地質学雑誌
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114 巻, 12 号
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総説
  • 後藤 和久, 藤野 滋弘
    2008 年 114 巻 12 号 p. 599-617
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    2004年インド洋大津波の直後,各国の調査団によって津波堆積物に関する調査が実施された.そして,浅海域や潮間帯での津波の影響や,津波によって陸上の津波堆積物がどのように形成されるのか,その後地層中にどのように埋没していくかなど,新たな知見が多く得られた.一方,緊急調査が効率的かつ相補的に行われていないこともあり,津波直後に取るべきデータが十分に得られたとは言いがたい.また,2004年インド洋大津波によって形成された津波堆積物を調べることで新たに分かった問題点や,解決できなかった点も多々ある.例えば,津波堆積物特有の堆積学的特徴とは何か,津波の水理量と津波堆積物形成過程にはどのような関係があるのか,海底下でどのように津波堆積物が形成されるのか,などといった点である.将来,こうした点を解決するためには,津波直後に分野を問わず研究者間で連携し,効率的かつ相補的なデータ収集を行っていく必要がある.
論説
  • -大山テフラDKP,DSP,DNPの識別を例として-
    古澤 明
    2008 年 114 巻 12 号 p. 618-631
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    テフラの対比に斑晶中のガラス包有物の主成分化学組成を用いる手法はこれまで試みられていない.大山火山起源のDKP,DSP,DNP降下軽石は,岩相,鉱物組み合せおよび斜方輝石,角閃石の屈折率が近似しており,風化して火山ガラスが残存していないことが多いため,明確な対比に課題が残されていた.そこでこれらのテフラについて,斜長石斑晶中のガラス包有物の主成分化学組成を比較し識別を試みた.はじめに粒径および斑晶の違いによるガラス包有物の主成分化学組成を比較し,1/16-1/8 mm粒径の斜長石において最も値がまとまることが明らかとなった.この粒径の斜長石のガラス包有物の主成分化学組成により,DKP,DSPおよびDNPはそれぞれ識別され,福井県旧織田町および長野県高野層でDKPとされたテフラは大山山麓のDKPと対比されることが確認できた.したがって,斜長石中のガラス包有物の主成分化学組成はテフラの対比に有効である.
  • -判読特性の視点から見た各種画像の比較検証-
    小荒井 衛, 佐藤 浩, 宇根 寛, 天野 一男
    2008 年 114 巻 12 号 p. 632-647
    発行日: 2008/12/15
    公開日: 2009/06/05
    ジャーナル フリー
    パキスタン北部地震,ジャワ島中部地震,レイテ島地すべり等の大規模地質災害について,光学系高分解能衛星画像により被害状況と地形的な特性把握を試みた.また,高分解能衛星画像の災害判読特性を判読カードに整理しカタログ化を進め比較検証した.2.5 m分解能の衛星画像で斜面崩壊の判読は可能だが,小規模な表層崩壊や亀裂などの判読は1 m以上の分解能が必要であった.建物被害等の判読には1 m分解能が必要である.しかしながら単画像では実体視ができないため,1 m分解能でも単画像では都市部での網羅的な建物被害のマッピングは困難である.断層変位地形の判読については,1 m分解能でも単画像では高低感が捉えられないため困難である.ただし,建物被害集中域が判読できたので,2.5 m分解能のステレオ画像の判読と組み合わせて,地表地震断層の可能性のある地形を抽出できた.各衛星画像を比較した結果,高分解能の方が判読特性は一般的には優れているが,災害判読における実体視判読の有用性も示すことができた.本研究の考察を通して,高分解能光学衛星画像を使用した大規模地質災害の状況把握手法を提案した.
口絵
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