正常であった.大腸内視鏡検査にて上行結腸の有茎性ポリープと診断した.腹部CT検査では上行結腸内に腫瘤陰影が認められ, CT値より脂肪腫と診断し, ひき続き行った注腸レントゲン検査で回盲部末端部から発育した有茎性の腫瘤を認め, 上行結腸内へ腸重積を起こしていることが確認された.以上より, 回盲部切除が行われ, 回盲部末端部の4.3×3.7×3.3cmの有茎性脂肪腫が確認された.病理組織学的検査でも同様であった.術後経過良好で外来にて経過観察中である.本症の診断には腹部CT検査がとくに有用であった.
  • 磯 篤典, 裏川 公章, 山口 俊昌, 中本 光春, 安積 靖友, 熨斗 有, 出射 秀樹, 西尾 幸男, 植松 清, 五百蔵 昭夫, 瀬藤 ...
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1099-1103
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    急性虫垂炎症状をもって発症した患者に腹部超音波検査と注腸造影を施行し, 7カ月前に同様の症状発現時に他院で行った注腸造影の所見を踏まえて, 結果的に経過観察がなされた虫垂癌の1例を経験した.症例は50歳, 男性.超音波所見では虫垂は腫大し, 壁は不整で中心部は不均一であった.7カ月前の注腸造影所見では虫垂開口部の一部のみが造影され, その壁は硬化と伸展不良を示し, 虫垂開口部の盲腸粘膜は上方へ圧排されていた.当院での注腸造影では盲腸右側の陰影欠損があり, その壁は硬化, 不整を示していた.以上より, 虫垂癌を疑い計画的にリンパ節郭清を含めた回盲部切除を行った.病理組織所見は虫垂根部を中心とした結腸型の原発性虫垂癌であり, 大腸癌取扱い規約によると, V, 5型, pm, ly (-), v (-), n (-), P0, H0&, M (-), stage Iであった.虫垂癌の臨床病理学的特徴について検討を加えた.
  • 西森 武雄, 奥野 匡宥, 長山 正義, 池原 照幸, 東郷 杏一, 川口 貢, 梅山 馨, 里見 匡迪
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1104-1108
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    カルチノイドは比較的悪性度の低い腫瘍とされている.腫瘍の悪性度を反映する指標としてその細胞核DNA量の測定が行われるようになってきたが, カルチノイドに関する報告は比較的少ない.われわれは直腸のカルチノイドの5症例についてパラフィン包埋ブロックより標本を作成し, 落射型螢光顕微鏡で細胞核DNA量を測定し, 検討を加えた.5症例はすべて2cm以下で筋層への浸潤も認めず, 術後経過は良好である.5症例の細胞核DNA ploidyはすべて4C以上の出現率が低いdiploid patternを示した.このことはこれらの症例のカルチノイドがlow-grade malignancyであることを示唆するものと思われた.
  • 加藤 博之, 芳賀 駿介, 小豆畑 博, 松本 紀夫, 湖山 信篤, 梅田 浩, 森 正樹, 渡辺 修, 梶原 哲郎
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1109-1112
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    昭和50年1月から昭和63年8月までに当科で切除した直腸癌151例のうち, 早期直腸癌16例 (10.6%) を対象とし, 検討を行った. 早期直腸癌の形態を見ると全例とも隆起型であり, 陥凹型はなかった. 術前深達度診断は, 直腸指診, 注腸造影検査および大腸内視鏡検査で行い, 2つ以上の検査で一致をみたものをその深達度とした. 深達度術前診断と病理組織学的診断とを対比してみると, 総合的にM´と診断した9例中7例がmであり, SM´と診断した7例中6例がsmで, 正診率は81%であった. 個々の診断法別に見ると, 直腸指診で正診率78%, 注腸造影検査では, 75%, 大腸内視鏡検査では, 63%であり, 総合的に診断したほうが正診率が高かった. 組織学的には, 14例が高分化腺癌, 2例が中分化腺癌であった. リンパ節を検索できた5例とも転移を認めなかった. 脈管浸襲は, m癌にはまったく認められず, sm癌2例に認められた.
  • 萱場 佳郎, 樋渡 信夫, 三浦 正明, 山崎 日出雄, 熊谷 裕司, 豊田 隆謙
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1113-1118
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
    活動期クローン病に対するステロイド (PSL) 療法の治療効果を明らかにする目的で当科の治療成績を検討した.対象および方法は活動期クローン病へのPSL未投与例15例に対してPSLを40mg/日経口投与で開始し, 以後2週ごとに減量した.治療効果は4週後, 8週後の血沈, CRP, IOIBDを用いて検討した.その結果, 多くの症例では4週後に血沈, CRPの改善を認めたが, 8週後では再び悪化する症例も認めた.IOIBDが正常化したのは約90%あったが, 血沈, CRPがともに正常化したのは4週, 8週で1, 2例しかなかった.PSL投与中は症状が隠蔽され, 急激に悪化する症例も見られた.現在, 8例は離脱困難で隔日投与継続中, 1例は漸減中, 3例は栄養療法を併用してPSLを中止, 3例は栄養療法後手術を施行した.結局, クローン病に対するPSL療法は症状の改善には有効だが, 減量により検査値の再燃をみることが多かった.
  • 排便障害を伴う直腸病変
    1989 年 42 巻 6 号 p. 1119-1125
    発行日: 1989/09/25
    公開日: 2009/10/16
    ジャーナル フリー
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